脳梗塞で倒れたSF作家山本弘の闘病記から転載。
介護職の大半が腰痛持ちであることは以前に聞いたことがある。まあ、体重が80キロ90キロあるような老人もいるのだから、老人介護は重労働だろう。
そういう職場の状況がまったく改善されない、というのも不思議な話である。スポーツ選手上がりの筋骨たくましい介護士をたくさん雇って、肉体労働はそういう連中に主に任せたらどうか。もちろん、それには介護士の給与を今の倍以上にする必要があるが、それは政治家の当然の仕事だ。スポーツ選手も、そういう仕事でもしないと、体を鍛えても、まったく社会の役に立っていないわけである。世間の人々は肉体労働というものを軽視しすぎだ。無駄に筋トレをしながら、仕事は事務職とかIT関係とか、男のやることか。
まあ、体はプロレスラー、頭はアインシュタインというのは、漫画の主人公としては面白いが。
(以下引用)
介護職の大半が腰痛持ちであることは以前に聞いたことがある。まあ、体重が80キロ90キロあるような老人もいるのだから、老人介護は重労働だろう。
そういう職場の状況がまったく改善されない、というのも不思議な話である。スポーツ選手上がりの筋骨たくましい介護士をたくさん雇って、肉体労働はそういう連中に主に任せたらどうか。もちろん、それには介護士の給与を今の倍以上にする必要があるが、それは政治家の当然の仕事だ。スポーツ選手も、そういう仕事でもしないと、体を鍛えても、まったく社会の役に立っていないわけである。世間の人々は肉体労働というものを軽視しすぎだ。無駄に筋トレをしながら、仕事は事務職とかIT関係とか、男のやることか。
まあ、体はプロレスラー、頭はアインシュタインというのは、漫画の主人公としては面白いが。
(以下引用)
妻は週に二回、洗濯物を交換しに、病院にやって来る。毎日来なくていいと僕が言ったのだ。
妻はあまり身体が丈夫じゃない。電車に乗ってこの病院に通うのも疲れるらしい。このうえ妻まで倒れては大変だ。
妻の持病の多さも驚異である。腰痛、胃痛、生理痛、頭痛、歯痛など、いつも病院に通っている。病院のカードが何枚あるのか見当もつかない。
持病の一因は、若い頃にやっていた老人介護の仕事にあると思う。
食事の介助、トイレの介助、風呂の介助……今まさに、僕が介護士さんたちから受けている仕事を、妻もやっていたのだ。この病院にいるような軽度の患者ばかりじゃないし、それに老人と言ってもやせ細った人とは限らない。すごく体重のある人をかかえて介助しなくてはならない場合もある。
だから老人介護の仕事をしている人の職業病は腰痛である。
妻からそのつらい体験談をさんざん聞いていたので、「人間の代わりに介護してくれるアンドロイドがいればいいのに」と考え、書いたのが「詩音の来た日」(『アイの物語』に収録)である。
小説の中では、近未来の日本が老人介護の問題に力を入れ、アンドロイドの配備に乗り出すということになっていたが、現実にはそんなことは起きそうにない。
妻が辞めた後も、依然として待遇は改善はされず、それどころか人員は削減される一方だとか。
たぶん政治家はみんな老人問題になど関心ないのだろう。歩けない老人、投票に参加しないような老人など、票田として魅力がない。それに彼ら政治家は、たんまり金をためこんでおり、老後の心配などしなくていいのだろう。
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