しかし、いったん指定されてしまうと「特別警戒区域」では宅地開発などが規制される他、「警戒区域」でも「地価が下がる」などとして、指定に反対する住民も少なくありません。
これが今回の大災害の一番の問題点(根本原因)だろう。ハザードマップの周知がなされないのも、「土建不動産関係業者への忖度」のためではないか、と私は疑っている。
とにかく、西日本や京都の一部ではほぼ毎年のように降雨災害は起こっているのであり、今回はただその規模が大きいというだけの話だ。起こる可能性が高い災害であることが分かっていながらそれを座視しているのは、「行政の犯罪」だ、と私は思う。
たとえば、ある状況を見過ごすことによって、誰かが大きな事故を起こしたり死んだりする場合、その状況で知らん顔をしているのは「不作為による犯罪」である。行政も同じことである。もちろん、何度も警告が出ていて災害可能性が高いことを知っていながら住人がそういう場所に住んでいたとしたら自業自得だと言えるかもしれないが、はたして今回の被害者たちは知っていただろうか。
(以下引用)
──土砂災害警戒区域指定やハザードマップといった対策は十分だったのでしょうか。
土砂災害防止法では、土石流やがけ崩れなどの危険のある場所を「警戒区域」に、特に危険の大きいところを「特別警戒区域」に指定します。まず、都道府県が危険のある場所を調査して被害の及ぶ範囲を推定し特定。その上で市町村長に意見を聴いて、住民に説明をした上で区域を指定します。
しかし、いったん指定されてしまうと「特別警戒区域」では宅地開発などが規制される他、「警戒区域」でも「地価が下がる」などとして、指定に反対する住民も少なくありません。そうした声を受けた市町村長の了解が得られず県などが指定をためらってしまうケースが多いのです。
しかし、14年の広島土砂災害を受けて、指定を待っていては危ないということで、都道府県の調査によって判明した段階で公表しようという流れにになっているのですが、残念ながらまだ十分ではありませんでした。
また、ハザードマップを作成しても、住民たちがそれを見ていない、見ていたとしても危機的な意識を持っていないため対策が取れていないという所が少なくありません。本来は、災害が起きたとき、どの方向へ避難すべきなのかまで理解していなければ意味がありません。しかし、ハザードマップからそこまで読み取っている人は、あまりいないのが現状です。
また、災害対策はどうしても地震対策に偏りがちです。しかし、土砂災害も頻繁に起きています。その対策も充実させる必要があります。
──では、どういう対策を取っておくべきなのでしょうか。
そういう意味では、自分たちが住んでいる土地の“癖”を知っておくべきです。昔の地図を見てみると、人々は自然堤防のような高台に住んでいて、低い土地には住んでいなかったりします。今は開発が進んで分かりづらいですが、日頃、そうした地図を見たり、歩いたりしながら“癖”をつかんで対策を取っておくべきなのです。そうすれば、逃げる方向なども分かります。
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