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徽宗皇帝のブログ

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日本鎖国論
「阿修羅」経由で知った「産経ビズ」の記事である。
筆者の榊原英資は「ミスター円」と呼ばれた経済官僚であったが、退職後、いくつかの有名私立大の教授を歴任している。
私は官僚も大学の経済学部教授も嫌いだが、下の記事で榊原が言っていることは、私が常々言っていることと同じなので、思わぬ援軍を得た思いだ。
官僚が嫌い、と言っても、官僚のすべてが悪党だとは思わない。頭もいいし、知識もあるし、事務能力は抜群なのが官僚だろう。ただ、人格は社会的地位や身分と一致しない、というだけのことだ。昔は、人格の低い人間を「小人」、人格の優れた人間を「大人」と呼んで、小人は高い地位には就けないという心得が政治の中にあったが、現在は小人ほど高い地位に昇る、というのが相場である。民間でも、東電など、一種の官僚製(「官僚制」ではない)会社だから、その一例である。
ついでだが、私が「官僚」と言う場合は「役人・公務員」の意味ではなく、「上級公務員・政策決定に関与するレベルの上級役人」の意味である。そういう意味で「官僚」という言葉を使う人は多いはずだが、辞書では「官僚=役人」とされている。これは不便なので、ぜひ「官僚」は一般公務員とは別、とする習慣が広まってほしい。「幕僚」などのように、もともと「僚」の字には「少数の人間」「(結社的な)仲間」のニュアンスがあり、一般公務員を「官僚」と呼ぶのは不自然だろう。
下記記事についての解説は、「その通り」で終わりである。
問題は、「鎖国」の後のプログラムをどうするかであり、それについては、私はこれからの日本は「第一次産業」を志向するべきだと常々提言している。そうしなくては、今後一層加速化する膨大な「失業予備軍」に対処できず、また日本の第一次産業が今のままでは「鎖国」も難しいからだ。
何度も言うが、日本にはすでに十分以上の住宅がある。国民全員に無料提供できるくらいある。後は、食糧供給ができれば、それで生存に必要な最低限のものはあるわけだ。
要するに、「材料はすべてある。後は、どう配分するか」だけなのだ。政治のやるべき仕事とは「配分」だけだ、というのも私が何度も言ってきたことだ。



(以下引用)



【論風】青山学院大学教授・榊原英資 鎖国シンドローム

2012.10.18 05:00

 ■「成長」から「成熟」への転換
 日本が再び鎖国の局面に入る、あるいは入るべきだ、などというと驚く人たちが少なくないだろう。もちろん、江戸時代的鎖国が訪れる可能性を論じているのではない。グローバリゼーション一辺倒から離れて、日本という国をしっかりと見つめ直す時だという意味での鎖国である。
 ◆崩れた米金融システム
 実は、日本は歴史上「開国」の時期と「鎖国」の時期を交互に経験してきた。第1の鎖国の時期は遣唐使廃止から平治の乱までの平安時代(9世紀末から12世紀)、第2の時期は元寇以降、日明貿易再開まで(13世紀~14世紀半ば)、そして江戸時代の鎖国。また、日露戦争から第二次世界大戦までも、ある種の鎖国の時期だったといえるのだろう。
 鎖国の時代は、開国の時代に取り入れた外来文化を「日本化」し、「和漢折衷」「和洋折衷」の日本独自の文化を作り出していった時代である。平安時代、江戸時代などはその典型だったといえるだろう。日露戦争から第二次世界大戦に至る時代も、ロシアという大国に勝利した日本が、明治維新後の「欧化」から、新たな「日本化」を目指した時代ともいえるだろう。残念なことに、この日本化は第二次世界大戦の敗北という結果に終わってしまったが…。
 第二次世界大戦からごく最近までは、アメリカ化の時代、つまり開国の時代だったということができる。自動車、スーパーマーケット、ハリウッド映画などが導入され、日本に定着していった時期であった。そして、アメリカ化の時代はグローバリゼーションの時代に重なっていく。アメリカだけではなく、中国やインドなどの新興市場国に進出し、業務をグローバル化することが多くの企業にとって主要な戦略の一つになっていったのである。
 グローバル化は金融によって先導された側面が強かったようである。製造業と違って、モノの移動を伴わないので、グローバル化がより迅速かつ広範にできたからである。しかし、金融に先導されたグローバリゼーションはリーマン・ショックと呼ばれたアメリカの金融システムの崩壊によって“終わりの始まり”を迎えることになる。
 1990年代半ばからアメリカの金融資産は、グローバリゼーションを背景に100兆ドルも増加したのであるが、結局、それが金融バブルを生み、バブルはアメリカの住宅価格が下降に転ずると破裂し、アメリカの金融システムは崩れていってしまったのである。この間、住宅価格もダウ平均株価も3倍以上に上昇したが、結局、バブルの一局面に過ぎなかったのである。また、市場化が急速に進む中で格差が拡大し、ウォール街での格差反対の「99対1」のデモを生むことになってしまったのである。
◆「日本化」の時代に
 こうした中で各国とも悪化した財政を立て直し、国内経済に専心し自国経済の再建を図らざるを得なくなってきたのである。金融緩和を続ける中で何とか財政を再建することが、多くの国で最大の課題になってきた。つまり、内向きの経済の立て直し、金融緩和、為替の切り下げを各国とも選択せざるを得なくなったのである。
 日本もまた、グローバリゼーションからの転換の時期に入ってきた。格差の拡大をどう食い止めるか、世界経済が縮小する中で日本の良さをどう維持していくか。日本の比較優位は一体何なのかを認識し、それを生かすことが必要になってきた。
 つまり、「鎖国化」、あるいは「日本化」の時代に入ったのである。おそらく目指すべきは、平安時代、江戸時代のような「成熟経済」であり、「成熟社会」だろう。開国から鎖国へ、成長から成熟への転換が日本の課題になってきたのである。
                   ◇
【プロフィル】榊原英資
 さかきばら・えいすけ 東大経卒、1965年大蔵省(現財務省)入省。ミシガン大学に留学し経済学博士号取得。財政金融研究所所長、国際金融局長を経て97年に財務官就任。99年に退官、慶大教授に転じ、2006年早大教授、10年4月から現職。神奈川県出身。

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