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徽宗皇帝のブログ

徽宗皇帝のブログ

小刻みに殺される
紙屋氏のブログ記事の一部である。


(以下引用)



 そうした個々のシチュエーションもさることながら、そうした描写の一つひとつを通じて、海の上の「蟹工船」という閉塞は、否が応でも現代の非正規労働者が感じている閉塞に重なる
私たちはいかに蟹工船を読んだか  『私たちはいかに「蟹工船」を読んだか』(白樺文学館多喜二ライブラリー)は『蟹工船』のエッセイコンテストの応募優秀作品を載せた本だが、大賞を受賞した山口さなえは次のように書いている。



〈有名な広告代理店の下請けデザイン会社に就職した友人は、あこがれのデザイナーになろうと必死だった。しかし、入社したとたん三日間帰宅できず深夜残業、さらに既婚の社長に抱きつかれ服を脱がされそうになる。拒否すると激しい暴言を吐かれなくなく謝って退社を許されたという。その後、彼女は、深夜の三時から始まる会議で社員達にお茶くみをする仕事を強制された。私が「おかしいよ」と言っても、彼女は「社長を尊敬している。」と心から言うのだ。
 深夜のマクドナルドで私の友人に声をかけた女性は「もう行くところがない」と言った。困った友人が私に声をかけてきて、私は彼女を家に泊めることにした。彼女は私と同い年だった。地方から上京し、新聞奨学生をしながら四年制大学を出た。卒業後、寮付の派遣会社で働いたが、男性社員から「俺と寝なければ寮費を取る」と脅され逃げ出した。友人宅や「路上寝」を繰り返し、最寄りの役所に相談に行ったが門前払いされた。深夜のマックで友人に声をかけたときは所持金が一万円札一枚だった。
 美術大学の二つ上の先輩は在学中に映像コンペで入賞し、メディアにも取り上げられた輝かしい経歴の持ち主だった。専門学校にも通い、スキルも身につけていた。夢を持って社会に出たと思う。彼女はマスコミのADになったがほとんど家に帰れない。TV局のフロアの地べたで仮眠を取り、蹴られて起こされる。現場のディレクターから毎日怒鳴られ、体を触られるセクハラを受けた。やがて鬱病となり労災申請をすると総務の女性から「労災で休暇なんて給料泥棒だ。迷惑をかけるなら辞めて下さい。」といわれた。私の希望の星はアパートにひきこもり、自分を責めてリストカットを繰り返した。彼女は「病気のせいで手が震えて自炊ができない。」と言った〉(同書p.30〜31)



 この閉塞のなかで受けている圧迫を、『蟹工船」のなかでやはり「ふっ」と重なるように言い表している有名なセリフがある。自分が本当に殺されると分かったらそのとき決起すると言い訳する労働者に、別の労働者がこう叫ぶセリフだ。



〈殺されるッて分ったら? 馬鹿ア、何時だ、それア。——今、殺されているんでねえか。小刻みによ〉(『蟹工船』p.98)

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