宅配便というシステムは、「国民全員引きこもり」という近未来(なぜそうなるか、という考察はさておく)においてますます重要性を持つと私は見ているが、その時に最大の利益を上げるのがアマゾンのような売り手企業であり、利益も得るが現場がひどい苦労をするのが物流業者だろう。そして現在がその混乱の時期である。いずれ何かのシステム改善が起こらないと、売り手企業も物流業者も破綻するのではないか。まあ、破綻しても、「それが無かった時代」に戻ればいいだけだから、消費者にとってはたいした問題ではない、と見ることもできる。
それに、問題が表面化してくれば、アマゾン自身が解決手段を自分で作るだろう、という予測もできるわけだが、問題が存在することを意識することが社会全体のために一番大事なのであり、その意味で下の現代ビジネスの記事は良記事だ、と言うのである。
現在騒がれている森友学園の件は、どういう形で終わるか、という興味はあるが、「ネットゲリラ」などのサイトが詳しいようだし、ネット全体に関連記事は多いから、私は様子見だけにする。安倍総理が政権を投げ出しても、麻生や石破がその後を襲う(この「襲う」は「襲名」の「襲」の意味)のであれば(最近は東京都の女知事まで次期総理を狙っているようだが)何も変わらないだろうから、自公政権自体を倒さないと意味が無いのではないかと思う。つまり、不正選挙をいかにして阻止して、次の国政選挙に臨むか、ということである。
なお、今回の記事タイトルはネットで見たフレーズで、私の創作ではない。
(以下引用)
このままではアマゾンとセブンイレブンとヤマトが全滅する! 商品はあっても 「運ぶ人」がいない…
現代ビジネス 3/2(木) 10:01配信
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時間指定配送、送料無料、365日24時間営業。つい忘れがちだが、これらはすべて「運ぶ人」がいて、成立している。その物流が今、危機に瀕している。私たちが生きる「便利な社会」はひどく脆い。
「アマゾンから配送の依頼があり、3回ほど呼ばれて話を聞きに行きましたが、札束で頬を叩くような態度で不愉快な思いをしました。その札束が薄いんですから、話になりません。はっきり言って、条件が悪かったので断りました」
トラックで宅配を請け負う吉祥寺総合物流(武蔵野市)の二瓶直樹社長がこう言って続ける。
「アマゾンは当日受けた注文を1時間以内で届けるサービスを自社配送でやると言っていますが、そんなことができるわけがない。アマゾンの配送は、ヤマト運輸に頼っていますが、彼らも本音では受けたくないはずです。
このまま運送業者にとっての条件が悪いままだと、アマゾンの配送は成立しなくなると思います。自分たちだけではすべてを運ぶことができないわけですから。ヤマト運輸が撤退したら、アマゾンは完全に成り立ちません」
驚異的なスピードで日本でも成長してきたネット通販の巨人、アマゾン。扱う品目は書籍に留まらず、日用品や雑貨、食品と、今や多くの日本人の生活になくてはならない存在になりつつある。しかし、その足元が大きく揺らいでいる。
アマゾンが扱う商品は日本市場だけで2億品目とも言われているが、それを運ぶ人間が圧倒的に不足しているのだ。物流の崩壊が、アマゾンを直撃する――。
すでに配送を担う現場の疲弊は限界を迎えている。アマゾンの配送を請け負う運送会社社員の声を紹介しよう。
「とにかく荷物が多くて、決められた時間内に仕事が終わることなど、まずなかったですね。アマゾンの荷物がものすごく多く、繁忙期になると一日に300軒を回ることはザラでした。
しかも時間指定の商品が多く、常に時間に追われている感じでした。毎日のストレスは尋常なものではなかった。それでいて、給料は安い。私も含めて、辞めていく人は多かった」(元ヤマト運輸配達員・30歳)
「『アナと雪の女王』のDVDといった人気商品の発売日は大量の発送があるので、それだけで100件を超えたりします。
一番困るのが、箱の大きさです。アマゾンは内容物が小さいのに、無駄に箱が大きいのでポストの入り口に収まらないものが多い。宅配ボックスがあるところだといいのですが、一軒家だと投函できないので、結局お客さんに出てきてもらわないと渡せない。不在なら、不在票を書いてまた来なければいけない。
