アラビア語メディアも、他に大きなニュースがないせいか否かは不明だが。やはりまだトルコのクーデター未遂事件を大きく追いかけているので、京都の暑さの中で真剣に物事を考える気も起きないので、暑さしのぎということで、取りあえず思いつくままの感想を書いてみました。
たかだか、暑さしのぎの感想ですから、暇があって困っている方がお読みください。
・不思議な事件と何度か書いたように、今回のクーデターはクーデター側の拙劣さと、その後のエルドアンの抜く手も見せない逮捕劇が印象的で、そこだけを見れば「自作自演」と言いたくなるほどですが、今のところ自作自演という主張を裏付ける証拠は皆無だと思います。
矢張り、素直に見れば「下手なクーデター」とそれを利用した政権の軍等世俗派に対する弾圧の成功ということなのでしょうね。
余り、世界の歴史に詳しくはありませんが、失敗したクーデターとそれを利用した反対派の徹底的な弾圧という話になると、WW2末期にシュタウヘンベルグ大佐だったかの、ヒットラー暗殺失敗が思い浮かびます。
あの話も、ヒットラーの自作自演ではないが、事件を利用して、それまでナチスに対する忠誠を疑い、クーデターを企てる一味に加わっていると疑われていた軍人等の、要注意人物たちをそれこそ一網打尽にして、いわゆる「カンガルー法廷」で死刑の判決を出して、大量に処刑した事件です。
勿論、エルドアンがヒットラーと同じように血迷うとは思いませんが、何しろ6000名以上の軍人、裁判官、検察官等を即時に逮捕し、8700名かの警官を放逐するなどという離れ業は、それまでに反政府派と目される連中のリストができていて、それに基づいて対応したものに相違ないと思います。
そのうち何人が、現実にクーデターに関係したのか、はなはだ興味のあるところです。
・軍部によるクーデターが民主的に選ばれた体制により鎮圧され、大統領の呼びかけで政府を支持する大勢の市民が街頭に繰り出したことで、民主主義の勝利とされており、クーデターの失敗その物は、そう呼んでもおかしくないかと思います。
但し、問題は、そうだからと言って、今回の事件でトルコの将来が民主主義に向かうのかと言えば、残念ながら、、とてもそうとは言えない気がします。
死刑の存在そのものが民主主義否定かどうかは知りませんが、エルドアンは公然と死刑の再導入を唱えています。
そんなことよりも、最近トルコ内政では、エルドアンの独裁傾向が目立ち、特に言論に対する弾圧や、かなり前から軍のみならず,警察、司法関係者、弁護士等の反対派に対する弾圧が大きくなってきていました。
今回の事件で、当面エルドアンの国内的な権力基盤がさらに強化されたことは間違いなく、少なくとも短期的には彼を中心とする独裁的な体制が進むと見られます。
彼の念願の憲法改正さえ可能となるかもしれません。
今後のトルコでは、全ての反対派が押さえられ(野党の一致したエルドアン支持もいつまで続くか?)、言論の自由は奪われるという、いわゆる民主主義とは逆の動きになりそうです。
・民主主義との関係で、非常に気になることは、エルドアンが軍と並んで司法関係者(おそらく彼らは憲法に従った仕事をするということで世俗派が多いのでしょう)を目の敵にして、今回も多数の司法関係者(確か裁判官も含まれていたと思う)を逮捕していることです。
民主主義には、自由で公正な選挙と並んで、独立した司法制度と言論の自由が必要条件です。
選挙で選ばれただけであれば、ヒットラーだって議会の第1党の党首でした。彼が自由な言論を弾圧したことは良く知られていますが、司法についても、確か人民法廷とかいう何やら共産党みたいな名前のインチキ法廷を作り出しました。
その意味で、今回多くの司法関係者が逮捕されたことは、民主主義の擁護ということとは逆の方向でしょう。
・今回の事件で、最大の打撃を受けたのはトルコの軍でしょう。
確か、エルドアンは前にも軍等にクーデターの動きがあったとして、最高幹部等を大量に更迭しており、今回の事件では何しろ103名もの将軍、提督が逮捕されたとのことで、ある意味では軍は完全にエルドアンに抑え込まれたと言っていいでしょう。
おそらく今回の事件で軍の最高幹部が参加しなかった(彼らはクーデター派に拘束されていた模様)のは、彼ら自身がエルドアンにより任命された連中で、その意味では、軍はクーデター前からすでに牙を抜かれた存在であったのではないでしょうか?
