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心筋梗塞の女性、10病院に断られた末に死亡…感染急増で一般救急「しわ寄せ」
新型コロナウイルスの感染者が急増し、各地でコロナ病床の確保が進む中、「コロナ以外」の一般病床が
同時に3人が車内待機
19日午後6時。国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)の入り口で救急車が2台、患者を乗せたまま待機していた。
「ベッド、何とか空けられたよ」
木村昭夫・救命救急センター長が声をかけると、30分以上、救急車内で待つ「車内待機」を続けていた70歳代女性が、病院内に運ばれた。女性は胸の痛みを訴え救急車を呼んだが、4か所以上の病院で受け入れを断られていた。
同病院では、この1週間、救命救急センターも一般病床も満床状態が続いている。同時に3人が車内待機することもあった。数日前には、心筋梗塞の80歳代の女性が、10か所の病院に断られた末に同病院に到着したものの、直後に死亡が確認された。
一般の患者の受け入れが逼迫しているのに対し、同病院のコロナ病床には余裕がある。19日現在、すぐにコロナ患者を受け入れられる44床のうち、約半数が空床だという。
木村センター長は「コロナ病床が逼迫した(昨夏の)第5波と正反対の状況だ。コロナ以外の患者の受け入れが、どんどん厳しくなってきている」と訴える。今週から、がん手術などの制限も始めたという。
第5波ピーク超え
政府は、第5波でコロナ病床が逼迫したことを受けて、病床の拡充を都道府県などに要請。第6波では、第5波ピーク時の約3万9000床から、約6000床増える見通しとなった。
東京都では、第6波に向けて最大6919床を確保。第5波の収束後は一時的にコロナ病床を縮小していたが、感染拡大を受けて今月7日、最大に増やした。
各病院でコロナ病床の確保が進めば、その分、一般病床が削られる。夏に比べ、冬場は脳梗塞や心筋梗塞、肺炎などの救急搬送が増えることもあり、コロナ以外の救急患者の受け入れが難しくなっている。
東京都によると、5か所以上の医療機関に受け入れを断られるか、20分以上搬送先が見つからなかった「救急搬送困難事案」(東京ルール)は今年に入り急増している。17日に200件を超え、第5波のピーク(185件)を上回った。
全国的にも搬送困難事案(受け入れを3回以上断られ、救急車が現場に30分以上とどまったケース)は増えており、総務省消防庁の集計では、10~16日の1週間で過去最多の4151件に上った。このうち、発熱などコロナ感染の疑いがあるケースは1031件で、断られた患者の多くはコロナ以外の理由だという。
同庁救急企画室の担当者は「まだ分析していないが、現場からは『コロナ病床を空けておかなければならないため、搬送先を探すのに手間取る』という声が上がってきている」と語った。
余裕があるのに
東京北医療センター(東京都北区)で管理者を務める宮崎国久医師によると、今年に入って救急要請が急増し、18日だけで80件の要請があった。351床ある一般病床は空いてもすぐに埋まり、救急要請を断らざるを得ない状況だという。
一方で、同センターの約40床のコロナ病床のうち、6割程度が空いている。宮崎医師は「今の状況が続けば、このままコロナ病床数を確保し続けるべきかどうか、悩ましい」と語る。
国はコロナ用に確保し、空床となった病床には補助金を出している。今後のコロナ患者の急増に備えるためで、厚生労働省は、こうした空き病床には原則として一般患者を入れてはいけないと通知している。
舘田一博・東邦大教授(感染症学)は「オミクロン株は症状が軽いことが多いため、軽症者は自宅療養を中心にし、本当に必要な人が入院できる体制が必要だ。簡単な解決策はないが、コロナ医療と一般医療のバランスについて、今後も議論を続けなければならない」と指摘している。
厚生労働省は「総務省消防庁と連携して、今後の対応を考えたい」としている。
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