国会の会期延長で、国内政治問題は長期戦となったので、気分直しにギリシャ問題でも考えてみる。まずは、「ギャラリー酔いどれ」所載の「スプートニク(旧「ロシアの声」)」記事である。
ギリシャ中央銀行と欧州中央銀行との関係はよく分からないが、
「欧州中央銀行は、ギリシャ中央銀行に対し、諸銀行の活動を停止するよう強制した」
というのであれば、ギリシャ中央銀行はギリシャ政府とは独立した存在で、欧州中央銀行の支配下にある、ということなのだろう。そして、市中銀行はそれとはまた別に、ギリシャ中央銀行からある程度独立した存在で、政府の統制をもかなり受けている、と考えてよさそうだ。これは世界的に共通した形態だろう。(要するに、「中央銀行は完全にユダ金所有、市中銀行はただの雑魚で、ユダ金に半分だけコントロールされている」ということか。)違いは、欧州では各国中央銀行の上に欧州中央銀行があるという「二階建て」構造になっていることだけか。
ツィプラスの戦いの相手は、おそらく世界経済を支配するユダ金であり、欧州中央銀行とIMFが当座の戦いの相手だ、と彼は考えているかと思う。彼の発言には、その自覚が匂う。
左翼政党指導者として、彼は、人民の貧困の根底にユダ金の経済支配がある、と見ているはずである。そして、ユーロ体制とは、資本家による庶民搾取の構図が、富裕国による貧困国搾取に置き換わったものだ、と見ているのではないか。
もちろん、多くの「常識的な」見方のように、ギリシャの貧困は「国民が怠け者だから」とする考え方もある。だが、「国民全体が怠け者である」国など、ありえるだろうか。或いは、「アングラマネーが経済の大部分を占め、しかも公務員の数が多すぎ、年金など福祉費用があまりに膨大で、国家財政が立ち行かないシステムになっている」という、資本主義者や新自由主義者が喜ぶ言説も、部分的には正しいだろう。では、ギリシャは不幸な国か、国民は不幸な生活を送っているか、となると、どうだろうか。少なくとも、ツィプラス以前の政府に対し、国民は暴動を起こすほど反発していたが、ツィプラス政権に対して暴動が起こっている、という話は聞かない。我々が聞くのは、ユダ金支配下の「売女マスコミ(byポール・クレイグ・ロバーツ)」が伝える、一部の者の不満の声だけであり、それで判断させられているだけだ。
金が無いから不幸なはずだ、というのは短絡的すぎる。普通は拝金主義を批判する人たちも、ギリシャの財政破綻やデフォルトの話題になると、たちまち、「ギリシャ国民怠け者」説を疑うこともなく、けしからんことだ、と考えたりするのである。
さて、ギリシャ国民は不幸な生活を送っているのか、これから送ることになるのか。
それとも、「銀行支配経済」の終わった後、他の国より幸福な国になるのかどうか、興味深いところである。
前にも書いたが、アニメの「一休さん」は、何か問題が起こると、「慌てない、慌てない」と言って、座り込んでじっくり考えたものである。せわしない現代人は、すぐに結論を出そうとして、目の前の情報に疑いもせずに飛びつく。こういう時代こそ、「慌てない、慌てない」と呟くべきだろう。
(以下引用)
◆http://jp.sputniknews.com/politics/20150629/511853.html
Sputnik 日本 2015年06月29日
◎ツィプラス首相 : ギリシャ中銀、銀行の活動を停止するよう勧告
ギリシャのツィプラス首相は、ギリシャ中央銀行が国内の銀行て、各行の活動を停止し、
現金の引き落としを制限するよう勧告を出したことを事実であると認めた。
首相は次のように述べた。「ユーログループの決定により、今日、
欧州中央銀行は、ギリシャ中央銀行に対し、諸銀行の活動を停止するよう強制した」。
首相によれば、ユーログループの決定は
7月5日の国民投票を妨害するべく
ギリシャ国民を恐喝することを目的としたものでしかない。
「これからの数日間に必要なのは、落ち着きと、我慢だけだ。
ギリシャの銀行各行にある国民の預金は完全に保証されている。
また、給料や年金の支払いも保証されている。
あらゆる困難に対し、落ち着きをもって、決然と対処しなければならない」
