属国と言うより米国の下僕国家と言うべきだろう。
(以下「ギャラリー酔いどれ」から転載。)
◆https://www.chosyu-journal.jp/shakai/10212
長周新聞 2018年12月6日
◎米軍需産業のカモ にされる日本
防衛予算は つかみ取り 兵器ローンで 借金漬けに
高齢者の介護や医療費、教育費など 国民生活関連予算を削りながら、
一方では 安倍政府が ばく大な国家予算を投じて
米国製兵器を買い込み続けている。
借金である「兵器ローン」(後年度負担)の支払額が 5兆円をこえ、
大赤字状態であるにもかかわらず、2019年度の防衛予算は
過去最多の5・3兆円を計上した。
しかも今後の兵器調達ではF35ステルス戦闘機100機購入や
ヘリ搭載護衛艦の空母化など、天井知らずの武器購入を検討している。
アメリカが 在日米軍再編計画の総仕上げ段階 に入り、
次の戦争をにらんで 日本を最前線に立たせる軍事配置を加速するなか、
安倍政府は「バイ、アメリカン!(米国製品を買え)」と叫ぶ
アメリカの要求を丸呑みし、高額兵器購入に拍車をかけている。
中期防衛力整備計画(中期防)に基づき 約5年間で買い込んだ兵器を見ると、
自衛隊の戦地投入を意図した 攻撃兵器の増加が特徴となった。
主な装備は 空中戦を想定したF35ステルス戦闘機42機(ロッキード・マーチン)、
離島侵攻に使用する垂直離着陸輸送機オスプレイ17機(ベル、ボーイング)、
空母に搭載するE―2ホークアイ早期警戒機4機(ノースロップ・グラマン)、
滞空型無人偵察機グローバルホーク3機(ノースロップ・グラマン)、
戦闘機にもヘリにも空中給油可能なKC46Aペガサス3機(ボーイング)などで、
みな米国製である【表参照】。
▼https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2018/12/
a87cfcf7f001dbac641a90caeaabdfa7-600x539.jpg
日本側が発表する資料は 武器購入費を数年間で分割したり、
部品購入と組み立て費を分けるなど さまざまな小細工で 全貌が見えにくい。
しかしアメリカ議会調査局の報告は
「総額2兆円の 武器セールス」(2016年段階)と明記している。
2019年度の防衛予算概算要求では、
すでに契約している装備品の分割払い分に加え、イージス・アショア2基
(ロッキード・マーチン)を含む弾道ミサイル防衛関連経費4224億円
を計上した。
F35Aステルス戦闘機に搭載して 相手の脅威圏外(スタンド・オフ)から
攻撃するミサイル取得費(73億円)なども盛り込んでいる。
そして動き出したのが新防衛大綱に向けて検討しているというF35戦闘機
の100機購入、無人攻撃機アベンジャー(ジェネラル・アトミクス)
の20機配備、無人潜水機の開発、ヘリ搭載護衛艦「いずも」の空母化
などである。 数量、額ともにこれまでの装備購入とは段階を画しており、
どれも 攻撃・殺傷能力の高い兵器ばかり である。
☆急拡大したFMS調達
そして大きな問題は、この米国製兵器購入に
不平等なFMS(対外有償軍事援助)方式を適用し続けていることだ。
FMSはアメリカが「軍事援助をしている」という位置づけで、
同盟国に武器を買わせるシステムである。
このFMSについて アメリカの武器輸出管理法は、
①契約価格も納期も すべて米側の都合で決める、
②代金は前払い、
③米政府は自国の都合で 一方的に契約解除できる、
と規定している。
実際にFMSで調達したF35戦闘機42機の単価を見ると、
2012年契約当初は1機96億円だった。
ところが開発費などの増加を理由に翌13年は140億円に値上げし、
14年には159億円に値上げした。
その後もアメリカは値上げを続け、16年には181億円になっている。
しかも配備後は 維持費がかかる。
F35の整備は 軍事機密であるため、部品はアメリカから調達し、
技術指導者や技術者はみな アメリカから呼び寄せて整備する。
その渡航費や滞在費をみな「技術支援費」として
日本側が負担しなければならない。
こうして最終的に試算されたF35戦闘機42機にかかる総額経費は、
購入費=5965億円と維持整備費=1兆2877億円(30年間)で
合計1兆8842億円に達し、1機当り約449億円となっている。
もともとF35戦闘機の製造自体が 日本の要求ではなく、
