長島昭久の言うことは論理破綻しており、彼の離党が、理屈ではなく単なる共産党嫌いのためだろう、と推定できる。そして、なぜ共産党が嫌いなのかについては明言していない。(と思う。長島に関する記事などここに書かれてこと以外はひとつも読んでいないし、偽野党である現民主党がどうなろうと知ったことではない、と思っているからだ。)
共産党嫌いな保守層の著名人はなぜ共産党を否定するのか、論理的に説明したことはあるのだろうか。自分自身の財産が侵害される可能性という、ケチな理由以外に何があるのか。(米国における共和党は、そういう連中のための党であるし、日本の自民党も同様だ。)
私自身、共産主義思想というのは実現不可能な理想論だと思っているが、それを悪質な思想だと思ったことは一度も無い。むしろ、理想主義的な、高いモラルの思想だと思っている。ただし、人間のほとんどが聖人君子にならないと、この地上では実現しないだろう。
そういう、「非現実性」を批判の根拠とするなら、「日本国憲法」もまた非現実的な代物だ、となるだろう。では、だから憲法は不要で、したがって、憲法に由来する法律も不要だ、という結論にならないのはもちろんである。
そして、社会主義のほうは、福祉政策とは社会主義の実践である、というのが私の考えだ。現在の共産党だって、まさか私有財産の否定という「共産主義」を信奉しているわけでは全然ないだろう。名前は共産党だが、実質的には社会主義の政党である。現在の共産党はかなり現実主義の党なのである。
ならば、長島昭久のような人間が共産党を頭から否定する理由は何か。彼には、その理由を明確に説明する義務がある。それが、民主党の議員候補者としての彼を当選させた支持者への義務である。
(以下引用)
2017-04-26 「共産党ファースト」のせいなの?
「共産党ファースト」のせいなの?
野党の「共産党ファースト」こそ変えなくてはいけない --長島昭久衆議院議員に聞く(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
それから、野党共闘そのものを否定しているわけでもありません。まず民進党がしっかりと政策の柱を立てる。その政策に共産党が賛同していただけたとする。そうなれば、「ともに闘う」という形も納得できます。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20170426-00070309/
結局共産党に引きずられるからダメだ、まず民進党の旗を立てて、そこに集まるようにしなければ、という理屈である。
…左翼化しているかどうかの最大の指標は安全保障問題だと思いますが、そこがどうなのかを何も語っていないことです。この問題では、共産党が安保と自衛隊についての共産党の立場を持ち込まないという表明があったから、野党共闘が実現しているということです。
安全保障問題で野党で一致しているのは戦争法の廃止のみ。普天間基地の辺野古への移設という重大問題さえ一致していません。つまり、野党が政権をとったとしても、変わるのは戦争法がなくなるというだけなんです。それはつまり、2年前までの自民党の政策に復帰するということです。
これって、バリバリの保守政党の政策ではありませんか。左翼化の対極にあるものです。
民進党の問題は、共産党のこの対応によって、保守の枠内でやっていくことを保障されながら、豊かなものを何も示せていないことだと思います。安保と自衛隊の維持を前提にして、しかし安全保障とは何かということをトコトン突き詰め、安保と自衛隊をどう使いこなすのかということを提示できていないのです。これって本当は、長島さんがやるべきことだったのに、何も生み出せなかったわけです。
http://www.kamogawa.co.jp/~hensyutyo_bouken/?p=2916
えっ、共産党の「野党連合政権」論って「安保法制廃止」すら前提じゃねーの?
