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徽宗皇帝のブログ

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「天皇制」への発言は、まず言葉の定義をしてから
「混沌堂主人雑記」から転載。

「天皇制」という言葉は誤解を生みやすい言い方であり、まるで天皇に統治権があるように聞こえる。

明治維新から大東亜戦争の敗戦までの天皇制ですら、天皇に統治権があったかどうかは議論されていい。少なくとも、明治維新期に天皇を政治の中心とすることを決めた維新勢力にしても、天皇とは「日本統治のための道具」であり、「表の顔」でしかなかったはずだ。これは維新期の資料に基づく多くの書物から簡単に読み取れることだ。江戸末期に維新勢力が、政治という商売の店の背後の蔵の中に押し込められていた看板の埃を払って、「これこそが日本政治の宗家である」と押し立てて、幕府と対抗したにすぎない。つまり、皇室への尊崇の念など最初から日本の政治権力者は持っていないのである。
別の面から言えば、天皇とは実質的権力を持たない中空的存在だからこそ、2000年近い年月(は大げさか。まあ、1500年くらいだろうか。)の間、政治の波の上を漂って存続したのだ。
以上は私だけが言っているものではない。私自身は堅い書物を読む習慣が無いので残念ながら未見だが、丸山真男もたしか、天皇を「中空的存在」と見做していたはずだ。
これが、肝心なところだ。私流に言えば天皇とは「権威的存在」であり、「権力的存在」ではない、ということだ。戦後日本の「象徴天皇制」とは、まさに天皇という存在のその本質に即したものである。
ところが、「象徴天皇制」から「象徴」の言葉を抜いて「天皇制」と言うと、一気に「権力的存在としての天皇」のニュアンスが出てくるわけだ。これが言葉を扱うことの難しさだ。

まあ、以上は下の記事から言えば、余談である。だが、「天皇制」という言葉で何を意味しているのか、不明確なままに「天皇制」批判をする人があまりに多いので、一言したのである

今上天皇は、現憲法の規定による象徴天皇制が日本の伝統的な天皇の在り方に最も即しているとご理解なさっており、(そういう発言が過去にあったと私は記憶している。)だからこそ、ご自分の言動が「政治的」にならないように実に細心にふるまっていることが、下の記事からも窺える。
生前退位問題がどうなるにせよ、天皇が権力とは無縁であることを一番望んでいるのは今上天皇ご自身だろう。


(以下引用)


天皇陛下の「お気持ち」、8日午後3時公表
宮内庁発表 2016/8/5 20:15 (日経)

 天皇陛下が「生前退位」の意向を周囲に示されていることをめぐり、宮内庁は5日、陛下自身によるビデオメッセージを8日午後3時に公表すると発表した。内容は「象徴としての務めについてのお気持ち」としている。憲法が天皇の政治的言動を認めていないことから、退位や制度改正の必要性に関する直接的な表現は避けられる見通し。

 天皇陛下のメッセージは約10分間。宮内庁は映像とお言葉の全文をホームページで公表し、英訳も載せる。同庁関係者は、ビデオメッセージ形式とする理由を「陛下のお気持ちが正確に、分かりやすく国民に伝わるようにという観点で検討した結果」としている。

 陛下がお気持ちをビデオメッセージで発信されるのは2回目。前回は東日本大震災から5日後の2011年3月16日で、約5分半にわたり国民に語りかけられた。

 生前退位をめぐっては7月13日、天皇陛下が周囲に意向を示されていることが判明した。ただ、皇室制度を定めた皇室典範に生前退位に関する規定はなく、実現には法整備が必要。陛下が退位の意向を明言して法整備を求めるような事態になれば、「天皇は国政に関する権能を有しない」と定めた憲法4条に抵触する恐れがある。

 このため、宮内庁は公式には「陛下の意向」を否定する一方、公表する内容や方法を慎重に検討してきた。



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