アメリカの要求に基づいている。
アメリカは当初、最新ステルス機F22を主力戦闘機にすることを検討し、
「技術流出を防ぐために 他国へは売らない」と主張していた。
ところがイラクやアフガン戦争による軍事費が 国家財政を圧迫するなか、
高額なF22戦闘機を米軍の主力機にする計画を断念し、
低価格のステルス機調達を模索する動き になった。
だがアメリカ一国のみで 新たな戦闘機を開発する財力もない。
そのなかで開始したのが9カ国
(米国、イギリス、イタリア、オランダ、トルコ、カナダ、オーストラリア、
デンマーク、ノルウェー)を巻きこんだF35の共同開発だった。
各国に財政負担を振り分ければ、アメリカの負担を最少に抑える
ことができるからだ。
開発が始まると米国防総省は、F35戦闘機を米軍の主力機として
2456機(米空軍1763機、米海軍・海兵隊680機など)
購入すると発表した。
日本、イスラエル、シンガポール、韓国も 購入すると手をあげた。
ところがF35の開発費が高騰していくなか、
共同開発国が 調達機数削減や 共同開発撤退の意向 を示し始めた。
イギリスは当初の138機導入計画を40機以下に削減し、
ノルウェーは2年間の購入延期を発表し、
カナダも80機導入計画を65機に削減し、
オーストラリアやオランダも調達機数削減の検討に入った。
アメリカの国益を最優先する兵器開発のために
ばく大な開発・研究費支出を強要される各国が 反発するのは当然で、
共同開発国9カ国のうち5カ国が 調達機数削減を表明する動きとなった。
それは、仮に米軍需産業がF35の生産ラインをつくっても、
注文が頭打ちになり、大赤字に陥る ことも懸念される事態だった。
この肩代わりを買って出たのが 防衛省と日本の軍需産業だった。
三菱重工、IHI、三菱電機が 米軍需産業の下請として
最終組み立てラインを担当することを引き受けた。
そして防衛省が1000億円を投じて三菱重工小牧南工場(愛知県豊山町)
に生産ラインを建設し、エンジン部門担当のIHI瑞穂工場(東京都)には
426億円を投じて5階建ての組み立て工場を建設した。
かつてのライセンス生産では 国産部品を使うことも可能だったが、
FMS生産は すべて米国製の部品しか使えなくなった。
また、いくら日本でつくっても組み立て後の製品を
すべてアメリカ側に納入し、そこで示された価格で日本側が買いとる
という仕組みは変わらない。
それは米軍需産業が 製造ラインをつくる投資まで
日本の軍需産業や防衛省にかぶせ、
着実に利益だけ得ていく体制 にほかならない。
オスプレイの17機購入も、防衛省は当初、5機で計611億円
(1機当り122億円)としていたが、総経費は大きく変わった。
その後判明したのは機体購入費=1681億円と
維持整備費4394億円(20年間)で合計6075億円になる
という試算で、結局1機当り357億円に達している。
しかもオスプレイは 速度が速く航続距離は長いが、
墜落事故が絶えず 輸送能力も低い。
米陸軍の大型輸送ヘリCH47が55人を乗せて大型貨物を運ぶのに対し、
オスプレイは24人。
さらにCH47は1機3500万㌦(約42億円)で価格は7倍以上だ。
このため最初は米陸軍も海兵隊も採用せず、
米議会が圧力をかけて採用させた。
このようなものを日本では 「優れたヘリ」と宣伝し、
法外な価格で 売りつけている。
すでにFMSで調達が始まっている 水陸両用車AAV7(BAEシステムズ)
もアメリカでは生産中止になった「骨董品」だという。
ベトナム戦争時に開発され、大型で狙われやすく
装甲はアルミで 防御力も低いという評価だ。
そのような兵器を1両7億円で 52両購入する方向である。
FMSは 欠陥装備を高額で売りつける だけでなく、
前払いさせて 武器を実際に収めない「未納入」も多い。
2007年から2016年までの10年間で
未納入額合計は 2481億円にのぼる。
このアメリカ政府を窓口とするFMS調達を減らすのではなく、
急拡大してきたのが安倍政府である。
FMS調達額は、第2次安倍政府登場前の2011年は431億円だった。
ところが2013年には1179億円計上し、
2016年度予算案では4858億円へ増額した。
そして2019年度予算概算要求では6917億円を計上した。
FMS調達額は8年間で16倍に膨れあがった。
日本の防衛予算も 第2次安倍政府発足前は4・71兆円(2012年度)
