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徽宗皇帝のブログ

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ラブアン島はラブよりカネ
なかなか興味深い話なので、メモとして保存。

(以下引用)



第2次大戦の激戦地ラブアン島、租税回避の秘境に

末永 恵 2018/12/25 06:00






リアルさない「東大ベンチャー」の裏

韓国が一転、日本との主張真っ向対立

© Japan Business Press Co., Ltd. 提供 アジアのタックスヘイブンの秘境、マレーシアの連邦直轄地のラブアン島にあるオフショア国際金融センター。日本の三菱UFJや三井住友銀行、大手保険会社なども参入。
 「我々は断固戦う。起訴は間違っている」
 世界最大級の米大手金融、ゴールドマン・サックス(GS)が窮地に立たされながらも、「宣戦布告」を言い渡した相手は、マレーシア政府。
 発端は、先週、マレーシア検察当局が、同政府系投資会社「1MDB」の巨額不正資金流用事件に絡み、1MDBの債券発行を担ったゴールドマンサックスと、元幹部2人ら個人4人を証券関連法違反の疑いで刑事訴追したからだ。
 このゴールドマンの元東南アジア統括責任者などの元幹部2人(ティム・ライスナー被告、ロジャー・ウン被告)らは、その1か月半前の11月1日、米司法省により、外国公務員への贈賄を禁止する「海外不正腐敗行為防止法違反」の罪などで、すでに起訴されていた。
 2010年4月、証券詐欺で米証券取引委員会(SEC)から提訴され、世界の金融界に激震が走った、いわゆる「ゴールドマン・ショック」を覚えている方は多いだろう。
 今回の不正発覚で、同社の株価は、その時以来の低迷が続いている。
 本コラムでは、先月、ゴールドマンが組織ぐるみで関与し、最高幹部など経営陣の指示が働いていた可能性が高くなっていると指摘。
 「ゴールドマンに騙された。不正の証拠を握っている」とゴールドマンを名指しで糾弾するマレーシアのマハティール首相が、「ゴールドマンへの刑事訴追を想定している」と、報じた矢先だった。
 ゴールドマンは2012年から2013年に1MDBの65億ドル(約7400億円)の債券を発行。相場の約6倍という破格の6億ドルの報酬手数料を得ただけでなく、27億ドルを1MDBから不正流用した疑いももたれている。
 11月の米司法省による起訴では、法人としてのゴールドマンは含まれていなかった。
 しかし、マレーシア当局は「ゴールドマンが虚偽の情報開示でマレーシア政府や投資家を欺いた」(トーマス司法長官)として刑事訴追した。
 具体的には、債券発行を主導した「ゴールドマン・サックス・インターナショナル」(英国)や「ゴールドマンサックス・シンガポール」などゴールドマングループの子会社を訴えている。
 また、同社の元幹部2人とともに、1MDBの元社員のジャスミン・ロウ被告と、国外に逃亡中の事件の「大黒幕」のマレーシア人実業家、ジョー・ロウ被告も刑事訴追した。
(参照:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43277「マレーシア首相一家と蜜月 大富豪ジョー・ローの謎」)
 マレーシア当局が追及する虚偽の情報開示とは、マレーシアのタックスヘイブンの「ラブアン島」の地元当局に提出した書類のこと。これが深刻な証券法違反に相当すると糾弾している。
 経済金融特区の「ラブアン島」は、日本ではあまり知られていない。しかし、今年の国際金融シンクタンクなどの調査では、世界の金融界を牛耳る大銀行などの法人登録が約1万5000社にも及ぶ。
 投資家、起業家の間ではアジアの「タックスヘイブンの“秘境”」とすら呼ばれている。今、香港やシンガポールに次ぐ、オフショア金融センターとして(https://www.fpl.com.my/)、世界のファンドや投資家から熱い視線を浴びている。

© Japan Business Press Co., Ltd. 提供 租税回避のラブアン島は、南シナ海に浮かぶ。写真はラブアン港。マレーシアの軍港でもある。
 「年々、欧米や中近東諸国からの登録社が急増している」(アジアの投資専門家)ほどで、日系企業もまだまだ少ないが、三菱UFJ、三井住友銀行や大手保険会社など大企業を中心に、160社ほどに増えてきているらしい。
 ラブアン人気の背景には、マカオや香港、シンガポールに比べ、法人税や所得税などの税制面の優遇が厚く、「アジアで最も低い税率」が挙げられる。
 また、島全体が免税特区に指定され、タバコ、酒、香水など輸入品が格安で購入できることも魅力らしい。
 マレーシアの連邦直轄地ラブアンは、マレーシア東部のサバ州に位置し、南シナ海沖合に浮かぶ島だ。ラブアンとは、マレー語で「良港」という意味。
 面積は約90平方キロメートルで、大きさは香港と同じくらい。マレーシアの首都・クアラルンプール、シンガポール、マニラ、香港、バンコク、ジャカルタといったアジア諸国の主要都市からほぼ等距離間隔にある好立地も、人気の秘密だ(参照:地図)

© Japan Business Press Co., Ltd. 提供 アジアの主要都市につながる好立地のラブアン島
 島全体を車で1時間もあれば1周でき、市街地は、縦横1キロ範囲。自然環境にも恵まれ、近郊海域では天然ガスや石油が豊富に産出される。
 また、日本ともゆかりの深い土地柄で知られる。11世紀、マジャパヒト支配下で、洋上交易の拠点として栄えるが、1848年、英国の直轄植民地が置かれた。
 第2次大戦勃発後は、1942年に日本軍が占領。ラブアンを通過した東条英機の命名で、ボルネオ守備軍司令官だった陸軍中尉、前田利為にちなんで島名が「前田島」に改称された。

