高濃度のPFAS検出…金武町の対応に住民は不信感
沖縄県金武町の水道水から、人体に有害な有機フッ素化合物「PFAS」が高濃度で検出されていた問題で、町の公表の遅れが取りざたされている。 【画像】高濃度PFASが検出された金武区と並里区 金武町は2019年から町内2カ所で水道水の調査を実施。 2020年6月の調査では、国の暫定目標値である1リットルあたり50ナノグラムを超える高い値が検出されていた。同年7月、町は一部の水源からの取水を停止するも結果を公表していなかった。 そして、2021年9月の町議会。追及された町は目標値以下だった2021年の数値を示し、安全性を強調していた。 金武町は、10月1日にようやく2020年の調査結果を公表したが、住民からは対応を疑問視する声が上がっている。 金武区 宜野座武 区長: 町民、区として非常に残念。早期の対応が出来なかったかなと。とても遺憾だと思っています 住民女性: ショックです、町には不信感です 住民女性: ずっとずっと飲み続けているんですよ。小さい子とかね、これから成長する子どもたちがどうなるのか心配です
専門家は子ども・胎児への影響を指摘
2020年6月の調査で、金武区に供給されていた水道水には1リットルあたり70ナノグラム、並里区で50ナノグラムと厚生労働省の暫定目標値を超える有機フッ素化合物「PFAS」が含まれていたことが判明した。 京都大学 医学研究科 小泉昭夫 名誉教授: 非常に高い値だと思いますね。喫緊の課題は、子どもや胎児への影響だと思います。アメリカでもヨーロッパでも、そこの部分はかなり一致しています 小泉名誉教授は、2003年に全国でも高い値が検出された大阪府の例を挙げた。 工場からの排水などで汚染された淀川を取水源とする水道水には、1リットルあたり40ナノグラムの「PFOA」が含まれ、住民の血中からは平均で1ミリリットルあたり30ナノグラムと、全国平均の約30倍の値が検出された。 周辺の地域では、その時期に低体重の赤ちゃんが生まれる割合が高い傾向にあったが、排出量が減ると2008年には住民の血中濃度の値も半減し、低体重の赤ちゃんが生まれる割合も全国平均並みとなった。 小泉教授は今回、金武町の水道水からは大阪府よりも高い値が検出されているとして、住民の健康調査が急務だと強調する。 京都大学 医学研究科 小泉昭夫 名誉教授: やはり一番やるべき調査は、血中濃度がどれぐらいかということ。妊婦は水道水を飲まないようにすることが必要だと思います 2020年6月に国の目標値を超える値を把握した金武町は、一部の水源からの取水を停止するとともに県企業局からの供給量を増やすことで、2021年7月の調査では金武区で15ナノグラム、並里区で4ナノグラムと「目標値内の値」としている。 また、2020年の結果を公表しなかった理由を「町民の不安を招くことのないよう、1年間かけてモニタリング調査をして公表した方がいいと判断した」としている。
子育てする母親が抗議 国の責任で汚染対策を
金武町の姿勢は住民から不信感を招いている。子育てをする女性は10月2日、有志とともに抗議の声をあげた。 抗議に参加した島袋彩花さん: 裏切られたというか、何でずっと言わなかったんだろうって。ここまでの生活、ずっと子どもに水をあげてたよって、とてもショックでした。健康上、異常が出るものをちょっとでも使いたくないので、きれいな水を元に戻してほしいと思います 住民が求めるこうした”汚染対策”は、市町村レベルでは太刀打ちできない問題であり、国の責任で問題に取り組むべきだと小泉名誉教授は指摘する。 京都大学 医学研究科 小泉昭夫 名誉教授: 国の根幹に関わる問題だと考えないといけないと思う。土壌汚染対策法にPFAS全体を登録することが、非常に大事だと思います 土壌汚染対策法には「汚染者が誰かを特定し、汚染した者が除染する義務を負う」と定められている。汚染源の特定のためには、アメリカ軍基地内への立ち入り調査が不可欠。それと同時に住民の健康調査、特に母子への検査が急務で県や国の連携が求められている。 (沖縄テレビ)