だったのが、2019年度は5・3兆円(概算要求)となり、
7年間で約6000億円増えている。
☆米軍需企業優先で 割を食う日本企業
こうしたなかで11月、防衛省が 国内軍事関連企業62社に
装備品代金の支払延期 を求める動きが表面化した。
「追加発注をするかわりに、2~4年後に今年度の代金も含めて
一括払いする」という内容で、資金繰りに困る企業側が強く反発した。
この「支払延期」を招いた原因が、
戦闘機やミサイルなど高額兵器を買い込む場合に適用する「兵器ローン」
(後年度負担=複数年度に分けて装備代を払う)が増えすぎ、
いまだに歯止めがかからないことだった【グラフ参照】。
▼https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2018/12/
62d760821596e6c821ae5e02532476a5-400x318.jpg
安倍政府がアメリカの要求を丸呑みし、防衛予算では賄えない額の
兵器売買契約を結ぶため、いくら返済額を増やしても
追いつかないからである。
2012年以前の新規兵器ローン契約は 年間1・7兆円規模だった。
それが安倍政府になって以後 2・5兆円規模に拡大している。
そのため防衛予算で 毎年過去最高を計上しても、
毎年 数千億円規模のローン未払いが蓄積していく事態に直面している。
第2次安倍政府発足前の2012年段階は「兵器ローン」が3・2兆円だった。
それが19年度概算要求では5・3兆円になり、2兆円以上拡大している。
際限なく 国の予算を
米軍産複合体に貢ぐ権力者が 国政を握っている限り、
国民生活に必要な 福祉・教育財源の充実も
災害復旧予算の拡充もない ことを教えている。
☆米国防衛の前線基地と化す 日本列島 安全を脅かす「安保」
問題は、こうした日本の兵器購入の動向が
アメリカの軍事戦略と密接に結びついていることだ。
アメリカの国防予算は2011年をピークに減少傾向にあったが、
2015年度の5600億㌦以後は 増え続け、
16年=5800億㌦、17年=6060億㌦、18年=6120億㌦と推移し、
19年度は6860億㌦(75兆円規模)に達した。
アメリカは10年に及ぶアフガン・イラク戦争で敗北し、
経済的にも財政的にも窮地に陥ったことから、現在は
アメリカ側の出費や人的負担を 最小限に抑え、
日本などの同盟国を最前線に立たせる 軍事配置を進めている。
米国防予算でも 陸海空軍と海兵隊で 計2万5900人の増員、
F35戦闘機77機とFA18戦闘攻撃機24機の調達を要求した。
攻撃型原子力潜水艦2隻や イージス駆逐艦3隻など計10隻の新造も求めた。
しかし、これは主として 空母艦隊 関連装備や
遠方からミサイル攻撃をおこなう装備で、
最前線への投入を意識した装備 とはいえない。
そして実行しているのは、在日米軍再編で司令部機能を移すと同時に、
米軍主力部隊はグアムへ引き下げる体制 づくりである。
それは 岩国基地や 佐世保基地、辺野古への新基地建設など
日本の米軍基地を出撃拠点として 増強し、
日本全土を不沈空母化する企み にほかならない。
さらに、日本がアメリカから買い込む装備は
みな最前線への投入を意識した 攻撃兵器である。
F35も 日本の自衛隊基地に本格配備するとなれば、
中国機やロシア機の警戒・排除任務にあたることになる。
それは米軍へのF35配備とは違う意味あいを持つ。
オスプレイも水陸両用車AAV7も水陸機動団(日本版海兵隊)が
島しょ奪還作戦などに使う装備である。
イージス・アショア配備計画も日本を基地にして
ミサイル攻撃をおこなう軍事配置である。
こうしたなかで安倍政府は 武器輸出禁止を解禁し、
ODA(政府開発援助)の軍事転用 を認め、
民間企業の武器輸出の窓口を担う 防衛装備庁 を発足させ、
国家をあげて 軍事技術の開発を後押しする体制 をつくってきた。
そして5兆円をこす兵器ローンで借金漬けの状態にありながら、
まだF35戦闘機を100機買い込み、アメリカに貢ぐ動きを見せている。
こうした兵器購入の実態は
アメリカが 日本の国家予算にたかって食い物にし、
挙げ句の果ては 米本土防衛の盾として 犠牲にしていく構造
を浮き彫りにしている。
「日米安保」や「日米同盟」が 日本を守る同盟などではない
ことを まざまざと見せつけている。
(以下「ギャラリー酔いどれ」から転載。)
