1968年に手塚治虫は「地球を呑む」という作品を発表した。私は、この作品が手塚の最高傑作の一つだと信じている。
1942年8月、ガダルカナル島へ出征した日本兵・安達原鬼太郎、関一本松の二人は捕虜から脱走したアメリカ兵を処刑するも、死に際のアメリカ兵から「これを拝んで、お前たちも気が狂え」と写真を渡される。2人はそこに写る謎の美女の虜となるも、「ゼフィルス」という女の名以外の詳細はわからずじまいであった。
それから20年後、大企業の社長となった安達原は取引先から「ゼフィルス」を名乗る写真と同じ美女が来日してホテルに滞在しているという知らせを聞き、その日暮らし生活を送る一本松に彼の息子で性欲以上に酒を愛し、地球を呑みつぶすという野望を持つ男・五本松にゼフィルスを調査させる。
五本松はゼフィルスの滞在するホテルを訪れ、次いでゼフィルスの住処であるという太平洋の孤島「マムウ共和国」を訪れる。
実はゼフィルスは母親と同じ名前を名乗り、絶世の美女の姿の人工皮膚を纏った7人姉妹であったのだ。ゼフィルス達には亡き母の遺言に従い、「お金を滅ぼす」、「世界中の道徳や法律を混乱させる」、「男へ復讐する」という野望を抱いていた。
ゼフィルス達の末妹・ミルダは日本に滞在した際に、他の男と異なりゼフィルスに惑わされない五本松に出会ったことで惹かれてしまい、その愛ゆえに姉達を裏切り、私刑を受けかけたところを逃れ、日本へ向かう。
しかし、その間にもゼフィルスの計画は進んでおり、自分達が発明した精緻な人工皮膚を安達原の企業を介して世界市場に流通させる。これによって世界各地で人工皮膚を使って他人に成りすました犯罪の横行、それによる検挙率の低下が起き、更にマムウ共和国の古代遺跡に秘蔵されていた金塊を無差別にばらまいたことによる貨幣経済の崩壊が起きる。
これによる大混乱の中、やがて世界は物々交換を基本とする原始的な社会体制へと退行して行く。
**********************************************************
引用以上
手塚の発想の素晴らしさは、世界が金塊に対する幻想を前提として現代社会の価値観を生み出している姿を鮮明に描いたところであり、その金塊は実は、人々の幻想が壊れたとき「タダの物質」にすぎない本質を示唆していることだ。
しかし、ゼフィルスの姉妹たちは、金塊と人工皮膚を、世界に莫大に供給することで、人々の強欲を通じて世界経済を崩壊させた。世界中が「虚構の価値」に振り回されていたからだ。
この物語は、「本当の価値」とは何かと考えさせることを示唆している。
今、この物語を映画化したなら、世界に絶賛されるのではないだろうか?
ちょうど、この漫画の出たころ、アメリカのネオコン(右傾化した新左翼)から、ハイエクやフリードマンが出て、「新自由主義思想」の体系を作り出していた。
二人ともユダヤ人であり、これはユダヤ教徒の聖典、タルムードから生まれた思想というしかない。世界の経済学者の9割はユダヤ人なのだ。
それは、価値の源泉が金であり、金という価値を求める市場原理(アダムスミスの「神の手」)によって世界に秩序をもたらすというものだ。これが後に、「ワンワールド」と呼ばれる全世界を金融思想で一元化するための市場原理社会になってゆく。
価値観が「金儲け思想」によって一元化されたワンワールド世界では何が起きるのか? というと、蓄財の多寡を基準とした人間の序列、差別社会が成立し、もの凄い弱肉強食の秩序に支配された極端な格差社会が登場してくる。
世界には超大金持ちと貧乏人大衆の二極しかいなくなり、今、まさにそんな社会が実現している。
世界の1%にも満たない金融資本家が、99%の世界を支配する時代がやってきた。トップに立つ支配者の大部分がユダヤ人である。それは、上にリンクしたタルムード世界の実現である。
世界を支配する者たちは、国連に代わる統治機構を作り出している。それがキッシンジャーの構想により弟子のクラウス・シュアブが成立させた「世界経済フォーラム=WEF」、通称「ダボス会議」である。