アマゾンだけでも何度も往復する羽目になって、他の郵便物の配達も遅れ、毎日残業です」(日本郵便社員・40代)
元々、アマゾンの配送は佐川急便が一手に引き受けていたが、運賃が低く、採算割れだったため、佐川急便がアマゾンに値上げを申し入れる。ところが、交渉が決裂し、'13年に佐川急便はアマゾンの配送から完全撤退した。だからといって、佐川急便で働く配送員の労働環境が改善したかというとそうでもない。
'08年から'13年まで佐川急便に勤めたドライバーが実情を話す。
「たしかに荷物は減りました。しかし、その分、配送範囲が広がり、結局、走る距離や必要な人手は変わらないんです。
昨年、発覚した交通違反の身代わり出頭ですが、あれが横行していた背景は理解できます。佐川急便では事故や交通違反を起こすと、罰金を払えば終わりではないんです。働けなかったりペナルティがあったりして、会社で講習を受ける必要もある。
ただでさえ、最低限の人手でやっているのに、自分が働けなくなったら、仲間にその分の負担がかかります。ごまかせるならごまかしたい気持ちはわかる気がします」
普通、労働が過酷になると、給料が上がる。ところが、物流業界では労働時間が長くなっているにもかかわらず、給料が下がるという異常な状態に置かれている。
厚生労働省の調べによると、道路貨物運送業の給与は'99年をピークに減少傾向にある。また、'15年の全産業の年間所得が489万円だったのに対し、中小型トラックのドライバーは388万円。
そのうえ、労働時間は全産業の年間労働時間が2124時間に対し、中小型トラックドライバーは2580時間と長い。単純計算で時給に換算すると、約1500円。コンビニの深夜バイトと変わらない。
数字の上からも、トラックドライバーの労働は平均的な労働者よりも長時間で安いことが裏付けられている。そんなトラックドライバーが日本の物流の実に9割を担っているのだ。
「アマゾンの荷物1個の配送単価は、何十円といった低価格で抑えられているようです。対価が安いのに時間指定だったり、当日配送だったりと要求が高い。給料が上がるなら喜んでやりますよ。でも安月給のままで、何十円の代金で一日に何度も往復していたらアホらしくなります。
会社の上層部は佐川急便からアマゾンの仕事を奪って売上高が伸びたと喜んでいるかもしれませんが、現場からすると会社の利益しか考えていないとしか思えませんね。ただでさえ、安月給で辞めていく人が多いのに、これ以上人手不足になったら、現場は回らなくなります」(前出・日本郵便社員)
なぜ、需要が拡大しているのに、給料が上がらないのか。物流業界のシステムを解説するのは、物流コンサルタントでイー・ロジットCEOの角井亮一氏だ。
「配送業者はなぜ人材を確保するために人件費を上げないのか。それは配送料を上げられないからです。たとえば、通販業者の仕事を請け負っている配送業者が人手不足から運賃を上げたいといえば、その通販業者は契約を打ち切って別の配送業者に乗り換えるだけ。
実際、佐川急便が料金の問題で交渉がまとまらず、アマゾンとの契約を打ち切りましたが、その後をヤマト運輸と日本郵便が引き受けて、それで終わりです。アマゾンも多少は配送コストが上がったでしょうが、受けた業者もアマゾンに対応する体制を整える必要があるため、必ずしも収益増になるわけではありません。
運送業は一軒一軒に届ける手間がかかり、規模のメリットがほとんど利かないばかりか、仕事が増えればますます人手不足が深刻化します。給料はそのままで、運送会社も作業の効率化への努力が十分とは言えないため、さらに人材が確保しづらくなる悪循環なのです」
人手不足の問題を解決しようとする動きはある。たとえば、ドローンによる無人配送や自動運転技術の向上だ。これによって人手に頼らず商品を配送することが可能になるとされている。
だが――。
「実験は進んでいますが、実用化にはまだまだ時間がかかるでしょう。'20年には自動運転タクシーを実用化すると政府は言っていますが、限られたエリアの専用道での話にすぎません。
自動追尾トラックを高速道路で走らせるのは比較的容易ですが、市街地での自動運転はその100倍も難易度が高いそうです。10年以内に実現するのは難しいでしょう。それまで今の体制で日本の物流が持ちこたえられるかが最大の問題です」(角井氏)
