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徽宗皇帝のブログ

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宿痾である自民党政治への怒りが間違った方向に動いた兵庫県知事選
「世に倦む日々」記事で、兵庫県知事選の「動態分析」としてはかなり正確だと思えるが、その根本を「右派」と「左派」の闘争と見ているのは違うのではないか。ただ、斉藤知事のために動いたのが「プロ」SNS使いだったのを「ネトウヨ」と十把一絡げにしてしまった印象だ。
ひと言言っておく。「CHANGE」だけを言って米大統領になったオバマは何かを変えたか? 新しい政治家が大袈裟に喧伝する小さなCHANGEのために(予算配分で)他の大きなものが犠牲になっていないか?

(以下引用)長いが、可能なら全部載せる。画像のみ省略。

反動が逆襲した兵庫県知事選挙 ー 石丸現象・玉木現象・斎藤立花現象の三位一体

世に倦む日日
2024年11月22日 12:57

11/17、兵庫県知事選の投開票が行われ、9/19 に県議会の全会一致で不信任決議が可決され失職した斎藤元彦が再選される結果となった。今週はこの話題で持ち切りとなっている。告示日の 10/31 当時の状況からすれば、まさかの意外な展開であり、関西から離れた地に住む市井の視線からは何が起きたかよく分からない異常事態の発生に見える。マスコミ等の説明では、立花孝志が斎藤元彦に与力加勢するべく候補者として選挙戦に参戦乱入し、自殺した元局長の「告発の真相」なるものを「暴露」、この問題で斎藤元彦に非がないとする主張を喧伝した。百条委員会を「利権目的のクーデターの陰謀」として攻撃、さらにパワハラやたかりの告発もマスコミの捏造だと吹聴、その演説がSNSで拡散され、兵庫県有権者が共鳴して世論が動き、斎藤勝利の結果に至ったとされている。ネットでは、左派を中心にヒトラーとゲッベルスの手口の再現だと戦慄が走っている。




上の整理は、主に左派側の認識と総括だが、右派側の見方は異なっている。兵庫県知事選の景色は、右派と左派で見え方が違っていて、右派の側は”ネット民主主義”の勝利を言祝ぎ、マスコミの敗北を宣言し、トランプの勝利と重ねて”新しい時代の到来”に興奮し高揚している。立花孝志に脅された百条委メンバーの竹内英明の県議辞職に喝采、これこそ「陰謀の失敗の証明」だと囃している。ネットだけでなくマスコミでも、維新系の野村修也が 11/19 のミヤネ屋で、立花孝志による奥谷謙一の自宅前での脅迫と嫌がらせ行為も、公道上の選挙演説であって合法だと解説した。また吉村洋文は、百条委に活動継続の正統性はないなどと言い、県議会は自主解散せよ示唆している。わずか2か月前の 9/9 には、斎藤元彦にパワハラを素直に認めて辞職しろと迫っていた当人なのに。おそらく右派系のXアカウントのタイムラインには、こんな情報ばかりが閲覧されるのだろう。




一方、私のXアカウントでは、アルゴリズムの編集の影響なのか、白坂和哉とか福山和人とか金子勝とかのポストが次々と流れ、斎藤元彦と立花孝志に対する批判一色で埋まっている。今にも斎藤元彦を糾弾する市民デモが立ち上がるのではないかと錯覚させられるほどだ。だが、実際には、斎藤元彦の勝利には理由と背景があり、突飛な怪奇現象が起きたわけではない。もともと、不信任決議が可決され失職した時点でも、選挙では候補者が乱立模様になるため、斎藤元彦が勝ってしまうのではないかと懸念が囁かれていた。根強い支持が存在する実態が窺われた。立花孝志が動画で語っているように、本当は維新は最後まで不信任案に消極的だったが、党勢に陰りが目立つ中、衆院選を直前にして世論の反発を恐れた吉村洋文が、兵庫の維新に不信任案に乗るよう促し、渋々乗ったという経緯がある。維新は清水貴之を党として公認も推薦もせず、維新票が斎藤元彦に流れるのを見守った。