主宰メンバーは、ビルゲイツ・アルゴア・バフェット・ソロスなど世界の資産の95%以上を保有しているといわれるユダヤ人たちで占められている。
日本からは主宰メンバーとして竹中平蔵が参加している。以下は2022年のもの。
大金持ちになれば、その人の価値観は、蓄財の多寡で統一されることになる。毎日、株価や預金残高を見て、自分の価値ランキングに一喜一憂する人生なのだろう。
そして、多くの超大金持ちが、安定資産として純金金塊の保有、秘匿を目指す。
三菱UFJ銀行で、貸金庫から盗みを繰り返した行員がいた。
今村ゆかり容疑者は、数十億円分の金塊を盗んだと供述しているはずなのに、なぜか、被害届が出てこないので、本来なら10年以上の懲役判決になるはずが、たぶん軽い刑になるといわれている。
貸金庫オーナーたちは、なぜ被害届を出さないのか? それは盗まれたものが金塊であり、被害届を出した瞬間に、国税庁が駆けつけて出所を調べられ、脱税で摘発されるからである。
こんな面白い事件があるだろうか? 別の意味でのゼフィルス事件なのかもしれない。
大金持ちたちにとって、金塊は、所有者をごまかせる唯一の財産ともいえる。それは絶対的価値であり、金本位制社会が復権すれば、無条件の恒久価値だからだ。
金価格は、2019年から高騰を始め、当時グラム5000円だったものが、2024年にはグラム1万4000円になった。現在は1万6000円前後だ。
金などカケラも持っていない貧乏人の私からすれば、金メッキで十分なので、何の魅力も感じないが、金に夢中になっている人にとっては、見ているだけで恍惚となり、よだれが止まらないトリュッフのようなものかもしれない。
一時、中国の超巨額債務問題から金が大量に市場に放出されて価格が下がったが、現在はまた復活しているようだ。
だが、金塊に幻想を持っている人々は、手塚治虫が指摘したように、「マムウ共和国」に、世界経済価値を崩壊させるほどの金塊が存在することに気づいていない。
地球における利用可能な資源としての金の量は約5万トン程度にすぎないが、実は、海水中には50億トンが含まれていて、採取方法が確立されたなら、金の価値は激減するといわれている。
たとえば、青ヶ島付近や西の島などの熱水鉱床では、莫大な金鉱床が予想されていて、「マウム共和国」は、決して空想物語ではない。
だからゼフィルスの計画は、決して夢物語ではない。まして、海水から直接金を取り出す技術が確立されたなら、金の価値は銅程度のものにまで下落するかもしれない。
しかし、世界のダイヤモンドの価値を統括しているユダヤ人の組織があるといわれていて、価値が下落ないよう暴力的調節を図っているという噂がある。
世界経済を支配している闇の勢力、あるいはディープステートは、金やダイヤモンドの過剰供給が価格価値を下落させることを恐れて秘密機関を作っているとの噂がある。
ゼフィルスのように過剰供給をして価格支配を崩壊させようとする人たちを、秘密裏に始末するのだといわれる。
だから、金やダイヤモンドは、どれほど莫大な資源が発見されても決して価格が下がらないのだと噂される。
今、日本領海での熱水鉱床の莫大な資源価値が報道されているが、なぜか話が進展しないように見える。突然、話題が消えてしまうのだ。
これは、もしも話題が世界に共有されてしまうと、必ず暴力的な勢力の関与が始まり、たとえば、アメリカのトランプ政権などが、無理難題をふっかけて資源を奪おうとすることを恐れていることも考えられる。
私からみると、何よりも新自由主義=資本主義の価値観である「金儲け」が、世界中の人々に、「人生の唯一の価値が蓄財である」と洗脳し、蓄財の多寡が人のランキングを定め、金のためだけに生きることが正義であるという人生観を与えていることが、人類の未来、拝金主義社会の未来を絶望色に染めているように見える。
これが強欲社会、戦争社会を生み出していることは、トランプ政権を見ていると鮮明に理解できる。