「阿修羅」記事から転載。
地方自治体で首長と議会が対立したらどうなるかという、野次馬的には面白い事例が名古屋市と阿久根市で進行している。新聞記事的な表現を使えば「ナリチュウ(成り行きが注目される)」という出来事だ。この二人の市長とも、どぎつい個性の持ち主で、人によって好き嫌いが大きく分かれる人物だが、地方議会や地方役所の既得権益を切り崩そうという「ドン・キホーテ」的な戦いにあえて挑んでいるという点では評価できる。
(以下引用)
ところで、二元代表制をとる日本の地方自治制度に法律上の不備がいくつか指摘される。例えば、議会解散である。首長は議会に不信任された場合にしか、議会を解散する権限が与えられていない。つまり、最重要議案が議会に否決された場合でも、首長は議会を解散して民意を問うことができない。自ら辞任し、やり直し首長選挙で民意を問う方法もあるが、議会の構成は何ら変わらない。逆に、議会招集権を首長だけが持ち、議会側に招集権がない点も問題である。首長が議会の機能を制約する姑息な手に出ることもできるからだ。
名古屋市では河村市長が議会解散の直接請求に動く
公約実現に奮闘する首長に対し、議会が徹底抗戦し、どうにもならない状況に陥っている自治体がある。名古屋市と阿久根市である。ともに市民によるリコールの署名集めが今月中に始まるが、抱える事情は大きく異なる。
「市長選挙で市民にお約束した二大公約です。それが実現できなかったら、市民の負託に応えたことにならない」
こう力説するのは、名古屋市の河村たかし市長だ。昨年4月、市民税の10%減税と地域委員会創設を二大公約に掲げた河村氏は、圧倒的な得票(約 51万票余り)で名古屋市長に選ばれた。公約を実現すべく市役所に乗り込んだ河村氏を待ち構えていたのが、河村マニフェストに反対を叫ぶ市議会だった。
市長に賛同する市議はわずか1名で、残り74人が反対の大合唱である。こうして、議案を提出する度に修正や否決の憂き目にあい続けている。このままでは市民との約束が守れない。こう考えた河村市長は、あっと驚く大胆な策に打って出た。議会解散の直接請求(リコール)である。
約175万人にのぼる名古屋市の全有権者のうち、約36万5000人から賛同の署名が集まれば、議会解散を直接請求できる。その後に実施される住民投票で過半数の賛成が得られれば、議会解散となり、やり直し市議選が実施される。そうなった場合、河村市長は自らも辞職し、二大公約を争点にした市長と市議のダブル選挙(愛知県知事選も含めてのトリプル選挙)によって、民意を問い直す考えだ。
昨年4月の市長選挙で河村氏に投票した市民らが「ネットワーク河村市長」という団体を結成し、議会リコール運動への参加者を募る活動を進めている。署名集めを行う受任者や署名者をハガキなどで募集するもので、印刷されたハガキは約106万枚。すでに約86万枚がポスティングなどによって名古屋市民に配布され、現在、約5万3000人から返信が寄せられている。50円切手を自らが貼って返信してきたものなので、いい加減な気持ちではない。正式なリコールの署名集めは8月27日からスタートする。
河村市長は署名集め後を見据えた準備も進めている。リコール成立後のやり直し市議選への候補擁立である。「減税日本」という地域政党を立ち上げ、ここから公認や推薦の市議候補を擁立するという。候補予定者の選定が現在、進められている。
彼らが当選した場合、地域政党「減税日本」から政策的に拘束されることは3点のみ。「市民税10%減税の復活」と「地域委員会の復活」そして、現在年1600万円の議員報酬を800万円に半減することへの賛同である。他については会派拘束せず、議員個々の判断にゆだねるという。「市議会を支配しようなんてことは考えていません」(河村市長)。
http://diamond.jp/articles/-/9000?page=3
