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 茂木さんの発言の問題点については、ここでは深く追及しない。
 私がわざわざ書くまでもなく主要な論点は以下の記事で言い尽くされている。


 ひとつだけ付け加えるなら、茂木外相によるこのたびの不必要にあからさまな記者個人への嘲弄は、彼自身の個性というよりは、むしろ現政権の体質を、より明確に反映した振る舞いだったということだ。


 現政権の主要メンバーの間では
 「質問にマトモに答えないこと」
 「質問者を愚弄すること」
 「会見を設定した言論機関の体面を失わしめること」
 「質問そのものを揶揄すること」
 「記者と政治家の間に設定されている会見が対等なコミュニケーションの場ではないことを記者たちに思い知らせること」
 「質問の意味を意図的にすり替えて回答すること」
 「回答の言葉を意識的に無意味化すること」
 といった調子のある種のニヒリズムが強く共有されている。


 これは、学級崩壊した教室の中学生たちが、授業の進行を意図的に無効化させようとする態度と相似で、これに(つまり、授業妨害に)参加しない生徒は仲間はずれにされる。
 であるから、現政権の中で一定の評価を得るためには(つまり、政権中枢の人々を喜ばせるためには)積極的に会見を愚弄する必要が生じる。


 菅義偉官房長官による記者の言葉を聞かない応答や、麻生太郎副総理による若手記者への恫喝も同じ気分の中で起こっている同じタイプの反応だ。
 彼らは、誰かをいじめることで連帯している中学生とそんなに変わらない。権力志向の男を選択的に集めたホモソーシャルは、どうかするとその種の中学生くさい悪ガキ集団に着地する。


 「言ってやった言ってやった」
 「ざまあ」
 「あいつら吠え面かいてやがった」
 「やったぜ!」
 ごらんの通り、この種の腐ったホモソーシャルの中では
 「マジメ」
 が一番嫌われることになっている。
 「マジメか!」
 というツッコミを食らったクラスメートは、仲間に入れてもらえないばかりか、うっかりするといじめのターゲットになる。


 彼らの中では、記者なりジャーナリストなり野党議員なりリベラル評論家なりの話に真摯に耳を傾けた時点で
 「なんだあいつは?」
 「なにいい子ぶってやがるんだ?」
 「マジメか?」
 「カシコか?」
 てなことになる。