事実上、選挙は稲村和美と斎藤元彦の一騎打ちとなり、緑の党と経歴上関係のある稲村和美が、多数派である保守層から「左派」として嫌われ、斎藤元彦に票が流れたと分析できる。それが真相だろう。この選挙は、パワハラ問題や誹謗中傷や選挙妨害が”主役”に違いなく、表面上は民衆が扇動者に騙されたという絵になっているが、実際にはイデオロギーが争点になっていて、勝敗を分けた真の民意はそこにある。この本質を指摘する者はいないけれど、だからこそドイツのファシズムと様相が酷似していて、酷似と言うより同一の政治現象なのだ。斎藤元彦に投票した者たちの深層の動機は、反左翼(ネオリベ「改革」狂信)であり、左翼フォビアの態度に他ならない。7月の石丸現象も10月の衆院選も同じだ。この現象でアクティブに動いている大きな塊は、安倍支持者であり、秋葉原で安倍と麻生に群がった集合である。「ネトウヨ」とも呼ばれ、数が多く、選挙で大きく票を形成する。




投票翌日、11/18 のNHK・NW9には興味深い映像が紹介されていた。11/17 夜に元町の斎藤元彦の事務所前に集まった支持者群衆の中に、埼玉から来て斎藤元彦を応援活動する若い男性がいて、斎藤元彦の選挙運動を撮影し、動画配信していて、NHKのインタビューに答えていた。雰囲気的に普通の市民には見えない。長い選挙期間中ずっと神戸に張り付いて県内を移動していたわけで、ほとんど半プロの身であり、宿泊費等経費はどう用立てていたのだろう。この情景には見覚えがある。7月の都知事選で全く同じ絵がNHKのニュースで放送されていた。やはり、遠隔の地方からやってきて東京に長く滞在し、半プロ的な装備で石丸伸二を撮影し、動画を編集して配信していた男たちの姿である。瓜二つだ。斎藤元彦に密着して運動した部隊の謎については、さまざまな指摘があるが、週刊文春の記事によると、石丸伸二の選挙参謀が「ウチの部隊も30人参加させた」と豪語したとある。




11/18 のNW9の報道では、続いて、明石駅前でインタビューを受ける青いアンダーアーマーの上着を来た男が登場、斎藤元彦を応援するボランティアグループの代表だと紹介された。SNSで立ち上げた「チームさいとう」に900人のメンバーを集め、現場の撮影担当やSNS投稿担当などに分かれて400人のデジタル・ボランティアが精力的に運動を展開、斎藤元彦の支持拡大と勝利に大きく貢献したと言う。この代表の男は何者なのか。400人のボランティアなる者たちの素性は何なのか。今後、詳しい調査と解明がなされるだろうが、やはり7月の都知事選の石丸現象で目撃した構図とよく似ている。選挙のパターンとして同じだ。石丸伸二を応援した軍団については、石丸伸二のカリスマ剥落と共にネガティブな評価が定着した感があるけれど、この斎藤現象のボランティアについては、「ネット民主主義の草の根勇士」的なポジティブな表象でNHKが報道している。勝てば官軍。




斎藤元彦を支持した右傾県民に内在するわけではないが、元局長の自殺の原因と動機について腑に落ちない気分はある。不倫問題が最後まで(現在でも)表に出ず隠されているため、右傾県民が立花孝志の「説明」を奇貨として飛びついて「納得」の材料とし、斎藤元彦支持の態度をコンビンスした部分はあるだろう。その意味では、選挙の争点の核心は元局長の自殺の真相であり、それをどう判断するかという問題だったと言える。立花孝志によれば、元局長は押収されたPC内にある不倫の証拠が露顕することを恐れて自殺したのであり、抗議の死でも何でもなく、百条委への出席を避けようと抵抗していたのだと言う。不同意性交までやっていたと暴言している。自殺は自業自得で、根本的責任は元局長にあると指弾した。こうして元局長の人格と告発は矮小化され、県政混乱の真因とされ、意味がスリ替えられた。斎藤元彦が正当化され、結果的に、兵庫県民の民意はこの立花孝志の主張に乗っかった形になった。




