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 大成ロテックと會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)は、共同研究中の自己治癒型のアスファルト舗装を、車両通行の供用を前提とした場所で2021年度に試験施工すると明らかにした。切削オーバーレイに代わる舗装の新しい維持管理手法の実用化に一歩近づく。

オランダで自己治癒型のアスファルト舗装を施工してから5年後に、供用状況を確認している様子。舗装表面に特殊機器を当てて加熱するだけで、劣化を修復できる(写真:山田 敏広)
オランダで自己治癒型のアスファルト舗装を施工してから5年後に、供用状況を確認している様子。舗装表面に特殊機器を当てて加熱するだけで、劣化を修復できる(写真:山田 敏広)
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 自己治癒型のアスファルト舗装は、オランダのデルフト工科大学のエリック・シュランゲン教授が開発した。會澤高圧コンクリートは、同技術の独占使用権を持つオランダのベンチャー企業のエピオンと、18年にフランチャイズ契約を締結。以来、日本国内での普及を目指して技術開発を進めてきた。


 通常の加熱アスファルト混合物に、以下の2つの材料を混ぜる。直径1.5mm程度の球状の材料「再活性化カプセル」と、様々な長さの鋼繊維(スチールファイバー)だ。これらの材料が2段階の修復機能を発揮する。


 供用初期の段階では、再活性化カプセルによって自己修復する。舗装の表層にクラックが入り車両の荷重などを受けてカプセルが割れると、中のオイルが染み出る仕組みだ。オイルがひび割れを埋めたり、劣化したアスファルトを軟化させて骨材同士を接着しやすくしたりする。

直径1.5mmほどの球状の「再活性化カプセル」(写真:大成ロテック)
直径1.5mmほどの球状の「再活性化カプセル」(写真:大成ロテック)
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 ただし施工時に混入できるカプセルの量には限りがあるため、時間がたつにつれて効果が薄まる。そこで、2段階目として特殊な機器を舗装の表面に当て、強制的に修復させる。インダクションヒーリングという加熱システムで、アスファルト内に混入したスチールファイバーを温め、こわばったアスファルトを融解させて再び骨材を接着させる仕組みだ。

路面を加熱する特殊車両のイメージ。日本国内に導入する際は、もっと小型で小回りの効く仕様にする予定だ。現在、會澤高圧コンクリートが主体となって、加熱システムを備えたけん引型の特殊車両を開発している(資料:エピオン)
路面を加熱する特殊車両のイメージ。日本国内に導入する際は、もっと小型で小回りの効く仕様にする予定だ。現在、會澤高圧コンクリートが主体となって、加熱システムを備えたけん引型の特殊車両を開発している(資料:エピオン)
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インダクションヒーリングによる加熱の仕組み。交流電流によって発生する磁力線を路面に当てると、舗装内のスチールファイバーに過電流が生じて温める(資料:日経クロステック)
インダクションヒーリングによる加熱の仕組み。交流電流によって発生する磁力線を路面に当てると、舗装内のスチールファイバーに過電流が生じて温める(資料:日経クロステック)
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 オランダでは既に、高速道路をはじめ20カ所以上で自己治癒型のアスファルト舗装を施工した実績がある。ただ同国では、排水性能の高いポーラスアスファルト混合物が主流だ。一方、日本では耐久性に配慮した密粒度アスファルト混合物が多い。


 會澤高圧コンクリートは、大成ロテックと自己治癒型のアスファルト舗装の共同開発契約を19年12月に締結。「日本のアスファルト混合物に適切な配合などを共同で研究してきた」と、大成ロテック生産技術本部の山田敏広技術推進室長は話す。