「春曲丼より混沌丼」から転載。
香港問題について、これまで読んだ中で一番冷静で客観的で知識が深く、鋭い評論だと思う。
(以下引用)
戦闘教師「ケン」 華東大乱編 より
香港問題について、これまで読んだ中で一番冷静で客観的で知識が深く、鋭い評論だと思う。
(以下引用)
戦闘教師「ケン」 華東大乱編 より
上記文抜粋
・・・・・・・・・・
香港問題に対して本土人は?
【香港、周庭氏ら10人保釈 SNS投稿問題視か】
香港当局は12日未明までに、国家安全維持法(国安法)違反などの容疑で10日に逮捕した香港紙「リンゴ日報」創業者の黎智英氏や民主活動家の周庭氏ら10人全員を保釈した。当局は今後、起訴に向けた捜査を進めるとみられる。
周氏のフェイスブックなどによると、同氏には国安法施行後の7月以降、「インターネット交流サイト(SNS)を利用して外国勢力と結託し、国家の安全に危害を加えた」疑いが持たれている。ただ、問題となった投稿の具体的な時期や内容については説明がなかったといい、周氏は「政治的弾圧だ」と憤った。
周氏は国安法施行直前、所属していた政治団体「香港衆志」脱退を表明。その後は目立った活動を控え、SNSでの発言も抑制気味だったにもかかわらず、当局は摘発に踏み切った。
米国をはじめとした国際社会に対して民主派支援や中国政府への制裁を求める「国際戦線」を重視してきた活動家らにとって、SNSは「主戦場」だ。新型コロナウイルスや当局の規制強化によって、デモや諸外国訪問を通じた訴えが困難になってからは特にその傾向が強く、周氏の逮捕は他の民主派や市民に対するさらなるけん制になる。
当局は周氏の旅券を没収、リンゴ日報によれば、同紙発行元の壱伝媒(ネクスト・デジタル)社員の一部資産が凍結された。保釈金は黎氏が50万香港ドル(約690万円)、周氏は20万香港ドル(約280万円)に上り、両氏の過去の逮捕時に比べて高額だ。
(8月12日、時事通信)
日本では反中右翼とリベラル派が奇妙な合従連衡を形成、マスゴミも同調する形で反中意識が急速に高まっている。
内政干渉を非難する中国政府に対し、日本政府はほぼ沈黙を続ける一方、一部の議員らは「内政干渉では無い」と反論している。
対ソ干渉戦争(俗称シベリア出兵)の経緯を知るソ連学徒からすると、「こいつらまたやる気か」「宣戦理由をつくる気だな」と考えてしまう。
香港問題は、「一国」を重視する中国政府と、「二制度」に重きを置く西側諸国との認識の差異に起因しているが、「一国二制度」そのものが英国による植民地支配の残滓であり、英中の国力差が無かった1980年代の返還交渉に際して、中国側が苦汁を飲んで受け入れた経緯がある。本来であれば、武力によって強奪、植民地支配した他民族の領土を返還するのに条件を付けること自体が不当かつ暴力的だからだ。
日本の保守派・帝政主義者の場合、植民地支配そのものをいまだ肯定しており、明治帝政の侵略主義も否定しているが、この連中が香港問題で二制度を支持すれば支持するほど、中国側では「日本はまたぞろ大陸進出を狙っている。香港はその最終拠点だから必死に介入しようとしているのだろう」という認識になってしまう。
私などが「いやいや、さすがに今どき大陸進出まで考えている日本人は殆どいませんよ。むしろ中国による侵略に恐怖しているくらいで」といくら説明してみたところで、「いやいや、中国は未だ後進小国で、いつ米英に侵略されてもおかしくない、日本も同調するだろう」「だからできるだけ早く橋頭堡を潰しておかなければ」くらいの反論が来てしまう。
この辺のどうにもならない認識格差は、日本ではなかなか理解されないだろうが、幕末期に「このままでは日本は欧米列強の植民地になってしまう」と日本全体がシグルイ化してしまったことを思い返してもらいたい。
