- 2021/07/14
思えば、昔の日本は、少なくともサラリーマン家庭では妻が専業主婦であるのが普通で、つまりそれだけの給与を会社や企業が払っていたわけである。それを払っても会社や企業は痛くも痒くも無く、労基法をきちんと遵守していたわけだ。では、その後の日本の変化は何によるものかと言えば、「新自由主義」、つまり、被雇用者の所得を極限まで減らし、会社幹部や経営者や株主が企業利潤を限界まで吸い上げるという思想がはびこるようになったということだろう。
なお、「戦闘的フェミニズム」が、社会体制との闘争ではなく、男性との闘争になっている(しばしば女性との闘争ですらある)ことが、現在の非婚社会の一因ではないかと思う。
もちろん、結婚しない人生を選択するのも個々人の判断だが、少なくとも「結婚できない社会」であることは、その社会が不幸な社会であるのだと私は思っている。赤ん坊の泣き声や子供たちの遊ぶ笑い声の聞こえない社会。
(以下引用)
「ATMにされたくない」婚活市場から撤退する男性たち
ブームで終わらず定着した婚活
2008年2月に山田昌弘・白川桃子「「婚活」時代」(ディスカヴァー携書)が発売されて以降、「婚活」という言葉は一時的なブームで終わることなく、着実に社会に定着していっている。以下は、グーグルトレンドの「婚活」という言葉の検索トレンドである。
「婚活」が社会に定着していくのは、夫婦が知り合ったきっかけの変容からみて必然的だろう。「出生動向基本調査・夫婦調査」の「夫婦が知り合ったきっかけ」をみると90年代後半には「お見合い」が10%未満となりほとんどなくなってしまった。また「お見合い」の減少に伴って増加した「職場」も00年代後半には「友人・兄弟」より少なくなってしまった。
「お見合い」「職場」などのようにある程度受け身でも結婚相手を見つけることができた仕組みや場所が減ったことで、個々人が主体的に考え行動しなければ結婚相手が見つかりにくい時代に変化したのである。
そんな中、婚活サービスによる成婚が増えている。ブライダル総研(リクルート)「婚活実態調査2018」によると、各年に結婚した人のうち「婚活サービス」(結婚相談所、婚活サイト・アプリ、恋活サイト・アプリ、婚活パーティ・イベントの4サービス)を利用して結婚できたと回答した比率は近年増加しており、2017年は10.4%と10人に1人の割合まで高まった。
また同調査によると婚活サービスの利用経験があるのは、男性よりも女性の方が多い。特に「婚活パーティ・イベント」において差が大きくなっている。
婚活に一生懸命なのは女性なのである。これはTwitterの婚活アカウントの多くが女性であるという実感とも一致する。一般的に女性は男性よりも容易に異性をみつけることができそうなものであるが、どうしてこのような差が生じたのだろうか。
【参考】婚活サービスの種類
・相談所型・・・・・・相談員を介して紹介してもらう
・ネット・アプリ型・・サイト・アプリ登録者の中か相手を探す
・イベント型・・・・・イベントの場所で複数の参加者同士が会う
女性の「ATM婚志向」が高まる
結婚のメリットには大きく「心理的メリット」「経済的メリット」がある。「心理的メリット」とはパートナーと親密な関係であることによる心理的な満足感や安心感などであり、「経済的メリット」とは結婚相手との共同生活により労力、モノ、カネなどを補完しあえることである。
近年、女性において「心理的メリット」よりも「経済的メリット」を求める傾向が強まっている。「出生動向基本調査・独身者調査」の「結婚の利点だと思うもの」の時系列推移をみると「精神的な安らぎの場が得られる」「現在愛情を感じている人と暮らせる」が低くなり(男女)「経済的に余裕がもてる」が高くなっている(女性のみ)。