© Japan Business Press Co., Ltd. 提供 1945年9月、第二次世界大戦で日本軍は正式降伏し、ラブアン島で文書に調印した
 また、ここは第2次世界大戦で日本軍が公式に降伏した場所でも知られる。
 連合軍が上陸してから3か月後の1945年9月9日に調印式が開かれ、豪州軍第9師団司令官、ジウッテン少将の立会いで、日本軍37軍司令官の馬場正郎中将が降伏文書に署名した歴史的場所でもある。
 さらに、ラブアン戦没者記念墓地は、アジア最大の戦没者墓地で、「サンダカン・ラナウの死の行進」の犠牲者を含め、ボルネオで命を落とした3908人の兵士が眠っている。平和を願い、日本政府が1982年、同地に平和祈念公園を造園している。

© Japan Business Press Co., Ltd. 提供 ラブアンは、第2次世界大戦で日本軍が占領した島。当時、「前田島」と呼ばれた。アジア最大の戦没者墓地がある。
 そして、今やアジア屈指のタックスヘイブンの金融特区になりつつある。
 もともとはリゾート地だったが、1990年にマレーシア政府がオフショア会社法を制定し、ラブアン・オフショア金融サービスセンター (LOFSA)を設立。
 1996年8月、オフショア金融センター、ショッピングモール、レジャー施設コートなどが建設されたフィナンシャルパークがオープン。
 実はラブアン島は、当時、マレーシア政府が、1997年の香港返還時期を狙って、香港の機能をラブアンへ移行させるために意図的に作り上げられたタックスヘイブンなのだ。
 LOFSAには、世界の名だたる銀行、信託会社、法律事務所など、オフショア事業関連の企業が入居し、今では日系企業も大手保険会社やメガバンクが入っている。
 ラブアン島の魅力は冒頭で「アジアで最も税率が低い」と紹介したが、最近は香港やシンガポールなど東南アジアや中東、欧米の富裕層の間で、節税対策として活用されている。
 マレーシアには通常の現地法人制度のSdn.bhdのほか、ラブアン法人という制度がある。これこそ、タックスヘイブンのラブアン島で設立する法人のことだ。
 ラブアン法人は居住取締役が不要のほか、上限税額(2018年12月現在、2万リンギ=約60万円)が設定され、いくら収益を出しても、上限以上の税が課税されない。
 このほか会計監査免除も特典される。こうした条件が世界の起業家や投資家の間で注目され始めている点だ。
 法人登記は、通常、1週間ほどで完了し、外資100%での設立が可能で、外貨規制がなく、ラブアンオフショア口座を経由した取引では、原則、出金、入金ともに制限がない。
 法人税と所得税などで税制上の優遇があり、香港やシンガポールなどと比べ有利な点も人気の背景だ。
 例えば、法人税の場合、貿易関係とIT関連や投資分野の非貿易分野の事業内容に分れ、課税形態が違う。
 ラブアン法人の場合、貿易関係の企業は、税率が当期純利益の3%か、上限税額2万リンギのどちらかを選択。香港法人の場合は、税率16.5%、シンガポールは17%。
 また、ITや投資分野の企業の場合、ラブアン法人は完全非課税0%で、会計監査や確定申告も不要。一方、香港法人は16.5%、シンガポールは17%で、双方とも会計監査の義務が生じる(ただし香港の場合、いずれも2018年4月以降から利益200万香港ドルまでに限って「8.25%」に改正)。
 こうしたラブアンの租税回避策の恩恵を最も受けているのは、世界を代表するグローバル企業などである。
 今回の米金融大手のゴールドマンもラブアン法人設置や顧客を抱え、自らの私欲も膨らませてきた。
 米国、マレーシア当局双方から刑事訴追されているゴールドマンの元東南アジア統括責任者で米国で著名なセレブの妻を持つことで知られるティム・ライスナー被告は「親戚や家族への報酬も受けた」ことも自白し始めている。
 1MDB不正は、社債などで調達した資金を実態のない複数のペーパーカンパニーなどにまず支払い、ラブアン島やケイマン諸島などのタックスヘイブンなど、極めて複雑な資金経路を通ってマネーロンダリングされ、関係者の口座に送り込まれるという極めて玄人技で実行されてきた。
 さらに、米司法省はこのほど、1MDBの汚職問題に関連し、同省の元職員が不正送金を手助けしていたことを明らかにしている。
 不正を指揮したマレーシア人のジョー・ロー被告が米国に海外から資金を移す際、米国の銀行に資金目的や送金元などの情報において、同元職員が虚偽の説明をしたという。
 米政府筋は、ウォール街の大物バンカーで、ゴールドマンの現会長のロイド・ブランクファイン前最高経営責任者(CEO)が、「ニューヨークのフォーシーズンズホテルでマレーシアのナジブ前首相やロー氏と面会した事実を認めている」と明かす。
 マハティール首相の戦いは、世界の経済を牛耳るこうしたユダヤ金融界だけでなく、政権の中枢が“ゴールドマン閥”で固められているトランプ大統領への宣戦布告といっていいだろう。
 米政府が、ゴールドマンを起訴するか、政治的判断になり得る。
 一方、この醜い汚職の温床となったタックスヘイブンのラブアンは、もともとマハティール首相が提唱して実現したものだ。
 皮肉にも、こんな形で“見返り”が自分の身に降りかかってくるとは、想像もしていなかっただろう。
(取材・文 末永 恵)



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