マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2025/05/post-940252.html
<転載開始>


ソニア・ファン・デン・エンデ
2025年5月4日
Strategic Culture Foundation

 オスマン帝国がしたと同様、かつてのヨーロッパ植民地勢力は混乱や宗派間分裂や不安を引き起こした。


 今旧シリアと私が呼ぶ地域で起きている出来事に関し世界も政治家もメディアも沈黙を守っている。完全に沈黙している。シリアはバルカン化されつつある。更に悪いことに、パレスチナと同様、民族浄化が進んでいる。少なくとも、それが狙いだ。

 2024年12月、アサド大統領政権崩壊以降、暴力や民族浄化や殺人や報復の連鎖が続いている。欧米メディアや、アルジャジーラやアルアラビーヤなどのスンニ派の視点が支配的なアラブ系メディアは沈黙を守り、あるいは民族浄化をアサド前大統領政権の抵抗勢力残党との単なる戦いとして片付けている。

 もちろん彼らは真実を明らかにしていない。ハヤト・タハリール・アル・シャム(旧アルカイダ)と称され、現在シリアを支配しているいわゆる反政府勢力は実はISISだ。確かにISISは戻ってきた。彼らはイドリブから完全撤退したわけではない。そしてイスラエルでシオニスト入植者(多くはアメリカからの移民)がしているのと同様に彼らはスンニ派信仰をテロの武器として振り回している。

 宗教を武器として、また口実として利用して、彼らは異教徒や反対する者や反体制派など、あらゆる人々を抹殺しようとしている。彼らは過激化し洗脳された集団で、対話は不可能だ。残された選択肢は、根絶するか、自分たちが根絶されるか、どちらかだ。シリアでも、そして以前アフガニスタンやリビアでも、この状況は既に目の当たりにしてきた。アッラーや神やヤハウェの名の下で、しばしば一般市民を標的とした攻撃が、世界中で残忍で中世的残虐行為で行われるのを我々は目撃してきた。
 アラウィー派の民族浄化キリスト教徒追放は、今年3月8日にマアルーラやセドナヤなどの地域で始まり、現在もいわゆる「キリスト教徒の谷」で続いている。アラウィー派は大量解雇や非人道的生活環境(失業、無一文、飢餓、そして最終的には死の危機)に抗議した。これに対し、ダマスカスのテロリスト、アル=ジュラーニ(その後、彼はギャング団と共に大統領官邸を占拠した)率いるテロリスト連中は「治安機関」を装ってアラウィー派を組織的に殺害し始めた。

 念のために、キルギス安全保障会議のマラト・イマンクロフ書記長の調査結果を引用しよう。2月に「一部推計によると、最大2万人の外国人武装勢力がシリア治安部隊に加わっている」と同書記長は述べている。この数字は控えめなものだ。現在、世界中からテロリストが旧シリアに流入し、現地住民の民族浄化を助長している。全て、トルコの支援を得て、中世イデオロギーに根ざす新たなカリフ制国家を樹立するためだ。

 中東は数世紀も前の時代へ逆戻りしようとしている。もしヨーロッパをはじめとする世界がこの癌の蔓延を許せば、間もなく新たなカリフ制国家に対抗する武装を迫られることになるだろう。コルドバ首長国(929年にコルドバ・カリフ国となった)のように、このアラブ・イスラム国家は756年から1031年までウマイヤ朝に支配され、かつて南スペインを支配していた。彼らはポワティエの門で阻止されたが、今日新たなカリフ制国家の支持者たちは、既にヨーロッパ全土に潜伏している。その門は2015年に突破された

 今ドゥルーズ派は民族浄化に直面している。アル=ジュラーニ率いるISIS政権はアラウィー派を虐殺し、多くをレバノンに逃亡させた後(そこで彼らはキリスト教徒の同胞と共にヨーロッパ・ビザを待っている)今週、ダマスカス郊外のドゥルーズ派の都市ジャラマナに攻撃を仕掛けた。著名なドゥルーズ派のシャイフたちは政権の治安部隊に(主に外国人)処刑された。ドゥルーズ派の村サウラ・カビラやシリアのドゥルーズ派共同体の中心地スワイダ県全域で、攻撃により数千人の若者やシャイフや女性や子どもが死亡した。

