"メモ日記より「政治・社会的随想」"カテゴリーの記事一覧
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#97 ヒトラーという天才
A.L.サッチャーの『戦争の世界史(燃え続けた20世紀)』は、20世紀の世界を政治家の人物像を中心に描いた、いわば20世紀の『史記』である。『史記』同様に、切れば血の出る人間たちが織り成す生き生きとしたドラマが素晴らしい、お勧めの本だ。ただし、政治の表舞台の現象を、ストレートに受け取ったならば、という保留条件付きで読む必要はあるが。というのは、この本の中には、政治を陰で動かしてきた経済人の姿が一つも無いからだ。この本を読むと、政治がまるで一握りの政治家の思惑だけで動いているように見えてしまう。英雄豪傑伝としてなら面白いが、実際の政治はそんなものではないだろう。
また、この本ではチャーチル、ルーズベルトがほとんど全面肯定されるような感じで描かれているが、それはヒトラーを否定すべき存在として見た時、初めて首肯できる描き方である。ヒトラーを否定するのは当然ではないか、と大多数の人間は言うだろう。だが、そうした硬直的姿勢からは何も新しいものは生まれない。
この本の中で描かれるヒトラー、ムッソリーニ、スターリンは、まるでゴロツキかギャングである。実際、人格的にはそれに近いものだっただろう。だが、政治家としてはそれぞれに偉大な天才であったはずだ。でなければそもそも権力を握ることなどできなかっただろう。中でもヒトラーは政治の天才だっただけでなく、ナポレオン以来の軍事的天才でもあった、というのが私の印象である。PR -
#93 見えないものは存在しない
題名の言葉は二通りに解釈できる。一つは、「見えないものなどはない。あらゆるものは見える」という乱暴な言葉であり、もう一つは、「見えないものは、その見ている人間が気づかない以上、存在しないも同然である」という意味である。前者が現実にありえない内容である以上、誰でも後者の意味に解釈するだろう。しかし、大多数の人々は、この言葉が多義的であることにすら気づかないはずである。世の中にはこうした事柄が多い。まさしく、彼らにとって、見えないものは存在もしていないのと同じなのである。あらゆる社会的事象がそうであり、多くの人々は学校教育の中で学んだことを真実だと思い込んで一生を終えていく。新聞に報道されること、テレビで流される映像を真実だと思い込んで生きていく。まあ、それで幸せならばそれでいいのだが。
だが、そうした情報の中の矛盾を疑問に思い、そこに合理的な答えを見つけようという努力をするならば、見えなかったものも見えてくるものだ。たとえば、9・11事件など、アメリカ政府がテロリストの仕業だというから人々はそう信じ、アフガニスタンが悪いというからそう信じ、次はイラクが悪いというからそう信じる。しかし、そもそもそうしたテロリスト集団の存在など、誰もその正体を知らないのである。で、一連の行為によって利益を得たのは、アメリカ政府やその背後の一部の企業である。では、誰が本当の犯人か。こんなのは、子供でも分かる問題だ。でも、大人でも見えない人には見えないのである。 -
#92 分割して統治せよ
「分割して統治せよ」とは、ローマ帝国の植民地支配の秘訣だった考え方だが、これは帝王学のアルファであり、オメガだろう。まさしくローマは支配のエキスパートだったから、あれほど続いた帝国を作り上げることができたのだろう。そして、その考え方は現在の「見えない植民地」の支配にも生かされている。たとえば日本の場合、第二次大戦後にアメリカによって支配されたが、表向きは日本が独立した後もアメリカの支配は続いている。その手法は、まずCIAを通じた資金援助で自民党が作られ、その一方では革新政党にも援助を行なうことで不断の政治的対立を作り出すというものである。もちろん、常に保守勢力がやや優位になるように調整されているが、少なくともこれで表向きは民主政治が行なわれているという形にはなっているわけだ。完全にアメリカの支配を受けているグループが自民党だけでは弱いので、野党の一部に第二与党となる「中道勢力」を作って、さらに分割する。もちろん、あらゆる政治家のスキャンダルはCIAの手に握られているから、アメリカからの指示に本気で反対できる人間は政治家の中には存在しない。
このように見たときに初めて、なぜ日本の政治家が、日本の国益に反してまでもアメリカにとって有利なようにしか行動しないのかが分かる。つまり、日本はとっくに滅びた国なのである。現在の日本は、アメリカの植民地なのであり、それが目に見えないだけの話なのだ。……という仮説はどうでしょうか。え、常識でしたか?