阿久根市では竹原市長に対するリコール署名が始まる
一方、「ブログ市長」で知られる鹿児島県阿久根市の竹原信一市長に対するリコール署名が、8月17日から開始される予定だ。竹原市長は2年前、市役所改革と議会改革を公約に掲げて初当選した。市職員と議員の厚遇批判を重ね、猛反発を受けた。一度、議会から不信任されたが、議会を解散。2度目の不信任で失職したものの、やり直し市長選に勝ち抜いた。その後は議会と職員を完全に敵視し、対話を拒否して徹底攻撃に出た。
今年の3月以降、「議会は不信任のままで、あらゆることに反対する」として、議会への出席そのものを拒否。職員にも議員への答弁を禁止し、従わない場合の処分を予告した。その後は議会そのものを開会せず、専決処分を乱発している。職員の夏のボーナスの半減や議員報酬の日当制(1日1万円)、固定資産税の減税(1.4%の標準税率から1.2%に減税)などである。地方自治法に明白に違反する行為ながらも罰則規定がないため、そのまま放置されている。まさに、二元代表制を否定する独裁である。
こうしたブログ市長の暴走ぶりに阿久根市民の我慢も限界となった。市長をリコールするしかないと、市民が立ち上がった。住民団体が結成され、6月から各地で説明会を開催して準備を進めていた。必要な署名数は有権者の3分の1で、約6700人分。お盆明けの8月17日にも署名集めを正式スタートさせる予定という。
一方、ブログ市長は空席が続いていた副市長ポストに、ある人物を任命した。本来、議会の議決を必要とする人事案件だが、これも専決処分で押し切った。副市長に任命されたのは、現役警察官として、警察の裏金問題を初めて実名で告発した元愛媛県警の仙波敏郎氏だ。
竹原市長は仙波副市長の進言を受け、議会招集の意向を明らかにした。開催時期は未定ながら、新たな動きといえる。
地方自治体における二元代表制のあるべき姿とは何なのか。期せずして真夏に展開されることになった2つのリコール署名運動。その内容や経緯には大きな違いがあるが、問いかけていることの本質には違いはない。問われているのは、首長と議会の双方を選ぶ住民の自治意識ではないだろうか。
地方自治体で首長と議会が対立したらどうなるかという、野次馬的には面白い事例が名古屋市と阿久根市で進行している。新聞記事的な表現を使えば「ナリチュウ(成り行きが注目される)」という出来事だ。この二人の市長とも、どぎつい個性の持ち主で、人によって好き嫌いが大きく分かれる人物だが、地方議会や地方役所の既得権益を切り崩そうという「ドン・キホーテ」的な戦いにあえて挑んでいるという点では評価できる。
(以下引用)
ところで、二元代表制をとる日本の地方自治制度に法律上の不備がいくつか指摘される。例えば、議会解散である。首長は議会に不信任された場合にしか、議会を解散する権限が与えられていない。つまり、最重要議案が議会に否決された場合でも、首長は議会を解散して民意を問うことができない。自ら辞任し、やり直し首長選挙で民意を問う方法もあるが、議会の構成は何ら変わらない。逆に、議会招集権を首長だけが持ち、議会側に招集権がない点も問題である。首長が議会の機能を制約する姑息な手に出ることもできるからだ。
名古屋市では河村市長が議会解散の直接請求に動く
公約実現に奮闘する首長に対し、議会が徹底抗戦し、どうにもならない状況に陥っている自治体がある。名古屋市と阿久根市である。ともに市民によるリコールの署名集めが今月中に始まるが、抱える事情は大きく異なる。
「市長選挙で市民にお約束した二大公約です。それが実現できなかったら、市民の負託に応えたことにならない」
こう力説するのは、名古屋市の河村たかし市長だ。昨年4月、市民税の10%減税と地域委員会創設を二大公約に掲げた河村氏は、圧倒的な得票(約 51万票余り)で名古屋市長に選ばれた。公約を実現すべく市役所に乗り込んだ河村氏を待ち構えていたのが、河村マニフェストに反対を叫ぶ市議会だった。