◆https://www.chosyu-journal.jp/shakai/10212
長周新聞 2018年12月6日
◎米軍需産業のカモ にされる日本
防衛予算は つかみ取り 兵器ローンで 借金漬けに
高齢者の介護や医療費、教育費など 国民生活関連予算を削りながら、
一方では 安倍政府が ばく大な国家予算を投じて
米国製兵器を買い込み続けている。
借金である「兵器ローン」(後年度負担)の支払額が 5兆円をこえ、
大赤字状態であるにもかかわらず、2019年度の防衛予算は
過去最多の5・3兆円を計上した。
しかも今後の兵器調達ではF35ステルス戦闘機100機購入や
ヘリ搭載護衛艦の空母化など、天井知らずの武器購入を検討している。
アメリカが 在日米軍再編計画の総仕上げ段階 に入り、
次の戦争をにらんで 日本を最前線に立たせる軍事配置を加速するなか、
安倍政府は「バイ、アメリカン!(米国製品を買え)」と叫ぶ
アメリカの要求を丸呑みし、高額兵器購入に拍車をかけている。
中期防衛力整備計画(中期防)に基づき 約5年間で買い込んだ兵器を見ると、
自衛隊の戦地投入を意図した 攻撃兵器の増加が特徴となった。
主な装備は 空中戦を想定したF35ステルス戦闘機42機(ロッキード・マーチン)、
離島侵攻に使用する垂直離着陸輸送機オスプレイ17機(ベル、ボーイング)、
空母に搭載するE―2ホークアイ早期警戒機4機(ノースロップ・グラマン)、
滞空型無人偵察機グローバルホーク3機(ノースロップ・グラマン)、
戦闘機にもヘリにも空中給油可能なKC46Aペガサス3機(ボーイング)などで、
みな米国製である【表参照】。
▼https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2018/12/
a87cfcf7f001dbac641a90caeaabdfa7-600x539.jpg
日本側が発表する資料は 武器購入費を数年間で分割したり、
部品購入と組み立て費を分けるなど さまざまな小細工で 全貌が見えにくい。
しかしアメリカ議会調査局の報告は
「総額2兆円の 武器セールス」(2016年段階)と明記している。
2019年度の防衛予算概算要求では、
すでに契約している装備品の分割払い分に加え、イージス・アショア2基
(ロッキード・マーチン)を含む弾道ミサイル防衛関連経費4224億円
を計上した。
F35Aステルス戦闘機に搭載して 相手の脅威圏外(スタンド・オフ)から
攻撃するミサイル取得費(73億円)なども盛り込んでいる。
そして動き出したのが新防衛大綱に向けて検討しているというF35戦闘機
の100機購入、無人攻撃機アベンジャー(ジェネラル・アトミクス)
の20機配備、無人潜水機の開発、ヘリ搭載護衛艦「いずも」の空母化
などである。 数量、額ともにこれまでの装備購入とは段階を画しており、
どれも 攻撃・殺傷能力の高い兵器ばかり である。
☆急拡大したFMS調達
そして大きな問題は、この米国製兵器購入に
不平等なFMS(対外有償軍事援助)方式を適用し続けていることだ。
FMSはアメリカが「軍事援助をしている」という位置づけで、
同盟国に武器を買わせるシステムである。
このFMSについて アメリカの武器輸出管理法は、
①契約価格も納期も すべて米側の都合で決める、
②代金は前払い、
③米政府は自国の都合で 一方的に契約解除できる、
と規定している。
実際にFMSで調達したF35戦闘機42機の単価を見ると、
2012年契約当初は1機96億円だった。
ところが開発費などの増加を理由に翌13年は140億円に値上げし、
14年には159億円に値上げした。
その後もアメリカは値上げを続け、16年には181億円になっている。
しかも配備後は 維持費がかかる。
F35の整備は 軍事機密であるため、部品はアメリカから調達し、
技術指導者や技術者はみな アメリカから呼び寄せて整備する。
その渡航費や滞在費をみな「技術支援費」として
日本側が負担しなければならない。
こうして最終的に試算されたF35戦闘機42機にかかる総額経費は、
購入費=5965億円と維持整備費=1兆2877億円(30年間)で
合計1兆8842億円に達し、1機当り約449億円となっている。
もともとF35戦闘機の製造自体が 日本の要求ではなく、
アメリカの要求に基づいている。
アメリカは当初、最新ステルス機F22を主力戦闘機にすることを検討し、