このように女性が婚活において「経済的メリット」を求める傾向を「ATM婚志向」と名付けたい。婚活が着々と浸透する中、街コン、スマホアプリなど様々な婚活サービスが登場した。「ATM婚志向」の女性にとっては安価かつ手軽に男性を探せる環境になったのである。
「ATM婚志向」が高まる社会的背景
では、なぜ女性が結婚に対して「心理的メリット」よりも「経済的メリット」を求めるようになったのだろうか。「高学歴化」「リスク回避志向」「親への意識」という3つの社会的背景があると考える。
1.高学歴化
「出生動向基本調査・独身者調査」によると、女性は学歴が高卒から大卒以上になると「結婚相手を決めるとき重視する項目」として「経済力」「職業」「学歴」を選ぶ比率が高まる。したがって大卒女性が多い社会では、女性全体における結婚に経済的メリットを求める意識が強まる。
2.リスク回避志向
00年半ば以降、若者のリスク回避志向が高まっている。OECDの統計では日本人の海外留学は2004年82,945人から2012年60,138人へと減少した(しかし直近は増加傾向)。また全国の大学3年生、大学院1年生を対象とした「2020年卒マイナビ大学生就職意識調査」よると「大学生が企業選択で重視するポイント」の長期的トレンドでは「自分のやりたい仕事ができる会社」が減少する一方で「安定している会社」が増加した。
リスク回避志向が高まるということは、結婚という人生を左右する重要なライフイベントにおいても、わかりやすく安心感が得られる指標(「年収」「学歴」「職業」など)が重視されるのは自然だろう。「お金は裏切らない」というわけである。
3.親への意識
「出生動向基本調査・独身者調査」の「結婚の利点だと思うもの」では女性において「親を安心させたり周囲の期待にこたえられる」が増加している(前掲グラフ:1997年13.6%→2015年21.9%)。近年未婚者の親との同居が増えている。親世代の豊かな生活水準が享受できる実家を満喫していると、それをやめたくなるほどの魅力的な男性でもいなければ、結婚を優先しないだろう。また、親からのプレッシャーあるいは安心させたいという思いから結婚自体には前向きであろうが、親が与えてくれた教育投資に相応しいハイスペックな男性を選ばなければ、親に申し訳がないという思いも強いだろう。
婚活サービス=ハイスペ男性の狩場
婚活サービスを利用する女性は男性に求める希望年収が高い。結婚相談所大手ノッツェが未婚の会員を対象に実施した「恋愛・結婚意識調査」(2012)では、女性が男性に求める希望年収が「500万円以上」が56.9%。一方、内閣府が一般的な未婚者(20~49歳)を対象とした「少子化社会対策に関する意識調査」(2018)では希望年収「500万円以上」が46.0%。婚活に乗り出している女性の方が希望年収が高いのである。(ちなみに年収500万円以上の未婚男性(20~49歳)は15.9%しかいない(内閣府,2018))これは女性にとっての婚活が「結婚相手の男性を見つけるため」ではなく「ハイスペック男性を厳選するため」という意味合いが強くなっているからであろう。
婚活ブームの火付け役、山田昌弘は2018年のニュース記事で次のように述懐する。
「『婚活』時代」が訴えたかったのは次の2点だった
(1)待っていたって結婚はできない
(2)夫に経済的に依存する結婚を目指すのは無理。女性も共働きを目指すのが良い
ところが、実際には「婚活=『いい男の奪い合い』と誤解された。数少ない、収入の安定した男性を捕まえるために、早く活動しなくちゃいけないというふうに理解されてしまった
今や婚活は「女性のハイスペ男性の狩場」になってしまった。男性たちはこのような状況をどのように感じているのだろうか?