これだけ多数の幹部が逮捕された軍が、当分軍隊としての十分な能力を発揮できないだろうことは、ソ連でスターリンのトハチェフスキー元帥以下の大量粛清で、赤軍の能力が大幅に低下し、ヒットラーのソ連進撃当初、大敗に大敗を重ねた事例があります。
まあ、現在ロシアとNATOの多少の緊張はありますが、トルコ軍が今後大規模な正規戦を戦う可能性は小さく、その役割はPKK等クルド勢力やIS等の、いわば非正規軍が相手の戦闘が主だろうと思うので、トルコ軍の能力が大きく低下しても、当面トルコにとっては重大な損失ではないかもしれません。
従来のトルコ軍がクーデターの常習犯で、民主的に選ばれた政権を倒すことが少なくなかったことから考えれば、トルコ軍の勢力の大幅減少はむしろ歓迎すべき所かもしれませんが、その没落は良し悪しに関係なしに、ww1以降のトルコ社会の大きな変更を意味するものでしょう。
イスラム色が中東で広がっている中で、ある意味では世俗派の砦であったトルコ軍の没落は、本当に良かったものか否か、大いに疑問もあるところです。
・トルコの民主主義との関係で、あまり話題にはなりませんが、今回の勝利者の一人はエルドアンと並んでその情報機関(国家情報局MIT)かもしれません。
クーデターの話が出た後で、アラビア語メディアの一部でも、クーデターの鎮圧にはMITが大きな役割を果たしたという記事を流していた記憶があります。
何しろトルコのMITは従来からトルコ内政でも隠然たる勢力を有し(と言われている)、時には軍とも軋轢を起こし(特にISとかPKK とかの取り扱いで、軍とMITの政策が異なっているという報道を2~3回目にしている)て来た存在だけに、仮に今回の事件で軍の鎮圧に大きな貢献をしたということだと、今後その勢力がさらに拡大する可能性があります。
勿論、世界中でテロの吹き荒れる今日ですから、情報機関が強くなったら悪い、などということは全くなく、おそらくそれ自体は必要なのでしょうが、トルコのMITがこれまで民主主義のために奮闘してきたという話はあまり聞かず、むしろそれを抑圧する勢力という話を聞くものですから、気になるところです。
・トルコクーデター未遂の中東に対する影響は、今後の動きを見ないと何とも言えませんが、エジプト、シリアのアサド、ヒズボッラー等がクーデターを歓迎したなどの報道がみられるところは興味のあるところです
そういえば、カタール系のaljazeeraはクーデター失敗後のトルコ情勢の報道に熱心ですが、サウディ系のal arabiya net は冷静というか割かし冷淡ですね。何か政治的背景もありそうですね
暑さの中でこんな記事を書いていたらさらに暑くなってきたので、取りあえず
たかだか、暑さしのぎの感想ですから、暇があって困っている方がお読みください。
・不思議な事件と何度か書いたように、今回のクーデターはクーデター側の拙劣さと、その後のエルドアンの抜く手も見せない逮捕劇が印象的で、そこだけを見れば「自作自演」と言いたくなるほどですが、今のところ自作自演という主張を裏付ける証拠は皆無だと思います。
矢張り、素直に見れば「下手なクーデター」とそれを利用した政権の軍等世俗派に対する弾圧の成功ということなのでしょうね。
余り、世界の歴史に詳しくはありませんが、失敗したクーデターとそれを利用した反対派の徹底的な弾圧という話になると、WW2末期にシュタウヘンベルグ大佐だったかの、ヒットラー暗殺失敗が思い浮かびます。
あの話も、ヒットラーの自作自演ではないが、事件を利用して、それまでナチスに対する忠誠を疑い、クーデターを企てる一味に加わっていると疑われていた軍人等の、要注意人物たちをそれこそ一網打尽にして、いわゆる「カンガルー法廷」で死刑の判決を出して、大量に処刑した事件です。
勿論、エルドアンがヒットラーと同じように血迷うとは思いませんが、何しろ6000名以上の軍人、裁判官、検察官等を即時に逮捕し、8700名かの警官を放逐するなどという離れ業は、それまでに反政府派と目される連中のリストができていて、それに基づいて対応したものに相違ないと思います。
そのうち何人が、現実にクーデターに関係したのか、はなはだ興味のあるところです。
・軍部によるクーデターが民主的に選ばれた体制により鎮圧され、大統領の呼びかけで政府を支持する大勢の市民が街頭に繰り出したことで、民主主義の勝利とされており、クーデターの失敗その物は、そう呼んでもおかしくないかと思います。
但し、問題は、そうだからと言って、今回の事件でトルコの将来が民主主義に向かうのかと言えば、残念ながら、、とてもそうとは言えない気がします。
死刑の存在そのものが民主主義否定かどうかは知りませんが、エルドアンは公然と死刑の再導入を唱えています。