とギリシャ首相。
◆http://jp.sputniknews.com/politics/20150628/510603.html
Sputnik 日本 2015年06月28日
◎フィナンシャル・タイムズ : ギリシャの離脱は欧州にとって悪夢の始まりに過ぎない
ギリシャ債務危機に関しては、債権者の提案を受け入れるか否かを問う
住民投票の実施よりも、ギリシャが財政支援プログラムを拒否し、
同プログラムが火曜に期限切れを迎えることのほうが重大なニュースだ。
フィナンシャル・タイムズ紙のウェブ版で、ヴォルフガング・ミュンハウ評論員が述べた。
ギリシャは水曜以降、財政支援を失い、債券市場にアクセスすることが出来なくなる。
ミュンハウ評論員は次のように述べている。
ギリシャ政府としては、プログラムを拒否することが、
唯一確実かつ合理的な決定である。
計画を受け入れた場合、ギリシャはさらに数年、不況に見舞われることになる。
ギリシャのユーロ圏離脱は 短期的にはマイナスの影響のほうが大きいだろう。
しかしそれによって ギリシャの復興への望みは残る。
債権者らとの合意がなければ、住民投票も意味を失う。
もし国民が最後通告を受け入れたとしても、プログラムを元に戻すことは出来ない。
欧州中央銀行は「緊急流動性支援(ELA)」の枠内で
ギリシャの各銀行の融資額を削減し、資本の動きを管理する構えだ。
続いて並行通貨が発行され、それによりギリシャは、
EUおよび欧州中央銀がギリシャの銀行システムの処理方法を確立するまでの間、
賃金や年金を払うことが出来るようになる。
もし住民投票が支援プログラムの期限が切れる前に行われたなら、
このプロセスを阻むことも出来ただろう。
ギリシャ政府の決定はギリシャのユーロ圏離脱の可能性を高めるだけである。
実施が発表されている住民投票は、既に期限の切れたプログラムに関する、
既に存在しない提案について社会と協議をする、一種の茶番に終わってしまう。
問題は、いつ欧州中央銀が引き金を引くのか、ということに尽きる。
なぜなら欧州各国の財務当局に
「ユーロ圏内のデフォルト」に備えた計画があろうはずがないからである。
「どうやら我々は破局に向かっているようだ。これは最悪の結果である。
しかしユーロ圏のほかの参加者にとっては、悪夢はほんの序の口に過ぎない」。
以上のようにフィナンシャル・タイムズ紙のミュンハウ評論員は述べた。
(引用2)参考までに「泉の波立ち」から抜粋転載。私・徽宗がこの意見に半分賛成、半分反対であることは、私の前説を見れば分かるかと思う。
要するに、今回 EU が要求していること(財政改革)も、ギリシャが要求していること(債務減免)も、どちらも4年前に実現していたことなのだ。「それで問題は解決」と見込んだのだが、実は、ただの問題の先送りにすぎなかった。かくて、あれから4年後に、また問題が再発した。
とすれば、今ここで財政改革や債務減免をしたところで、やはり一時しのぎ(問題の先送り)になるにすぎない。これらは本質的な解決にはならないのだ。
──
では、どうすれば本質的な解決になるか? それには、物事の本質を見ればいい。
まず、4年前の記事で、こう書いた。
ここで、「バケツの穴があいている」という表現をとった。これは適切な表現である。ただ、ここでは、この言葉を「財政赤字の垂れ流し」という意味で用いたが、これはちょっと抽象的すぎたかもしれない。
「バケツの穴があいている」ということは、もう少し具体的に言うと、次の二点である。
・ 歳出が多すぎる (公務員が多すぎる)
・ 歳入が少なすぎる(徴税が不完全で脱税天国)
公務員が多すぎる点については、次の記述がある。
徴税が不完全で脱税天国である点については、次の記述がある。
これが「バケツの穴があいている」(財政赤字がひどい)ことの実状だ。こういう実状があるのだから、「バケツの穴を2割ぐらい小さくしよう」というような解決策では、とうてい問題が解決しない、とわかる。EU の示した支援条件は、もともと一時しのぎの方策に過ぎず、問題の根本的な解決策とはならないのだ。
──
では、どうする?