すすむ男性の結婚ばなれ
男性は結婚に利点を感じなくなってきている。「出生動向基本調査・独身者調査」によると「結婚することは利点があると思う」と回答した比率は、男性は1986年69.1%から2015年64.3%と4.8ポイント減少、女性は1986年70.8%から2015年77.8%と7.0ポイント増加。女性に比べて男性の方が結婚に利点を感じない傾向が強まっている。
また、男性は結婚をあきらめるようになってきている。同調査の「一生結婚するつもりはない」と回答した比率は、男性は1982年2.3%から2015年9.4%と7.1ポイント増加、女性は1982年4.1%から2015年6.8%と2.7ポイント増加。女性に比べて男性の方が結婚をあきらめる傾向が強まっている。
以上のように、2000年以降「結婚に積極的になった女性、結婚に消極的になった男性」という構図に鮮明になってきた。
男性が感じる”ATM圧”
では、なぜ男性は結婚に消極的になったのだろうか。「出生動向基本調査・独身者調査」では男性(30~39歳の未婚者)の「現在独身でいる理由」は、長期的(1997→2015年)には「結婚資金が足りない」が最も顕著に増加、短期的(2010→2015年)には「結婚する必要性をまだ感じない」「独身の自由さや気楽さを失いたくない」「今は仕事に打ち込みたい」が増加した。つまり男性が結婚に消極的なのはお金の不足である。そして手が届かない結婚よりも独身生活に積極的に意義を見出だそうとしているのである。
一方、女性は「独身の自由さや気楽さを失いたくない」「結婚する必要性をまだ感じない」が大きく減少し「異性とうまく付き合えない」が大きく増加した。女性は結婚に対して積極的になっているもののうまくいっていない様子がうかがえる。
さらに同調査の「独身生活の利点だと思うもの」では男性(30~39歳の未婚者)は女性と比べて全体的に利点を多く挙げている。また男女差が大きい項目をみると男性は女性よりも「行動や生き方が自由」が16.0%高く、「金銭的に裕福」が13.1%高く「家族を養う責任がなく、楽」が14.1%高い。逆にいえば、男性は女性との結婚を「不自由で」「お金がなくなり」「責任が重くて苦痛」だと思っているわけである。
男性が女性との結婚に対して”圧”を感じていることは世界的にみても明らかである。ISSP国際比較調査「家庭と男女の役割」(2012)では日本の女性は「男性も女性も家計のために収入を得るようにしなければならない」の賛成率が世界でワーストである。日本の女性は世界で最も「共働き」に対する協力意識が低く、「片働きで稼がなければならない」というプレッシャーを男性に与えているのである。
さらに専業主婦コースに対する態度でも男女のすれ違いがある。「出生動向基本調査・独身者調査」では、男性が女性に専業主婦コースを期待する比率は1997年20.7%から2015年10.1%と半減しているのに対し、女性自らが専業主婦コースを理想であるとする比率は1997年20.6%から2015年18.2%とほとんど変わっていない。
日本の女性は、日本経済が低迷し男性の賃金が伸び悩み女性が社会進出して男女賃金格差を縮小させた中でも、男性に対しては経済的メリットを期待し、自らは専業主婦志向を継続させてきた。「ハイスペ男性の狩場」と化した婚活市場から男性が撤退してしまうのは必然である。
さみしくない男性の増加、代替される結婚の心理的メリット
とはいえ男性にとって結婚しないということは孤立につながるためどんなにつらくても消極的になれないのではなかろうか。しかし近年「一人がさみしくない」という未婚男性が増えているのである。「出生動向基本調査・独身者調査」では「一人の生活を続けても寂しくないと思う」と回答した未婚男性(18~34歳)は1997年は37.1%だったものが2015年には48.4%と約10%も増加した(女性は2015年で36.2%)。
インターネット、スマホの普及によって多種多様なコンテンツを安価かつ手軽に入手できるようになった。2005年~2010年は秋葉原ブーム、深夜アニメの増加、ニコニコ動画などオタクカルチャーが席巻し定着した。2010年以降はAKB48、ももいろクローバーZなどアイドルがブームになり今もオリコン上位を独占している。オタクカルチャーやアイドルは、男性が現実の女性との関わりから得られる「心理的メリット」を代替する機能がある。今後もVR、AI、ロボット技術の進歩によってこの分野はさらに高度になっていくだろう。このような変化は特に孤立しやすく性欲が強い男性にとって女性と結婚するメリットを減らすだろう。