そんなことよりも、最近トルコ内政では、エルドアンの独裁傾向が目立ち、特に言論に対する弾圧や、かなり前から軍のみならず,警察、司法関係者、弁護士等の反対派に対する弾圧が大きくなってきていました。
今回の事件で、当面エルドアンの国内的な権力基盤がさらに強化されたことは間違いなく、少なくとも短期的には彼を中心とする独裁的な体制が進むと見られます。
彼の念願の憲法改正さえ可能となるかもしれません。
今後のトルコでは、全ての反対派が押さえられ(野党の一致したエルドアン支持もいつまで続くか?)、言論の自由は奪われるという、いわゆる民主主義とは逆の動きになりそうです。
・民主主義との関係で、非常に気になることは、エルドアンが軍と並んで司法関係者(おそらく彼らは憲法に従った仕事をするということで世俗派が多いのでしょう)を目の敵にして、今回も多数の司法関係者(確か裁判官も含まれていたと思う)を逮捕していることです。
民主主義には、自由で公正な選挙と並んで、独立した司法制度と言論の自由が必要条件です。
選挙で選ばれただけであれば、ヒットラーだって議会の第1党の党首でした。彼が自由な言論を弾圧したことは良く知られていますが、司法についても、確か人民法廷とかいう何やら共産党みたいな名前のインチキ法廷を作り出しました。
その意味で、今回多くの司法関係者が逮捕されたことは、民主主義の擁護ということとは逆の方向でしょう。
・今回の事件で、最大の打撃を受けたのはトルコの軍でしょう。
確か、エルドアンは前にも軍等にクーデターの動きがあったとして、最高幹部等を大量に更迭しており、今回の事件では何しろ103名もの将軍、提督が逮捕されたとのことで、ある意味では軍は完全にエルドアンに抑え込まれたと言っていいでしょう。
おそらく今回の事件で軍の最高幹部が参加しなかった(彼らはクーデター派に拘束されていた模様)のは、彼ら自身がエルドアンにより任命された連中で、その意味では、軍はクーデター前からすでに牙を抜かれた存在であったのではないでしょうか?
これだけ多数の幹部が逮捕された軍が、当分軍隊としての十分な能力を発揮できないだろうことは、ソ連でスターリンのトハチェフスキー元帥以下の大量粛清で、赤軍の能力が大幅に低下し、ヒットラーのソ連進撃当初、大敗に大敗を重ねた事例があります。
まあ、現在ロシアとNATOの多少の緊張はありますが、トルコ軍が今後大規模な正規戦を戦う可能性は小さく、その役割はPKK等クルド勢力やIS等の、いわば非正規軍が相手の戦闘が主だろうと思うので、トルコ軍の能力が大きく低下しても、当面トルコにとっては重大な損失ではないかもしれません。
従来のトルコ軍がクーデターの常習犯で、民主的に選ばれた政権を倒すことが少なくなかったことから考えれば、トルコ軍の勢力の大幅減少はむしろ歓迎すべき所かもしれませんが、その没落は良し悪しに関係なしに、ww1以降のトルコ社会の大きな変更を意味するものでしょう。
イスラム色が中東で広がっている中で、ある意味では世俗派の砦であったトルコ軍の没落は、本当に良かったものか否か、大いに疑問もあるところです。
・トルコの民主主義との関係で、あまり話題にはなりませんが、今回の勝利者の一人はエルドアンと並んでその情報機関(国家情報局MIT)かもしれません。
クーデターの話が出た後で、アラビア語メディアの一部でも、クーデターの鎮圧にはMITが大きな役割を果たしたという記事を流していた記憶があります。
何しろトルコのMITは従来からトルコ内政でも隠然たる勢力を有し(と言われている)、時には軍とも軋轢を起こし(特にISとかPKK とかの取り扱いで、軍とMITの政策が異なっているという報道を2~3回目にしている)て来た存在だけに、仮に今回の事件で軍の鎮圧に大きな貢献をしたということだと、今後その勢力がさらに拡大する可能性があります。
勿論、世界中でテロの吹き荒れる今日ですから、情報機関が強くなったら悪い、などということは全くなく、おそらくそれ自体は必要なのでしょうが、トルコのMITがこれまで民主主義のために奮闘してきたという話はあまり聞かず、むしろそれを抑圧する勢力という話を聞くものですから、気になるところです。
・トルコクーデター未遂の中東に対する影響は、今後の動きを見ないと何とも言えませんが、エジプト、シリアのアサド、ヒズボッラー等がクーデターを歓迎したなどの報道がみられるところは興味のあるところです
そういえば、カタール系のaljazeeraはクーデター失敗後のトルコ情勢の報道に熱心ですが、サウディ系のal arabiya net は冷静というか割かし冷淡ですね。何か政治的背景もありそうですね
暑さの中でこんな記事を書いていたらさらに暑くなってきたので、取りあえず
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