もちろん、歳出を大幅に減らすだけでなく、歳入を増やすことが必要だ。ただし、そのためには、国家を改造するぐらいの大変革が必要だ。「ちょっと修正する」というぐらいでは足りず、「国家を再構築する」ぐらいの大変革が必要だ。
そして、それは、容易ではないし、数年ぐらいの期間ではとうてい実現できない。とすれば、答えはただ一つ。
「ユーロを離脱すること」(共通通貨から離れること)
である。これしかない。
そもそも、「ギリシャというバケツに穴があいている」という状況では、「ユーロという通貨圏全体のバケツに穴があいている」ということに等しい。これを補うためには、他のユーロ諸国が毎年多大に財政援助をするしかない。つまり、毎年毎年、巨額の債務減免をするしかない。しかし、そんなことは不可能だ。
これまで「一度限り」のつもりでやったし、今度はふたたび「一度限り」のつもりでやるらしいが、何度やったところで、バケツに穴があいている状況では、解決しない。永続的にギリシャに資金援助するしかない。だが、それは不可能だ。
とすれば「バケツに穴があいている」というギリシャそのものを、ユーロから切り離すしかないのだ。
・ ギリシャに多額の資金援助を与え続ける。
・ ギリシャをユーロから離脱させる。
この二者択一なのである。(★)
ところが現実には、次の政策が取られた。
「一時金を贈与するが、そのためにはバケツの穴を少しだけ小さくすることを条件とする」
しかし、こんな提案は無意味だ。バケツの穴を少しだけ(2割ぐらいだけ)小さくしたところで、穴から赤字が垂れ流しという状況はほとんど変わらない。また、財政緊縮をすれば、GDP がどんどん縮小するので、逆効果だとすら言える。このことは前にも論じた。
→ ギリシャ問題の混迷 (グラフあり)
結局、上記(★)のような二者択一があるだけだ。そして、この二つのうちで、前者が取れない以上は、後者を取るしかない。つまり、ギリシャをユーロから離脱させるしかない。
この後、(緊縮政策のかわりに)通貨の切り下げをともなう形で、インフレと GDP 拡大を同時に実現すればいい。そういう形で、財政を健全化することができる。
→ ギリシャとユーロ離脱
ただし、これは、通貨面での効果だけだ。これとは別に、財政面での効果も狙うべきだ。具体的には、こうだ。
・ 歳出を減らす (公務員や年金の削減)
・ 歳入を増やす (増税よりも脱税撲滅)
以上のようにして、通貨面と財政面の双方で、ギリシャを抜本的に改革するべきだ。これが正解だ。
一方、次の政策は、不正解だ。
・ 債務を減免する。
・ 年金や公務員給与をいくらか下げる
こんなことはただの一時しのぎにしかならない。抜本策とは程遠い。
ギリシャがなすべきことは、きちんと生産活動をすることだ。公務員や老人が、自分の手足を動かして、きちんと金を稼ぐことだ。農業でもいいし、観光でもいいし、とにかく何らかの形で生産活動をするべきだ。それが正解だ。
なのに、帳簿のことだけを見て、「公務員給与を減らせ」「年金を減らせ」なんていうふうに数字を減らすことばかり狙っていては、ギリシャ国民が「餓死してしまう」と反発するだけだろう。
ギリシャ国民は、餓死するほど支出を減らせばいいのではない。ろくに働かずにいる状態をやめて、きちんと生産活動をすればいいのだ。ここが本質だ。
この本質を見失って、金額の数字のことばかりを考えて、数字の帳尻を合わせることばかりを考えているから、EU とギリシャは混迷のさなかで迷うことになるのだ。
( ※ 特に、緊縮策は、最悪だ。GDP がどんどん低下すれば、国全体の生産力が低迷して、浮上するきっかけを失う。比喩的に言えば、病人は、金を返すために食費を節約したあげく餓死すればいいのではない。むしろ、食事を取りながらちゃんと働けばいい。めざす方向を間違えてはならない。)
ギリシャ中央銀行と欧州中央銀行との関係はよく分からないが、
「欧州中央銀行は、ギリシャ中央銀行に対し、諸銀行の活動を停止するよう強制した」
というのであれば、ギリシャ中央銀行はギリシャ政府とは独立した存在で、欧州中央銀行の支配下にある、ということなのだろう。そして、市中銀行はそれとはまた別に、ギリシャ中央銀行からある程度独立した存在で、政府の統制をもかなり受けている、と考えてよさそうだ。これは世界的に共通した形態だろう。(要するに、「中央銀行は完全にユダ金所有、市中銀行はただの雑魚で、ユダ金に半分だけコントロールされている」ということか。)違いは、欧州では各国中央銀行の上に欧州中央銀行があるという「二階建て」構造になっていることだけか。
