
立憲民主党が、11月30日の臨時党大会で、泉健太氏を新代表に選出した。新聞は、今回の代表選に際して、各候補者のプロフィル、政策、野党共闘への姿勢などを詳しく報じている。4人の候補者の最初の投票、決選投票での票数も詳細に記事化した。
注目されるのは野党共闘の組み合わせと各党の取り組みだが、この点も各紙は、泉新代表ならびに野党の反応を機敏に拾っている。不可思議なのは、ほぼ同じ時期の11月27日に開催された日本維新の会の臨時党大会の開催を、新聞、テレビのニュースがほぼ黙殺していることだ。
ちなみに、27日の臨時党大会では国会議員や地方議員ら特別党員による投票がおこなわれ、代表選を実施せず、松井一郎代表(大阪市長)を再任することを決めている。
党の規約で、代表の任期を国政選挙などの投票日後から90日までとしている日本維新の会が、代表選挙を実施せず、次期代表を選出しないことは、普通に考えて、党の中枢に権力の空白が生じることを意味する。
そうでなくても、先の衆院選で41議席を獲得して野党第2党に躍進した国政政党が、代表選を省略することは、党運営において民主主義が機能していないことを示唆している。そんな政党が果たして国会において重きをなすことが可能なものなのだろうか。……と、「維新」をつかまえてこんな大真面目な指摘をするのは、最初から無駄な話なのかもしれない。
「維新」は、そもそも橋下徹氏が2007年に「2万パーセント出ない」と言っていた大阪府知事選に出馬したところから出発した政治集団だ。
その後も15年の住民投票の否決を受けて、潔く諦めるはずだった大阪都構想を、前言をひるがえすカタチで20年に再度実施した。そしてまたしても否決されると、今度は、党の代表であり大阪市長でもある松井一郎氏が「次期党代表選には出馬しない」旨を宣言して、事実上の政治家引退を表明していた。
その党代表辞退の宣言を、今回の一連の経緯でまたしても裏切ったわけだ。もっとも形式上の話では、松井代表は確かに「次期代表選に出馬しない」という約束を守ってはいる。とはいえ、事実として、引き続き党代表に居座っている。つまりここにおいて《「次期代表選には出馬しない」とは言ったが「党代表を辞任する」とは言っていない》という詭弁(きべん)がめでたく成立しているわけだ。むしろ、その手品みたいな理屈を成立させるべく、代表選をツブした、と考えたほうが分かりやすい。
吉村洋文大阪府知事が、いち早く代表選不出馬を表明していることも、この状況を踏まえたプレーなのだろうし、代表選の実施に賛成票を投じた旨を報じさせたことも、「出来レース」の一部なのではないか。
なさけないのは、まんまと約束の裏をかいてみせた彼らを「アタマいい!」「痛快!」と評価する支持者が、一定数存在していることだ。そういえば知事・市長の任期をほごにする「ダブルクロス選挙」という裏技を発明したのも彼らだった。
アタマいいというより、悪賢いのだと思う。
(コラムニスト)
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