 HTS-ISISによる砲撃で、アス・スワイダ県全域のドゥルーズ派の村々の家屋が壊滅的被害を受けた。現地筋によると、住宅地への迫撃砲や砲撃により、住民が避難を余儀なくされ、甚大な被害が出ている。公式死傷者数は未確認だが、多くの民間人が死亡し、広範囲にパニックが広がっていることが示唆されている。サフナヤ市長のフサム・ワルワルと息子ハイダルなどの重要人物は、アル・ジュラーニ率いるISIS治安部隊に戦地銃殺刑に処された。

 ソーシャル・メディアで拡散されている映像には、スカイブルーのシャツを着たワルワル市長が公の場で治安総軍を歓迎し、交渉を試みる様子が映っている。市長はシリアのテレビにも出演し、住民に対し、安定と新勢力との協力を約束した。しかし、それから24時間も経たないうちに、彼と息子はISIS-HTS政権に処刑され、死亡した。

 一方、アル=ジュラーニ部隊は、ホムスから40キロ離れたファヒル村のようなアラウィー派、ドゥルーズ派、キリスト教徒が住む村々を襲撃した。彼らのやり方は一貫している。インターネットと電気を遮断し、住民全員虐殺するのだ。これは毎日行われているが、主流メディアは報じない。恥ずべき怠慢だ。

 一方ISISが支配する国営メディアSANAは「治安と安定を強化するため」「治安部隊」がアル・スーラ・アル・クブラに配備されたと主張している。だが彼ら自身の映像が虚偽を暴露している。ISISの紋章をつけたテロリストが、いわゆる治安部隊として活動している。

 だが世界の政治家やエリート連中は、シリアの金と権力の匂いを嗅ぎつけている。今欧米諸国(や他の国々)は、ダマスカスの宮殿でテロリストのアル・ジュラーニと接触し、彼の足元にひざまずき(男性のみ)握手し、自撮り写真を撮り、彼の「包括的」指導力を称賛している。植民地事業に常に熱心なフランスは既に合意に達している。シリア陸海港湾総局(旧政府組織を維持)は、ラタキアのコンテナ・ターミナル管理に関しフランス企業CMA CGMと契約を締結した。ラタキアは再びフランスの手に渡った。

 あるいは間もなく新カリフ制国家で休暇を過ごすことになるイタリア人を考えてみよう。彼らは虐殺が繰り広げられているアラウィー派やキリスト教徒やドゥルーズ派の村々を訪問するのだろうか? 女性は義務としてベールを被るだろうか? それとも1936年にヒトラーがしたように迫り来る大量虐殺の証拠を全て消し去り、同調するのだろうか?

 言うまでもなく、トルコはシリアにおける代理ISISに無条件支援をしている。無人機や欧米やトルコやイスラエル兵器を用いて旧シリア軍を24時間で壊滅させた「電撃戦」を可能にしたのはイスラエルと連携したトルコだった。なぜシリア人は抵抗できなかったのか? 1933年から1945年にかけて、処刑される前にユダヤ人が全てを奪われたのと同じだ。

 トルコにとって、これはクルド人「問題」解決にもつながる。アンカラの指示により、クルド人はアル・ジュラーニの次の標的になっている。クルド人の自決はトルコにとって選択肢ではなかった。歴史がそれを証明している。では西側諸国の援助はどうだろう? アメリカはクルド人を繰り返し裏切ってきた。故キッシンジャーが言った通り「アメリカの敵であることは危険かもしれないが、アメリカの友であることは致命的だ」。

 近い将来、我々はクルド人根絶の試みを目撃する可能性が高い。トルコ国内でも、彼らは長らく標的とされてきた。トルコ国内では不穏な空気がくすぶっており、トルコ・メディアはそれを抑えている。だが抗議活動は依然続いており、クルド人、世俗主義者を問わず、数百人が刑務所へと消えつつある。

 これが中東と西アジアの悲劇的現実だ。かつてのヨーロッパ植民地勢力は、混乱や宗派間分裂や不安を撒き散らした。オスマン帝国も同様だ。オスマン帝国は第一次世界大戦でドイツと同盟を結び、その後第二次世界大戦では、中立を装いながらナチスと秘密裏に交渉した。今日トルコの二面性は露呈している。ヨーロッパと1945年以降のアメリカの植民地主義的イデオロギーは今も生き残り、中東で数え切れないほどの命を奪っている。全て優位と資源略奪のためだ。今やかつてシリアだった地域を支配する欧米諸国と狂信的宗教勢力に粉砕された世俗主義は束の間の夢だった。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/05/04/first-they-kill-alawites-and-christians-now-druze-who-next-syria/