ツィプラスの戦いの相手は、おそらく世界経済を支配するユダ金であり、欧州中央銀行とIMFが当座の戦いの相手だ、と彼は考えているかと思う。彼の発言には、その自覚が匂う。
左翼政党指導者として、彼は、人民の貧困の根底にユダ金の経済支配がある、と見ているはずである。そして、ユーロ体制とは、資本家による庶民搾取の構図が、富裕国による貧困国搾取に置き換わったものだ、と見ているのではないか。
もちろん、多くの「常識的な」見方のように、ギリシャの貧困は「国民が怠け者だから」とする考え方もある。だが、「国民全体が怠け者である」国など、ありえるだろうか。或いは、「アングラマネーが経済の大部分を占め、しかも公務員の数が多すぎ、年金など福祉費用があまりに膨大で、国家財政が立ち行かないシステムになっている」という、資本主義者や新自由主義者が喜ぶ言説も、部分的には正しいだろう。では、ギリシャは不幸な国か、国民は不幸な生活を送っているか、となると、どうだろうか。少なくとも、ツィプラス以前の政府に対し、国民は暴動を起こすほど反発していたが、ツィプラス政権に対して暴動が起こっている、という話は聞かない。我々が聞くのは、ユダ金支配下の「売女マスコミ(byポール・クレイグ・ロバーツ)」が伝える、一部の者の不満の声だけであり、それで判断させられているだけだ。
金が無いから不幸なはずだ、というのは短絡的すぎる。普通は拝金主義を批判する人たちも、ギリシャの財政破綻やデフォルトの話題になると、たちまち、「ギリシャ国民怠け者」説を疑うこともなく、けしからんことだ、と考えたりするのである。
さて、ギリシャ国民は不幸な生活を送っているのか、これから送ることになるのか。
それとも、「銀行支配経済」の終わった後、他の国より幸福な国になるのかどうか、興味深いところである。
前にも書いたが、アニメの「一休さん」は、何か問題が起こると、「慌てない、慌てない」と言って、座り込んでじっくり考えたものである。せわしない現代人は、すぐに結論を出そうとして、目の前の情報に疑いもせずに飛びつく。こういう時代こそ、「慌てない、慌てない」と呟くべきだろう。
(以下引用)
◆http://jp.sputniknews.com/politics/20150629/511853.html
Sputnik 日本 2015年06月29日
◎ツィプラス首相 : ギリシャ中銀、銀行の活動を停止するよう勧告
ギリシャのツィプラス首相は、ギリシャ中央銀行が国内の銀行て、各行の活動を停止し、
現金の引き落としを制限するよう勧告を出したことを事実であると認めた。
首相は次のように述べた。「ユーログループの決定により、今日、
欧州中央銀行は、ギリシャ中央銀行に対し、諸銀行の活動を停止するよう強制した」。
首相によれば、ユーログループの決定は
7月5日の国民投票を妨害するべく
ギリシャ国民を恐喝することを目的としたものでしかない。
「これからの数日間に必要なのは、落ち着きと、我慢だけだ。
ギリシャの銀行各行にある国民の預金は完全に保証されている。
また、給料や年金の支払いも保証されている。
あらゆる困難に対し、落ち着きをもって、決然と対処しなければならない」
とギリシャ首相。
◆http://jp.sputniknews.com/politics/20150628/510603.html
Sputnik 日本 2015年06月28日
◎フィナンシャル・タイムズ : ギリシャの離脱は欧州にとって悪夢の始まりに過ぎない
ギリシャ債務危機に関しては、債権者の提案を受け入れるか否かを問う
住民投票の実施よりも、ギリシャが財政支援プログラムを拒否し、
同プログラムが火曜に期限切れを迎えることのほうが重大なニュースだ。
フィナンシャル・タイムズ紙のウェブ版で、ヴォルフガング・ミュンハウ評論員が述べた。
ギリシャは水曜以降、財政支援を失い、債券市場にアクセスすることが出来なくなる。
ミュンハウ評論員は次のように述べている。
ギリシャ政府としては、プログラムを拒否することが、
唯一確実かつ合理的な決定である。
計画を受け入れた場合、ギリシャはさらに数年、不況に見舞われることになる。
ギリシャのユーロ圏離脱は 短期的にはマイナスの影響のほうが大きいだろう。
しかしそれによって ギリシャの復興への望みは残る。
債権者らとの合意がなければ、住民投票も意味を失う。
もし国民が最後通告を受け入れたとしても、プログラムを元に戻すことは出来ない。
欧州中央銀行は「緊急流動性支援(ELA)」の枠内で
ギリシャの各銀行の融資額を削減し、資本の動きを管理する構えだ。
続いて並行通貨が発行され、それによりギリシャは、
EUおよび欧州中央銀がギリシャの銀行システムの処理方法を確立するまでの間、