全体主義学徒としてのケン先生がここで主張したいことは、日本や欧米が香港を擁護すれば擁護するほど、中国側は「やはり香港は欧米列強の大陸進出、反共の橋頭堡であり、一刻も早く潰す必要がある」という認識を加速させてしまっているというものだ。
例えば、今回逮捕された周庭氏が良い例で、日本側が「民主の女神」などと持ち上げ、国会議員らがこぞって彼女をアイドル化して、一緒に写った写真をSNSに上げている。
これについて、中国の当局者がケン先生に「意見」を求めてきたことがあるのだが、自分から「先生の意見を伺いたい」と言ってきながら、「日本政府は自分ではさすがに香港の民主化運動を支援できないものだから、野党を経由して香港の民主派を支援しているんでしょう。なかなかあざといことをしますよね」などと延々と自分たちの「妄想」を説明されてしまったことがある。
これは、ソ連や中国が直接日本の社会党を支援できないために、友好商社をつくって、その貿易差額を両党にキックバックしていた経緯が念頭に置かれている。その結果、中国側は「欧米日も同じ事をしているに違いない」と考えているわけで、少なくともアメリカは世界中で非米国の反体制運動を支援しているため、あながちウソとも言えないのだ。
そのため、日本で彼女を支援する動きが高まれば高まるほど、「こいつは相当な大物に違いない」という誤った認識を助長してしまっている。もちろん、向こうの良識派は「周などただの偶像であって、本体は別」という認識を持っているのだが、「証拠が無いこと」に加え、他国が騒ぐほど懐疑派の声が強まってしまう傾向にある。
この辺りの問題は、アメリカがイラク・フセインの情報欺瞞に踊らされた挙げ句、疑念を深め、「大量破壊兵器があるかもしれないから、先に攻撃してしまえ」と決断してしまった2003年のイラク侵攻の経緯とよく似ている。
もっとも、香港の場合、英米による反中謀略活動の拠点となっていることは間違いない(程度の問題はあるが)。
また、大陸の一般市民からすると、香港市民に同情する向きもあるが、あくまでも少数派(それもかなり少ない)に止まっており、大半は「同じ中国国民なのに、連中だけ様々な特権を享受している上、大陸人を蔑視している。いつまで買弁気取りなんだ!」という根深い不信感と差別感を抱いている。そして、こうした反香港感情が、中国政府と中共の積極的判断を後押ししている。
現地の状況と西側報道を見て、イデオロギー視点で物事を考えてしまうと、「中共ケシカラン、悪即斬」という結論にしかならない。
それは、干渉戦争への道でしかない。「シベリア出兵」が「チェコ軍団の救出」「邦人保護」「人道支援」の名目で正当化されたことを忘れてはならない。
補足しておくと、「外国勢力と結託して国家分裂策動を行った」容疑の周庭氏らは逮捕後一日で保釈されているが、日本では「コロナ渦でのプール反対」のビラをまいた高校生が逮捕されて二十日間拘留されている。
例えば、1937年に起きた人民戦線事件では、治安維持法によって、社会民主主義者、労働運動家、マルクス経済学者などが一斉検挙され、一次、二次含めて480名以上が逮捕された。ところが、起訴されたのは30人にも満たない上、法廷で有罪判決が下されたのはわずか数人に過ぎず、圧倒的多数は無罪に終わった。数件の有罪判決についても、判決が出る前に容疑者は保釈され、かつ控訴審は延期され続けたまま終戦を迎え、結審に至らずに終わった。このことは、当局が対象を必ずしも有罪にしなくとも、強制捜査や検挙、拘束することだけで、対象の動きを抑止することが可能であることを示している。もちろん、日本の現政府は人民戦線事件、横浜事件などについて違法性や非人道性を否定していない。
PR
コメント