物流の危機はコンビニ業界にとっても他人事ではない。弁当やパンといった食料品から生活雑貨まで日常生活に必要なありとあらゆる商品が揃うコンビニという業態は、徹底的に効率化されたロジスティクスに支えられてきた。それを牽引してきたのが、業界最大手のセブンイレブンだ。
同社の元社員で、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授の並木雄二氏が解説する。
「コンビニは効率的に物を運べる状況を確保しないと出店できません。'70年当時は一つの店舗に日々70台ものトラックが物を届けていました。それを10年かけ、配送センターに集めて共同配送にすることでトラックの数を減らしてきた。
さらにその後の10年で、様々な温度の商品を一度に配送できるトラックを開発し、一層効率化を進めました。その結果、今は一日10台以下のトラックの数で配送が済むようになり、高い収益性を実現してきたのです」
だが、時代が変わった。人口減少によって、地方部ではどれだけ効率化を進めても、採算が取れない可能性が出てきたのだ。
並木氏が続ける。
「コンビニ各社はビジネスモデルを、お客さまを店舗で待つスタイルだけでなく、お客さまの玄関まで御用聞きに伺うという『攻め』の形に変えようとしています。
しかし、これは配送や人件費などのコストに見合う利益が確保できなくなる危険があり、実現は難しいでしょう。移動販売など、地域の特性に合わせた営業形態と組み合わせて取り組んでいくようになるはずです」
労働者の高齢化も、ますます物流業界を苦しめる。すでに、トラック運転手の約4割は50代以上が占め、若い世代の参入は年々減少している。
東名高速海老名サービスエリアにいた運転手に話を聞いた。
「俺はもうすぐ年金をもらうからマシなほうだけど、それでも12時間労働なんて当たり前だよ。若いやつは18時間ぶっとおしとかもあるし。労働基準法? そんなの守っていたら、指定された配送時間に間に合わないよ。結局、仕事を断ってクビになった若い同僚もいる」(60代男性)
「若い世代が入ってこない理由? 俺は免許制が悪いと思うよ。中型免許なんていう無意味なもの作りやがってよ。これまでは普通免許でもトラックが運転できたのに、今では20歳にならないと取れない中型免許がないとトラックが運転できないから、高卒が入ってこなくなった」(40代男性)
もちろん、労働力不足は多くの産業に共通する課題である。国は移民を受け入れることで問題を解決しようと目論むが、運送業の人手不足の解決にはなりそうもない。
「日本の流通はサービスの質の良さが最大の特徴ですから、宅配などで外国人を安易に使うことは難しいでしょう」(前出・並木氏)
外国人はビザの関係で運転免許が取れないことも、移民が解決策にならないことの一因だ。
ドライバー派遣や物流業務を請け負うウィンコーポレーションの中村真一郎氏が言う。
「最近は高齢者がネット通販のユーザーとなって配送量が増えていますが、一方でドライバーは高齢化が進んで辞めていく人が増えているのが深刻です。大手のヤマト運輸も佐川急便も日本通運も慢性的に足りていない。
ヤマト運輸は物流という社会的なインフラを守る意味合いからアマゾンの仕事を受けた側面もあると思いますが、一説にはアマゾンの仕事をやらないと地方で配達の仕事が極端に少なくなり、地方で採算が取れなくなると聞いています」
このままでは物流が止まり、アマゾンもセブンイレブンもヤマト運輸もなくなってしまいかねない危機的な状況――順天堂大学特任教授の川喜多喬氏は、現状をこう分析する。
「多くの消費者は、物流に対してコストを支払おうという意識が低すぎます。物流は『社会の命綱』とたとえられますが、まさにその通りです。労働力不足で機能しなくなれば、アマゾンやセブンイレブンなども壊滅的な状況に陥ります。
情報は一瞬で届く時代になりましたが、現実の物は誰かが人力で動かさないと経済は回らないのです」
送料無料、翌日配送。365日24時間営業。これらは「運ぶ人」がいないと成り立たない。日本人が当たり前のように享受する「便利さ」が崩壊の危機に直面している。
「週刊現代」2017年3月4日号より
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