賃金や年金を払うことが出来るようになる。
もし住民投票が支援プログラムの期限が切れる前に行われたなら、
このプロセスを阻むことも出来ただろう。
ギリシャ政府の決定はギリシャのユーロ圏離脱の可能性を高めるだけである。
実施が発表されている住民投票は、既に期限の切れたプログラムに関する、
既に存在しない提案について社会と協議をする、一種の茶番に終わってしまう。
問題は、いつ欧州中央銀が引き金を引くのか、ということに尽きる。
なぜなら欧州各国の財務当局に
「ユーロ圏内のデフォルト」に備えた計画があろうはずがないからである。
「どうやら我々は破局に向かっているようだ。これは最悪の結果である。
しかしユーロ圏のほかの参加者にとっては、悪夢はほんの序の口に過ぎない」。
以上のようにフィナンシャル・タイムズ紙のミュンハウ評論員は述べた。
(引用2)参考までに「泉の波立ち」から抜粋転載。私・徽宗がこの意見に半分賛成、半分反対であることは、私の前説を見れば分かるかと思う。
要するに、今回 EU が要求していること(財政改革)も、ギリシャが要求していること(債務減免)も、どちらも4年前に実現していたことなのだ。「それで問題は解決」と見込んだのだが、実は、ただの問題の先送りにすぎなかった。かくて、あれから4年後に、また問題が再発した。
とすれば、今ここで財政改革や債務減免をしたところで、やはり一時しのぎ(問題の先送り)になるにすぎない。これらは本質的な解決にはならないのだ。
──
では、どうすれば本質的な解決になるか? それには、物事の本質を見ればいい。
まず、4年前の記事で、こう書いた。
ギリシャの破綻回避のために、EFSF(欧州金融安定基金)を利用する方向で進んでいる。しかしこれは無効だ。バケツの穴があいているからだ。
( → ギリシャ対策(EFSF)は無効 )
ここで、「バケツの穴があいている」という表現をとった。これは適切な表現である。ただ、ここでは、この言葉を「財政赤字の垂れ流し」という意味で用いたが、これはちょっと抽象的すぎたかもしれない。
「バケツの穴があいている」ということは、もう少し具体的に言うと、次の二点である。
・ 歳出が多すぎる (公務員が多すぎる)
・ 歳入が少なすぎる(徴税が不完全で脱税天国)
公務員が多すぎる点については、次の記述がある。
ギリシャは消費税を2006年の18%から2010年には23%へ段階的に引き上げ、計5%増税しました。にもかかわらず、ギリシャは財政破綻したのです。ギリシャは日本以上に「公務員天国」だということです。
政権交代のたびに、政治家が支持者を公務員にしてきたため、国民4人に1人が公務員なのです。しかもギリシャの公務員は民間の2~3倍の高給をとっており、若年層の給料比較では民間企業が1,000ユーロ(約12万円)なのに対し、公務員は2,000ユーロ(約24万)という統計もあります。
さらに、年金も高い。現役時代の給与水準との比較(所得代替率)でいうと、ギリシャは96%で、老後も現役世代の給料並みの年金をもらっているのです(日本は「夫40年勤続・妻が専業主婦」モデルで59%、「男性単身世帯」は34%) 。
( → ギリシャの教訓とは何か? )
徴税が不完全で脱税天国である点については、次の記述がある。
ギリシャにはいわゆる闇経済がはびこっていて、その規模は市場全体の三分の一にも達するそうです。闇経済・・・つまり納税しない経済がはびこっているということです。
ギリシャは貧富の差が激しく、富裕層は税金をほとんど払っていないのが現実。アテネの最高級住宅地にはざっと250軒の豪邸があり、その多くがプール付きだというが、うち税金を払っているのは3軒のみだとか。
なぜそんな簡単に脱税できるのか。それが「3分の1ルール」です。これは、例えば100万円の税金を払わなければいけないという時、3分の1を実際に納税し、残りの3分の1は賄賂に回す。そして最後の3分の1は払わずに済ませるのだそうです。
( → ギリシャはなぜ破綻したのか )
ギリシャで財政赤字が膨らんだ原因の一つに、脱税の横行がある。政府が把握できない地下経済の割合は、国内総生産(GDP)の3割程度にのぼるとみられている。
( → 朝日新聞グローブ (GLOBE) )
これが「バケツの穴があいている」(財政赤字がひどい)ことの実状だ。こういう実状があるのだから、「バケツの穴を2割ぐらい小さくしよう」というような解決策では、とうてい問題が解決しない、とわかる。EU の示した支援条件は、もともと一時しのぎの方策に過ぎず、問題の根本的な解決策とはならないのだ。
──
では、どうする?