「技術流出を防ぐために 他国へは売らない」と主張していた。
ところがイラクやアフガン戦争による軍事費が 国家財政を圧迫するなか、
高額なF22戦闘機を米軍の主力機にする計画を断念し、
低価格のステルス機調達を模索する動き になった。
だがアメリカ一国のみで 新たな戦闘機を開発する財力もない。
そのなかで開始したのが9カ国
(米国、イギリス、イタリア、オランダ、トルコ、カナダ、オーストラリア、
デンマーク、ノルウェー)を巻きこんだF35の共同開発だった。
各国に財政負担を振り分ければ、アメリカの負担を最少に抑える
ことができるからだ。
開発が始まると米国防総省は、F35戦闘機を米軍の主力機として
2456機(米空軍1763機、米海軍・海兵隊680機など)
購入すると発表した。
日本、イスラエル、シンガポール、韓国も 購入すると手をあげた。
ところがF35の開発費が高騰していくなか、
共同開発国が 調達機数削減や 共同開発撤退の意向 を示し始めた。
イギリスは当初の138機導入計画を40機以下に削減し、
ノルウェーは2年間の購入延期を発表し、
カナダも80機導入計画を65機に削減し、
オーストラリアやオランダも調達機数削減の検討に入った。
アメリカの国益を最優先する兵器開発のために
ばく大な開発・研究費支出を強要される各国が 反発するのは当然で、
共同開発国9カ国のうち5カ国が 調達機数削減を表明する動きとなった。
それは、仮に米軍需産業がF35の生産ラインをつくっても、
注文が頭打ちになり、大赤字に陥る ことも懸念される事態だった。
この肩代わりを買って出たのが 防衛省と日本の軍需産業だった。
三菱重工、IHI、三菱電機が 米軍需産業の下請として
最終組み立てラインを担当することを引き受けた。
そして防衛省が1000億円を投じて三菱重工小牧南工場(愛知県豊山町)
に生産ラインを建設し、エンジン部門担当のIHI瑞穂工場(東京都)には
426億円を投じて5階建ての組み立て工場を建設した。
かつてのライセンス生産では 国産部品を使うことも可能だったが、
FMS生産は すべて米国製の部品しか使えなくなった。
また、いくら日本でつくっても組み立て後の製品を
すべてアメリカ側に納入し、そこで示された価格で日本側が買いとる
という仕組みは変わらない。
それは米軍需産業が 製造ラインをつくる投資まで
日本の軍需産業や防衛省にかぶせ、
着実に利益だけ得ていく体制 にほかならない。
オスプレイの17機購入も、防衛省は当初、5機で計611億円
(1機当り122億円)としていたが、総経費は大きく変わった。
その後判明したのは機体購入費=1681億円と
維持整備費4394億円(20年間)で合計6075億円になる
という試算で、結局1機当り357億円に達している。
しかもオスプレイは 速度が速く航続距離は長いが、
墜落事故が絶えず 輸送能力も低い。
米陸軍の大型輸送ヘリCH47が55人を乗せて大型貨物を運ぶのに対し、
オスプレイは24人。
さらにCH47は1機3500万㌦(約42億円)で価格は7倍以上だ。
このため最初は米陸軍も海兵隊も採用せず、
米議会が圧力をかけて採用させた。
このようなものを日本では 「優れたヘリ」と宣伝し、
法外な価格で 売りつけている。
すでにFMSで調達が始まっている 水陸両用車AAV7(BAEシステムズ)
もアメリカでは生産中止になった「骨董品」だという。
ベトナム戦争時に開発され、大型で狙われやすく
装甲はアルミで 防御力も低いという評価だ。
そのような兵器を1両7億円で 52両購入する方向である。
FMSは 欠陥装備を高額で売りつける だけでなく、
前払いさせて 武器を実際に収めない「未納入」も多い。
2007年から2016年までの10年間で
未納入額合計は 2481億円にのぼる。
このアメリカ政府を窓口とするFMS調達を減らすのではなく、
急拡大してきたのが安倍政府である。
FMS調達額は、第2次安倍政府登場前の2011年は431億円だった。
ところが2013年には1179億円計上し、
2016年度予算案では4858億円へ増額した。
そして2019年度予算概算要求では6917億円を計上した。
FMS調達額は8年間で16倍に膨れあがった。
日本の防衛予算も 第2次安倍政府発足前は4・71兆円(2012年度)
だったのが、2019年度は5・3兆円(概算要求)となり、