一方、11/18 のデモクラシータイムスの横山一の解説(30:30')では、百条委で証言しようとした元局長に対し、PC内の個人情報(不倫証拠)を得た維新系の県議らが、先手を打って元局長を脅し、百条委で公開するぞと圧力をかけたため、元局長が悩んだ挙句一死を以って抗議する悲劇に至ったと言う。事実であれば犯罪だろう。立花孝志の説明と横山一の説明は、元局長の自殺の客観的過程はほぼ同じだが、事実整理の意味づけが全く違って対立している。本来なら、立花孝志の暴論 ー 死者への冒涜と悪質な名誉棄損 ー に対して、選挙期間中に横田一的な反論があってよく、意味づけをめぐる論争と闘争があってよかったと思われる。が、故人と家族のプライバシーと名誉に関わるという配慮からか、選挙戦の議論として不適切という判断からか、伏せられ抑えられ曖昧にされ、結局、立花孝志の「真相説明」だけが独り歩きし、有権者に流布されて「何だそういう不潔で薄暗い事情だったのか」という解釈が広まった。




元局長が悪者になった。兵庫県民の衆愚性が際立った形だが、7月の東京都民も同じと言えば同じだし、それ以上に、イデオロギーの問題こそが真相として意味が大きいのに違いない。県民が立花孝志のデマを鵜呑みにして信じたと言うより、まず、イデオロギー的に斎藤元彦の方を支持したい、当選させたいという意思と思惑が底流にあり、その選択を正当化する材料として立花孝志の暴論が都合よく、怪しいけれど奇貨として歓迎し、マスコミ叩きの論理で合理化した政治心理の部分が大きいのだ。戯画的に言えば、兵庫県民のファシズム祭りであり、憂鬱で暗晦なエーリッヒ・フロム現象である。他と比較して意識の高い市民表象を持っていた神戸や兵庫の人々も、この30年ですっかり中身が変わった。横浜と神奈川の変化と同じで、生活水準は相変わらず高いけれど、人格や知性はむしろ荒廃して害毒的(竹中平蔵的範疇)になっている印象が強い。




デモクラシータイムスによれば、元局長夫人は元局長の遺書を元に百条委にメールを送り、そこでこう言っている(29:27')。



主人が最後の言葉を残していました。ここには「一死を以って抗議する」という旨のメッセージと共に、19日の委員会には出頭はできないが、自ら作成した陳述書および参考の音声データの提出を以って代えさせて欲しいこと、そして百条委員会は最後までやり通して欲しいことが記されていました。この主人が作成した陳述書および音声データを資料として委員会に提出いたしますので、委員会としてその遺志を受け止めていただきますようよろしくお願いします。主人が残したこれらのメッセージは公表していただいて結構です。











百条委が進行中で、規則上の拘束のためか、元局長のメッセージは公表されていない。夫人が「公表してよい」とコミットしているのだから、メールを受け取った委員長の職権と責任で公表してよく、選挙期間中に、立花孝志と右翼の謀略に対抗するべく、選挙の争点のエビデンスとして公表すればよかった。有権者の判断に資するべく、勇気を出して情報提供すればよかった。元局長の遺志に従うなら、その措置が決断されてしかるべきだったのではないか。陳述書が公表されていれば、立花孝志の行動は反撃されて威力を挫かれ、選挙の行方は違っていただろう。現在の、右翼が凱歌を挙げて沸騰する情勢では、果たして元局長の陳述書と音声データが公開されるかどうか、兵庫県民に伝わるのかどうか疑わしい。斎藤元彦批判の急先鋒だった県議が、一転して暴力に怯んで遁走した経緯を見ても、百条委の県議たちが腰折れして斎藤元彦に忖度し、旋回して、元局長の正義のメッセージを闇に葬る可能性が否めない。




立岩陽一郎は、11/18 のフジの番組で、竹内英明の辞職に対して暗に怯弱だと批判していたが、私も同感である。ただ、状況を最もよく知る位置にいた姫路の竹内英明が、こうしてあっさり無言で退場すると、ひょっとしてまだ真相に奥があるのかもしれないと、自殺した元局長の信実について確信が揺らぎ、純粋な犠牲者像が揺らぐ気分も生じる。元局長は、パワハラを糺して県政の正義と職員の人権を守るという他に、何か守ろうと図ったものがあるのかもしれず、奥谷謙一らはその遺志の配慮に戸惑って逡巡したのかもしれない。夫人がマスコミの前で抗弁に出れば、横田一の説明で意味づけが確定し、多数が納得して世論が正常化するかもしれないけれど、そうすればまた立花孝志の捻じ曲げと右翼の暴力が炸裂し、夫人や関係者が侮辱と罵倒を受けて傷つく事態が生じかねない。厄介な(しばき隊的)時代状況になった。


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