ハイスペ男性は競争倍率が高く女性を厳選する
女性がATM婚を狙うことは合理的なのだろうか。鈴木ら(2018)は、大手企業の婚活サービスの会員の行動履歴を分析した結果、「ハイスペック男性に人気が集まる」「ハイスペック男性ほど女性を厳選する」という傾向を明らかにした。「100日あたりのお見合い申し受け件数」に影響を与える要因を分析した結果、男性のお見合い申し受け件数は、社会経済的条件(年収、大卒)などで説明できる割合が女性よりも高いことが明らかになった。つまり男性の場合選ばれる基準が明確(年収、学歴など)である分、人気がある者は女性の場合よりも一極集中しやすい傾向がある。
「お見合い申し受け許容率」に影響を与える要因を分析した結果、男性が高学歴、高年収であるほど「許容率」が下がる傾向があった。「100日あたりのお見合い申し受け件数」や「一週間あたりの仕事時間」を統制してもこのような傾向であるため、申し込みが多すぎるから、仕事が忙しいから、などの外的要因以外の選好の要因であると考えられる。つまりハイスペック男性ほど女性を厳選するである。
ハイスペ男性はATM婚志向の女性と相性が悪い
ハイスペック男性が厳選するということは「出生動向基本調査・独身者調査」でも確認できる。同調査では、男性は高卒から大卒になると「人柄」を重視する比率が約10%増加する。学歴が向上することで結婚相手を厳選する傾向は女性にもあるが(上昇婚志向)、男性の場合”内面”を厳選をするようになるのである。
つまりこのように人柄を重視するハイスペック男性にとっては、結婚を経済的メリットだと捉えATM婚活に専念するタイプの女性は軽蔑するだろうし、もし自分からお金や職業がなくなった場合ひとりの人間として尊重してくれないリスキーな女性だと写るだろう。さらにいえば、そもそも女性の人気が一極集中しやすいハイスペック男性が婚活市場に残っていることは合理的には考えにくく何らかの「訳あり」(既婚者、ヤリ目、借金など)である可能性が高い。総合するとハイスペック男性狙いのATM婚活は失敗する確率が高く女性の貴重な若い時間を浪費するだけで終わるハイリスクな行為だといえる。
女性にとって成功しやすい婚活とは
それでは今の時代、どのような婚活が成功しやすいのだろうか。以下、簡単に提案したい。
①若いうちから異性を探す
・女性は若いほど男性に人気がある
・同世代にはまだ魅力的な男性が多く残っている
②自分から積極的にアプローチする
・自分からアプローチしない競合女性が多くアドバンテージになる
・男性は女性にアプローチされることに慣れておらずコントロールしやすい
③将来性で選ぶ
・ハイスペ男性は婚活市場に少ないし、もし出ていても失敗しやすい
・将来性がある男性でも現在スペックが低ければ倍率が低く成功しやすい
④高望みをしない
・条件の高さや多さは自分が思っている以上に出会える確率を下げる
・低成長社会では普通だと思っていた認識が高望みになりやすい
⑤男性比の高いコミュニティに入る(工学部、オタサーの姫)
・需給のバランスを理由に”売れ残る”ため魅力的な男性が残りやすい
・競合女性が少ないため比較的魅力的な男性を見つけやすい
しかしこのようなテクニック以前に女性自身が”自立心”を持つことが重要なのではなかろうか。
成功しやすい婚活を妨害するフェミニスト
とある有名な婚活コンサルのアカウントはエビデンスに基づいた現実的な婚活アドバイスを辛口な表現でツイートしており人気を集めている。ときに女性に対しても辛口であるため、定期的にフェミニストの反感をかっている。
確率を高める正攻法の婚活アドバイスに対してでもフェミニストのこのような反発が起こるのは「安売りをした結婚はケアの搾取になる」というフェミニズムのイデオロギー(信念)が背景にあるからだろう。結局、ひとりの女性が幸せになることよりも、フェミニズムのフィルターを通して現実を叙述すること(自己満足)の方が大切なようである。このようなフェミニストの意見を聞くことは誰も幸せにしない。
<参考文献>
鈴木・須藤・寺田・小黒「学歴・収入・容姿が成婚と配偶者選択行動に与える影響::結婚相談サービスに内包されたメカニズム」( 数理社会学会「理論と方法」、2018年33巻2号)
山田・白川「「婚活」時代」(2008年)
山田「結婚不要社会」(2019年)
- メモ日記トゥディ
- 0CM
コメント