生産性という概念が、少し考えれば中学生でも変に思う穴だらけのものだ、ということを何度も書いてきたが、偉い大学を出た欧米エコノミストやその亜流の日本の経済評論家、経営者も大真面目に「日本は生産性が低い」の大合唱をしている。
生産性を単純に言えば、「労働者一人当たり、単位時間当たりの稼ぎ高」であるから、労働者の数を減らして一人当たり、単位時間当たりの労働量を増やしていけば生産性(労働生産性)が高くなるのは当たり前である。経営者側から言えば、「我が社の利益率が低いのは労働者がロクに働いていないから、つまり労働生産性が低いからだ」という、経営陣の無能を隠し、労働者に責任を押し付け奴隷労働をさせる、実に都合のいい概念であるわけである。
「日本人は労働時間は長いが、その働き方が非効率的で、実は労働時間の大半はほとんど遊んでいる」というような言説も欧米エコノミストやその物真似エコノミストの常套句である。まあ、チャップリンの「モダンタイムズ」の主人公のように、労働時間の間ずっとベルトコンベアの傍に立って一瞬の休みも無く製品のネジか何かをスパナで絞め続けるような働き方が欧米エコノミストや経営者の望む「労働生産性の高い労働」なのだろう。つまり、人間の機械化である。「先進的」企業ほど人間の労働をロボットに置き換えるというのはある意味、現代という時代(モダンタイムズ)の当然の流れだが、問題は、機械に置き換えられないところまで「ロボット労働的効率化」を求めるのが欧米流の生産性主義者だということだ。
当然、そういう連中は、労働者が人間的な待遇を求めることを不快に思う。ロボットに(ムダな出費である)福祉など必要ない、壊れれば別のロボット(労働者)に交換すればいいだけだ、というわけである。
これが「正社員から非正規社員へ」という思想である。
「だが、生産性と効率性を高めないと(国際)競争に勝てないではないか」というのが連中のお題目だが、この考え方も馬鹿げたものではないか、と私は思う。
現実に存在するのは「個々の企業」であり、単なる統計的問題にすぎない日本国(これはただの抽象的存在でしかない。)全体としての労働生産性の問題と個々の企業の国際競争力の問題がなぜ結び付けられねばならないのか。
個々の企業が労働生産性が高かろうが低かろうが、国際競争力があろうが無かろうが、余計なお世話ではないか。
それよりも、インチキエコノミストの言葉を真に受けて、「そうだ、我が社も労働生産性を高めねば」と思う強欲経営者が増殖していくことのほうが遥かに大問題だろう。
つまり、労働生産性とは、ある意味では日本国民の多くを地獄へ導く道路の敷石なのである。
なお、ここで論じた労働は「頭脳労働」を別として論じている。頭脳労働に単純な「労働生産性」は当てはまらないことは欧米人種も理解していると思う。頭脳労働の場合は、一瞬で生み出したアイデアが巨万の富を作ることもあるし、一生をかけて考えても何一つ成果が出ない可能性もある。(科学者の仕事のほとんどはそれだろう。だが、そうした膨大な「無駄働き」があるからこそ、たまに起こる大発見も存在するのである。)
(以下引用)*前半略。
このあいだも、イギリスのチンパンエコノミストが、日本経済の非効率性を述べていた。
日本経済に「非効率なシステム」があるので、それを改めれば日本は成長できると。
こいつの世迷いごとを信じて出てきた政策が「観光立国」や「カジノ」である。
まあ、それらは「一長一短」だと私は思うが、サルというのは「全長」にしかみえないらしい。
視野が狭いというか、考えが足りないというか…そこが、人間に及ばぬところである。
米英が大学で、せっせとサルをカネかけて育成しているというのも滑稽な図ではある…
…で、その「非効率なシステム」とは、具体的に何を意味するのかなのだが…
ちょうど、中原圭介氏が「なぜトリクルダウンが起きなかったか」を解説した文章の中に出てくる。
『アベノミクスが目指したトリクルダウンの論理では、円安で収益が上がる大企業が賃上げや設備投資に動くことで、中小零細企業や地方にも利益がしたたり落ちてくるはずでした。
しかしながら、この理論はあまりにも経済の本質を逸脱したひどいものでした。
中小零細企業はすでに労働分配率が非常に高く、賃金を引き上げるのが困難であったというのは、初めからわかっていたことであるわけです。
大企業の製造業がいちばん労働生産性は高く、中小零細の非製造業がいちばん低くなるわけですが、大雑把に言って、大企業の製造業は労働生産性が1500万円程度であるのに対して、中小零細の非製造業はその3分の1の500万円程度にしかなりません。
ところが、中小零細企業全体の労働分配率は優に7割を超え、大企業の5割程度よりずっと高くなっているのです。
中小零細企業のコストの大部分が人件費なのですから、労働生産性が引き上げられないかぎり、賃金の引き上げもむずかしいといわざるをえないでしょう。
トリクルダウンの理論を生み出した本家本元の米国であっても、アベノミクスが始まる以前から富裕層から庶民へ富がしたたり落ちてくるという事実はまったくなく、トリクルダウンは幻想にすぎないことが明らかになっていました。
インフレと株高で潤ってきたのは、富裕層と大企業だけであり、いまでも格差の拡大は深刻な社会問題となっているのです。
その結果として、米国の大統領選において、泡沫候補といわれたトランプやサンダースが旋風を巻き起こしているというわけなのです』
およそ、「効率」というのは、分数の分子に「利益」を置き、分母に「賃金」等を総計して求める。つまり、賃金を多く払っている企業ほど「非効率」ということである。
ほとんどを外注ですませたり、ロボットですませている企業が「「効率がいい」のである。
すると、「非効率なシステムを改める」ことをした場合、賃金をたくさん払おうとする企業ほどペナルティーを科せられることになる。
現行の消費税を筆頭とした税システムは、給料をたくさん払おうとする企業に罰を与える仕組みになっている。
これで、個人消費が膨らみ、インフレが加速するなどということがあるだろうか?
さらに、「労働生産性」というのがあるが、求め方を調べてみるとよい…
これは需要の関数になっている。
つまり、買い手が高く買ってくれれば自然にこの数値は上がる…
しかし、中小零細企業の商品を安く買いたたいているのは大企業である。
大企業の搾取によって、中小零細企業の労働生産性は低くされているのだ。
この状況で「労働生産性の低い企業には潰れてもらいましょう」などとやって、
日本経済が成長するのであろうか?
米英日のエコノミストたちは、サルよりも頭の悪い痴呆症発症中のごとき、わけのわからないことを言っている人たちばかりなのである。
一般国民のほとんどは、このサルよりも頭の悪い連中の唱える経済学の「ここがおかしい」とツッコミを入れることもできないでいる。さらに輪をかけて頭の悪いやつばかりなのである。
これじゃあ…移民やロボットに置き換えられても、仕方がない~よね~
ネトウヨは、「サヨクの頭のおかしい人たち」キャンペーンをやりたがるが…
「エコノミストの頭のおかしい人たち」に気づかないような役立たずでは、
つけている日の丸が泣くというものである…
コメント