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対北制裁は、抜け穴だらけのザル状態
北朝鮮がシンガポールにある貿易会社を通じて、数々の制裁逃れをしてきた実態が明らかになった。この貿易会社は平壌で高級品店2店舗を経営する。そして、そこで、国連制裁で北朝鮮への輸出が禁止されているはずの宝石や高級時計など「ぜいたく品」を販売している。店内には、ヤマハの楽器や缶コーヒーのポッカなど日本ブランドの商品も数多く陳列されており、対北制裁が依然、抜け穴だらけのザル状態となっていることがうかがえる。
ザル状態になっていることは、この問題で筆者が取材協力してきた北朝鮮関連ニュースの専門サイト「NK News」による調査報道で明らかになった。問題の貿易会社は、シンガポールに拠点を置く「OCNシンガポール」(以下、OCN)。株主となっている同社のオーナー陣はシンガポール人の兄弟らだが、実態は北朝鮮のフロント企業と化しているようだ。OCNはNK Newsの取材に応じていない。
NK Newsの有料会員制サイトNK Proの記事によると、OCNは、故金正日総書記が金一族の秘密資金を管理するために1974年に創設した外貨獲得機関の「朝鮮労働党39号室」と深いつながりを持つ。NK Newsの取材に対し、北朝鮮の元幹部は39号室がOCNの売り上げの大部分をせしめていると証言している。国連安全保障理事会は昨年3月、39号室を経済制裁の対象に指定。今年6月には39号室と関連がある高麗銀行など4団体も制裁対象に加えた。
(中略)
また、NK Newsの取材によると、OCNは金融業にも乗り出している。同社は柳京商業銀行を設立し、前述の平壌の店舗にATMを設置済みだ。1万ドル以上の銀行預金残高を有する預金者には、両店舗での買い物で10%のディスカウントを受けられる特典も提供しているという。
北朝鮮の密輸ネットワーク
さらに、OCNは金融だけではなく、海運事業にも進出してきた。OCN傘下のシンガポール拠点の船舶会社は貨物船を保有する。そして、国連と米国のシンクタンクのC4ADSによって、北朝鮮の密輸ネットワークに関与していると指摘されたシースターシップス(海之星船舶管理有限公司)がOCN傘下の香港拠点の海運会社を運営しているとみられている。
北朝鮮の元幹部によると、日本製品を積んだ貨物船は、まず第三国である香港や、中国の天津に寄港する。そして、そこで別のコンテナに荷物を積み替え、平壌に近い北朝鮮の南浦港に貨物船を向かわせるという。
国連北朝鮮制裁委員会元専門家パネル委員の古川勝久氏は「OCNと金融と貨物船のリンクは非常に重要だ。シースターシップスと関係があるとは思わなかった。シースターシップスは、専門家パネルでもかなり追及した」と述べた。
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