7年間で約6000億円増えている。
☆米軍需企業優先で 割を食う日本企業
こうしたなかで11月、防衛省が 国内軍事関連企業62社に
装備品代金の支払延期 を求める動きが表面化した。
「追加発注をするかわりに、2~4年後に今年度の代金も含めて
一括払いする」という内容で、資金繰りに困る企業側が強く反発した。
この「支払延期」を招いた原因が、
戦闘機やミサイルなど高額兵器を買い込む場合に適用する「兵器ローン」
(後年度負担=複数年度に分けて装備代を払う)が増えすぎ、
いまだに歯止めがかからないことだった【グラフ参照】。
▼https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2018/12/
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安倍政府がアメリカの要求を丸呑みし、防衛予算では賄えない額の
兵器売買契約を結ぶため、いくら返済額を増やしても
追いつかないからである。
2012年以前の新規兵器ローン契約は 年間1・7兆円規模だった。
それが安倍政府になって以後 2・5兆円規模に拡大している。
そのため防衛予算で 毎年過去最高を計上しても、
毎年 数千億円規模のローン未払いが蓄積していく事態に直面している。
第2次安倍政府発足前の2012年段階は「兵器ローン」が3・2兆円だった。
それが19年度概算要求では5・3兆円になり、2兆円以上拡大している。
際限なく 国の予算を
米軍産複合体に貢ぐ権力者が 国政を握っている限り、
国民生活に必要な 福祉・教育財源の充実も
災害復旧予算の拡充もない ことを教えている。
☆米国防衛の前線基地と化す 日本列島 安全を脅かす「安保」
問題は、こうした日本の兵器購入の動向が
アメリカの軍事戦略と密接に結びついていることだ。
アメリカの国防予算は2011年をピークに減少傾向にあったが、
2015年度の5600億㌦以後は 増え続け、
16年=5800億㌦、17年=6060億㌦、18年=6120億㌦と推移し、
19年度は6860億㌦(75兆円規模)に達した。
アメリカは10年に及ぶアフガン・イラク戦争で敗北し、
経済的にも財政的にも窮地に陥ったことから、現在は
アメリカ側の出費や人的負担を 最小限に抑え、
日本などの同盟国を最前線に立たせる 軍事配置を進めている。
米国防予算でも 陸海空軍と海兵隊で 計2万5900人の増員、
F35戦闘機77機とFA18戦闘攻撃機24機の調達を要求した。
攻撃型原子力潜水艦2隻や イージス駆逐艦3隻など計10隻の新造も求めた。
しかし、これは主として 空母艦隊 関連装備や
遠方からミサイル攻撃をおこなう装備で、
最前線への投入を意識した装備 とはいえない。
そして実行しているのは、在日米軍再編で司令部機能を移すと同時に、
米軍主力部隊はグアムへ引き下げる体制 づくりである。
それは 岩国基地や 佐世保基地、辺野古への新基地建設など
日本の米軍基地を出撃拠点として 増強し、
日本全土を不沈空母化する企み にほかならない。
さらに、日本がアメリカから買い込む装備は
みな最前線への投入を意識した 攻撃兵器である。
F35も 日本の自衛隊基地に本格配備するとなれば、
中国機やロシア機の警戒・排除任務にあたることになる。
それは米軍へのF35配備とは違う意味あいを持つ。
オスプレイも水陸両用車AAV7も水陸機動団(日本版海兵隊)が
島しょ奪還作戦などに使う装備である。
イージス・アショア配備計画も日本を基地にして
ミサイル攻撃をおこなう軍事配置である。
こうしたなかで安倍政府は 武器輸出禁止を解禁し、
ODA(政府開発援助)の軍事転用 を認め、
民間企業の武器輸出の窓口を担う 防衛装備庁 を発足させ、
国家をあげて 軍事技術の開発を後押しする体制 をつくってきた。
そして5兆円をこす兵器ローンで借金漬けの状態にありながら、
まだF35戦闘機を100機買い込み、アメリカに貢ぐ動きを見せている。
こうした兵器購入の実態は
アメリカが 日本の国家予算にたかって食い物にし、
挙げ句の果ては 米本土防衛の盾として 犠牲にしていく構造
を浮き彫りにしている。
「日米安保」や「日米同盟」が 日本を守る同盟などではない
ことを まざまざと見せつけている。
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