先日、ブラック企業合法化法案について書きましたが、長いとお叱りを受けたので、サクっと概要がわかるように要約してみました。拡散用に、是非ご活用ください。より詳しく知りたい方は、先のブログをお読みいただければと思います。
皆さん、残業代不払いや超長時間労働を合法化する法案、ブラック企業合法化法案が、参議院選後すぐに通る見込みだということは、皆さんご存じでしょうか?
残業代不払制度の導入は、第一次政権時からの安倍晋三と財界の悲願です。第二次安倍政権とともに、「アベノミクス」の「第三の矢」の中心政策として、復活しました。人件費を削って長時間労働させれば、日本経済は復活する、と安倍と財界は考えているようです。
でも、この法案が可決されたら、私たちの生活はどうなるのでしょう?そして日本経済は本当によくなるのでしょうか?
ブラック企業合法化法案って?
2015年4月3日に、政府は労働基準法改正法案を提出しました。そこに含まれる「高度プロフェッショナル制度」。政府の説明によれば、一定の要件さえ満たせば、「労働時間と賃金のリンクを切り離した働き方ができる制度」と説明していますが(首相官邸)、それって要するに、一定の年収のサラリーマンは、労働基準法は適用せず、定額使い放題OKですよ!ってことですよね。
この法案が通ると企業はどれだけ働かせても、残業代を払わなく済むだけじゃなくて、過労死基準を大幅に超える超長時間労働も、合法になります。たとえば、①5日の有給休暇を与えれば360日連続で勤務OK!②年間104日休ませれば、24時間連続勤務OK!なんです。
このブラック企業合法化制度が適用される「一定の年収」っていくらなの?って話ですが、今のところ1075万円です。なんだ、私たちには関係ないね、と思ったあなた。安心しないでください。この法案の年収要件は、厚生省令で変えられるんです。つまり、国会審議を通さずにせずに、明日からあなたの残業代が払われなくなる、ってこともありえます。それも政府の一存なのです。
ブラック企業合法化の背景は、「若者のせいで日本がだめになった」という妄想
「高度プロフェッショナル制度」っていうぐらいだし、そんな労働者みんな残業代なくなるとか極端すぎない?って思う人もいるでしょう。実際のところどうなのか、少し遡って、向こうの「本音」を知る必要があります。
元々、「ホワイトカラーエグゼンプション」と呼ばれたこの制度は、「年収400万円以上の人間には労働基準法を適用しないでくださいね」というのが経団連の希望でした。
2006年に、経団連会長の御手洗冨士夫(キヤノン)のバックアップを受けて、第一次安倍政権が誕生、この制度を導入しようとします。そのときに、安倍=経団連が推進したのは、教育改正による公徳心・愛国心教育で、その先に憲法改正を見据えていました。
なぜ財界が教育改正を求めたか、経団連が2007年念頭に出したビジョンに「希望の国、日本」を読めば、「権利ばかり主張する自己中心的な若者が、今の日本をダメにした」という妄想がスケスケ。その諸悪の根源が「戦後民主主義教育」。(ニッキョーソ!って首相のヤジ覚えてますか?)
残業代不払い法案の背景にも、この思想があります。つまり。「会社が儲かってないのに残業代を請求する若者は実にケシカラン!労働者が権利を主張できないように法律を変えろ!そしたら日本経済が復活する!」。これがブラック企業合法化の背景にいるオジサンたちの思想です。
この制度は、国民の大反対を受け、法案提出もできずに頓挫。3億円脱税がバレそうになったこともあって総理大臣の座を追われた安倍ちゃんでしたが、日本会議とかいう、生長の家原理主義者たちが作ったカルト集団の後押しを受けて再度首相に復活。「アベノミクス」その「第三の矢 成長戦略」の本丸として、ブラック企業合法化法案もまた復活するわけです。
ただ、前回の反対があったので、「年収1075万円以上」という条件をつけました。それに怒ったのが経団連。経団連会長が「制度が適用される範囲をできるだけ広げていっていただきたい」と記者会見で言ったので大批判を呼び、塩崎厚労大臣がたまらず財界人100人集まった会合で言いました。
まあ、我々としては小さく産んで大きく育てる・・・ですから皆さん、それはちょっとぐっと我慢して頂いてですね、まあとりあえず通すことだと言って、合意をしてくれると大変ありがたいと思っています。
というわけで、やっぱり彼らとしては、ブラック企業合法化が目的なわけです。ただ、国民の目をよりうまくごまかすために、いきなり熱湯に放り込むのではなく、ぬるま湯の窯に入れてじわじわ温度をあげていく、ゆでガエル作戦に変えただけです。
ブラック企業合法化で生活と経済はどう変わる?
さて、ブラック企業合法化で、彼らは日本経済が復活すると信じているようです。確かに、人件費を削ったら、企業は一時的に利益を上げます。でも、それは経済成長につながるでしょうか?
このグラフを見てください。
給与所得総額とGDPはほぼ完全に(98%)連動しています。つまり、給与をカットすればするほど、経済は落ち込むのです。1998年からずっとリストラ・サービス残業・非正規雇用拡大で人件費を削り続けた結果、経済が低迷したのが「失われた20年」の本質です。ブラック企業合法化は、この流れを総仕上げとなり、日本経済を奈落の底に突き落とすでしょう。
そのメカニズムをごく簡単に説明します。
①すべての企業がブラック企業になる。
この法案は、一部のブラック企業を合法化する、と考えれば大間違い。むしろ、日本のすべての会社がブラック企業になると考えるべきです。だって、経営者の立場に立って考えてみてください。同業他社が従業員使い放題制度を導入したら、ホワイト企業が太刀打ちできますか?倒産するか、自社もブラックになるか、二者択一です。
②個人消費が低迷する
残業代支払われなくなった分、給料は減ります。給料が減れば、個人消費も減ります。残業時間が長くなった分、消費する時間も減るわけです。
③企業の業績が悪化する
個人消費が低迷すれば、企業の売り上げが下がります。そしたら、利益を圧迫します。
④失業者が増えて、賃金がさらに下がる
残業代ゼロ法案が通れば、会社は従業員をリストラし、残った人に業務を押し付けてコストカットします。なので、失業者が数百万人増えます。失業率が上がれば、平均賃金はさらに下がります。代わりの人はいくらでもいますから。
消費と生産は一つの円環、というのが経済の基本です。消費者がお金を持っていないと、生産しても売り上げになりません。そして、消費者の持ってるお金は、企業が払った給料なのです。なので、給料をカットすれば、生産も停滞する。中学生でも理解できる、ものすごく当たり前の話です。
その経済のイロハすら理解していない政財界の「偉い人」たちが、サービス残業を蔓延させて、非正規雇用を増やして給料をカットし続け日本経済を停滞した挙句に、自分が招いた経済の低迷を「働かない若者」のせいにし、「ブラック企業」を合法化しようとしている。それがアベノミクスの正体です。
ブラック企業合法化法案の結果、日本経済は奈落の底に落ちるでしょう。でも、それに苦しむのは彼らではなく、私たちです。でも、今ならまだ、間に合います。ぜひこのブログをできるだけ多くの人に拡散してください
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