共産党が1月の党大会で決めている「野党連合政権」論は、すでにそのすぐ前に出した「戦争法廃止の国民連合政権」論ですらない。志位和夫は大会への中央委員会報告で次のように述べている。
全党討論では、決議案でいう「野党連合政権」と、2015年9月19日に提唱した「国民連合政府」の関係をどう考えたらいいのかという疑問も出されました。
わが党は、安倍政権に代わる政権構想として、「国民連合政府」という暫定的な野党連合政権が合理的だと確信しています。同時に、政権の問題では、現時点で、野党間に合意が存在しません。そうしたもとで、決議案では、野党と市民が一緒に、いわば白紙から、安倍政権に代わる政権のあり方を話し合い、前向きの合意を見いだしていこうという立場で、「野党連合政権」というより幅をもった呼びかけとしました。(強調は引用者)
http://www.jcp.or.jp/web_jcp/html/27th-taikai/20170115-27taikai-houkoku.html
野党4党は、「安保法制廃止、立憲主義回復」をはじめとして安倍政治を転換するいくつかの重要な政治的内容で合意しています。……わが党は、政権の問題で、野党間に合意が存在しないもとで、この問題での合意を総選挙の選挙協力の協議に入る条件とはしないということを表明しています。(強調は引用者)
http://www.jcp.or.jp/web_jcp/html/27th-taikai/20170115-27taikai-houkoku.html
安保法制廃止すら政権協議の前提にしないと言っているのである。
譲りすぎだろ、共産党……。
それなのに、何が「共産党に引きずられる」だ。
へー民進党って「日本版BI構想」出してんだ
いったい民進党はどういう政策のすり合わせを野党共闘(次回衆院選での選挙協力)の中でやろうとしているのかよくわからんのだが、例えば経済では「格差是正による経済成長」を旗印にしていて、「日本型ベーシックインカム」という政策……というか法案まで出していることは、実は意外と知られていない。ぼくも「へー民進党って『日本版BI(ベーシックインカム)構想』出してんだ」と驚いたほどである。
格差是正と経済成長に向けた日本型ベーシックインカム構想の実現へ、税法対案提出 - 民進党
「日本型ベーシックインカム」をもう一歩進める一案|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン
経済政策全体についてもまあ整理はされている。
https://www.minshin.or.jp/article/110635/民進党の経済政策
こういう経済政策を野党の連合政権でどこまで一致するか、民進党が主導的に持ち込んで協議の場ですり合わせをすればいいのではないか。*2
安全保障は旗印さえないのでは
長島が「こうだ」と民進党の中で旗印を立てたければ、立てりゃいいじゃないか。共産党がそれを規制しているわけでもないし、もっと言えば野党が連合政権をつくるなら「白紙」から始めていいよ、とまで共産党が言ってくれてんだから。
それこそ、松竹の言うように、共産党には出せない、自衛隊活用や米軍との連携論を出してみたらどうなのか。
私は、もし野党共闘が政権を獲得するほどに成功するためには、民進党は保守的な要素を維持していなければならないと思っています。多様性が大事なんです。民進党が共産党と同じような政策になったら、左翼的な人には魅力的だと映るでしょうし、野党共闘もやりやすくなるのかもしれません。しかし、それって、小手先ではうまくいくけれど、有権者の離反は招くという結果を生み出すことになるでしょう。有権者はそんな共闘に何の魅力も感じないでしょう。
http://www.kamogawa.co.jp/~hensyutyo_bouken/?p=2916
このことは、長島だけではない。長島が去った後の民進党にも問われる。
民進党は、共産党を含めた野党と選挙協力まではやる、と言っているが、政権までは作らない、というところで今止まっている。
いまだに「共産党は現実的でない左翼だからいっしょに組んではいけない」式の批判をしている人が、政治家にも学者にもいるのだが、この理屈の穴は長島のそれと同じである。
共産党が「白紙からでいいぜ」と言っている上に、民進党自体が旗印をしっかり立てていないのだから、流されるとか流されないとかそういう次元以前の話なのだ。民進党は経済にしろ、安全保障にしろ、「現実的」とやらの旗印を立てて、それを野党の中でもんで見ればいいではないか。
民進党の現状は、経済分野では民進党としての旗印はどうやら立っているようだけど、「野党連合政権に乗る」という決意をしていないので、すり合わせもされておらず、従って実現の現実味がなく、安倍政権・自公政権のオルタナティブとして映らないということだ。
安全保障分野に至っては、党としての旗印が立っているかどうかさえ、あやしい。
そしてそういう民進党の現状は、長島さんにも責任の一端があるでしょう。それを共産党の責任にしてはいけません。
http://www.kamogawa.co.jp/~hensyutyo_bouken/?p=2916
だから、長島さんには民進党にいてほしかったんです。他の保守派の人々には、民進党内でがんばってほしいと思います。
http://www.kamogawa.co.jp/~hensyutyo_bouken/?p=2916
という松竹の一文をみるとそんなことを思う。
安倍政権が暴言・失言・失態・迷走・暴走を重ねても、未だに支持率が高いのは、前も言った通り、代替案=オルタナティブが見えないからである。野党共闘は「政権を組む合意」へと進んでいない。ある意味、「共産党と民進党はバラバラじゃないですか」と安倍や山口が選挙戦中のテレビ討論などで言った通りなのである。政権を組むという枠組みで物事を考え始めないとそれが「代替」とは認識されず、いつまでも安倍政権は高支持率を続けたままだ。
逆に見えるだろうが、まず政権を組むという決意に進むことが第一歩だろう。
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