もちろん、歳出を大幅に減らすだけでなく、歳入を増やすことが必要だ。ただし、そのためには、国家を改造するぐらいの大変革が必要だ。「ちょっと修正する」というぐらいでは足りず、「国家を再構築する」ぐらいの大変革が必要だ。
そして、それは、容易ではないし、数年ぐらいの期間ではとうてい実現できない。とすれば、答えはただ一つ。
「ユーロを離脱すること」(共通通貨から離れること)
である。これしかない。
そもそも、「ギリシャというバケツに穴があいている」という状況では、「ユーロという通貨圏全体のバケツに穴があいている」ということに等しい。これを補うためには、他のユーロ諸国が毎年多大に財政援助をするしかない。つまり、毎年毎年、巨額の債務減免をするしかない。しかし、そんなことは不可能だ。
これまで「一度限り」のつもりでやったし、今度はふたたび「一度限り」のつもりでやるらしいが、何度やったところで、バケツに穴があいている状況では、解決しない。永続的にギリシャに資金援助するしかない。だが、それは不可能だ。
とすれば「バケツに穴があいている」というギリシャそのものを、ユーロから切り離すしかないのだ。
・ ギリシャに多額の資金援助を与え続ける。
・ ギリシャをユーロから離脱させる。
この二者択一なのである。(★)
ところが現実には、次の政策が取られた。
「一時金を贈与するが、そのためにはバケツの穴を少しだけ小さくすることを条件とする」
しかし、こんな提案は無意味だ。バケツの穴を少しだけ(2割ぐらいだけ)小さくしたところで、穴から赤字が垂れ流しという状況はほとんど変わらない。また、財政緊縮をすれば、GDP がどんどん縮小するので、逆効果だとすら言える。このことは前にも論じた。
→ ギリシャ問題の混迷 (グラフあり)
結局、上記(★)のような二者択一があるだけだ。そして、この二つのうちで、前者が取れない以上は、後者を取るしかない。つまり、ギリシャをユーロから離脱させるしかない。
この後、(緊縮政策のかわりに)通貨の切り下げをともなう形で、インフレと GDP 拡大を同時に実現すればいい。そういう形で、財政を健全化することができる。
→ ギリシャとユーロ離脱
ただし、これは、通貨面での効果だけだ。これとは別に、財政面での効果も狙うべきだ。具体的には、こうだ。
・ 歳出を減らす (公務員や年金の削減)
・ 歳入を増やす (増税よりも脱税撲滅)
以上のようにして、通貨面と財政面の双方で、ギリシャを抜本的に改革するべきだ。これが正解だ。
一方、次の政策は、不正解だ。
・ 債務を減免する。
・ 年金や公務員給与をいくらか下げる
こんなことはただの一時しのぎにしかならない。抜本策とは程遠い。
ギリシャがなすべきことは、きちんと生産活動をすることだ。公務員や老人が、自分の手足を動かして、きちんと金を稼ぐことだ。農業でもいいし、観光でもいいし、とにかく何らかの形で生産活動をするべきだ。それが正解だ。
なのに、帳簿のことだけを見て、「公務員給与を減らせ」「年金を減らせ」なんていうふうに数字を減らすことばかり狙っていては、ギリシャ国民が「餓死してしまう」と反発するだけだろう。
ギリシャ国民は、餓死するほど支出を減らせばいいのではない。ろくに働かずにいる状態をやめて、きちんと生産活動をすればいいのだ。ここが本質だ。
この本質を見失って、金額の数字のことばかりを考えて、数字の帳尻を合わせることばかりを考えているから、EU とギリシャは混迷のさなかで迷うことになるのだ。
( ※ 特に、緊縮策は、最悪だ。GDP がどんどん低下すれば、国全体の生産力が低迷して、浮上するきっかけを失う。比喩的に言えば、病人は、金を返すために食費を節約したあげく餓死すればいいのではない。むしろ、食事を取りながらちゃんと働けばいい。めざす方向を間違えてはならない。)
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