受験生保護どころか、受験生を反古(紙屑)扱いしている。
(以下引用)
「英語民間試験を使わず」 東北大の方針を8割の高校が支持
大学入学共通テストを巡り、東北大は昨年12月、「初年度は英語民間試験を利用しない」方針を決定。同大入試センター副センター長倉元直樹教授が語った。AERA 2019年9月16日号から。
【グラフを見る】「英語民間試験を利用しない」東北大の方針に高校は?
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東北大学は、2020年度から始まる大学入学共通テストの英語民間検定試験を初年度は「利用しない」としました。その方針について、高校に行った調査結果では、「賛成」が8割強。明確な反対は、250校のうちわずか3校でした。
現在、国立大で利用しないと発表したのは東北大と北海道大、京都工芸繊維大の3大学です。公平公正な受験体制や専門家から指摘されている成績評価の問題などが、実施までに解決する見通しが立っていないためです。
18年12月に方針を打ち出す前、多くの志願者のいる約270の高校を対象に、事前調査も実施しました。「英語民間試験の利用」について一般入試の全受験者に課すことに「賛成」はわずか8%。反対が4割に上ったことも重視しました。
さらに共通テストに新たに導入される国語・数学の記述式問題については、検討過程にあった16年、私の研究室で国立82大学の個別試験ほぼすべてを小問単位で分析。その結果、81大学と、ほとんどの国立大学の一般入試で記述式問題を課していることが明らかになり、共通テストに導入する是非について問題提起しました。
東北大では、マークと記述の双方の利用が義務づけられている「国語」の記述式については、20年度は点数化して合否判定に使うことはせず、合否ラインに志願者が同点で並んだ場合にのみ、利用することにしました。従来の個別の筆記試験で、思考力や表現力は十分評価できると判断したからです。この方針への高校の反対は1割弱でした。
大学入試では、これまで「受験生保護」を大原則としてきました。文部科学省は実施要項にこれを明記し、さらに「個別学力検査及び大学入試センター試験において課す教科・科目の変更等が入学志願者の準備に大きな影響を及ぼす場合には、2年程度前には予告・公表する」と記しています。いわゆる「2年前予告ルール」です。ところが、来年4月から始まる英語の民間試験は、実施まで7カ月を切っているのにいまだ詳細が決まっていません。ルールに照らすなら、前代未聞の異常事態です。
大学にはアドミッションポリシーに従い、入学者を決定する権利があります。自治の根幹を成すもので、当然義務も伴う。共通テストへの不安と混乱が増すなか、「自分たちにできることは何か」。主体的にひとりひとりの「受験生保護」の観点と向き合い、考え判断することこそが、各大学の果たすべき責務です。
東北大の学生は、公立高校出身者が多いのが特徴です。地域のなかには、センター試験を受けるために、学校がバスをチャーターし宿泊の手当てをするところもあります。経済的に恵まれているとはいえない生徒たちにまで、英語民間試験のさらなる負担を一律に強いることは妥当でしょうか。生まれ育った環境に関係なく、自分の能力や努力で上を目指していける。そんな「希望」を持てることは非常に大事で、東北という地域の希望にもつながる。それには前提となる「公平性」が不可欠です。
今の入試改革で「公平性」や「受験生保護」の大原則と引き換えに、優先されているものは何でしょうか。社会の価値観のひずみが、今ある混乱を生み出しているとも思います。私たちがそんな社会を望んでいるのか。国民的な議論が必要です。
(構成/編集部・石田かおる)
※AERA 2019年9月16日号
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