市長に賛同する市議はわずか1名で、残り74人が反対の大合唱である。こうして、議案を提出する度に修正や否決の憂き目にあい続けている。このままでは市民との約束が守れない。こう考えた河村市長は、あっと驚く大胆な策に打って出た。議会解散の直接請求(リコール)である。
約175万人にのぼる名古屋市の全有権者のうち、約36万5000人から賛同の署名が集まれば、議会解散を直接請求できる。その後に実施される住民投票で過半数の賛成が得られれば、議会解散となり、やり直し市議選が実施される。そうなった場合、河村市長は自らも辞職し、二大公約を争点にした市長と市議のダブル選挙(愛知県知事選も含めてのトリプル選挙)によって、民意を問い直す考えだ。
昨年4月の市長選挙で河村氏に投票した市民らが「ネットワーク河村市長」という団体を結成し、議会リコール運動への参加者を募る活動を進めている。署名集めを行う受任者や署名者をハガキなどで募集するもので、印刷されたハガキは約106万枚。すでに約86万枚がポスティングなどによって名古屋市民に配布され、現在、約5万3000人から返信が寄せられている。50円切手を自らが貼って返信してきたものなので、いい加減な気持ちではない。正式なリコールの署名集めは8月27日からスタートする。
河村市長は署名集め後を見据えた準備も進めている。リコール成立後のやり直し市議選への候補擁立である。「減税日本」という地域政党を立ち上げ、ここから公認や推薦の市議候補を擁立するという。候補予定者の選定が現在、進められている。
彼らが当選した場合、地域政党「減税日本」から政策的に拘束されることは3点のみ。「市民税10%減税の復活」と「地域委員会の復活」そして、現在年1600万円の議員報酬を800万円に半減することへの賛同である。他については会派拘束せず、議員個々の判断にゆだねるという。「市議会を支配しようなんてことは考えていません」(河村市長)。
http://diamond.jp/articles/-/9000?page=3
阿久根市では竹原市長に対するリコール署名が始まる
一方、「ブログ市長」で知られる鹿児島県阿久根市の竹原信一市長に対するリコール署名が、8月17日から開始される予定だ。竹原市長は2年前、市役所改革と議会改革を公約に掲げて初当選した。市職員と議員の厚遇批判を重ね、猛反発を受けた。一度、議会から不信任されたが、議会を解散。2度目の不信任で失職したものの、やり直し市長選に勝ち抜いた。その後は議会と職員を完全に敵視し、対話を拒否して徹底攻撃に出た。
今年の3月以降、「議会は不信任のままで、あらゆることに反対する」として、議会への出席そのものを拒否。職員にも議員への答弁を禁止し、従わない場合の処分を予告した。その後は議会そのものを開会せず、専決処分を乱発している。職員の夏のボーナスの半減や議員報酬の日当制(1日1万円)、固定資産税の減税(1.4%の標準税率から1.2%に減税)などである。地方自治法に明白に違反する行為ながらも罰則規定がないため、そのまま放置されている。まさに、二元代表制を否定する独裁である。
こうしたブログ市長の暴走ぶりに阿久根市民の我慢も限界となった。市長をリコールするしかないと、市民が立ち上がった。住民団体が結成され、6月から各地で説明会を開催して準備を進めていた。必要な署名数は有権者の3分の1で、約6700人分。お盆明けの8月17日にも署名集めを正式スタートさせる予定という。
一方、ブログ市長は空席が続いていた副市長ポストに、ある人物を任命した。本来、議会の議決を必要とする人事案件だが、これも専決処分で押し切った。副市長に任命されたのは、現役警察官として、警察の裏金問題を初めて実名で告発した元愛媛県警の仙波敏郎氏だ。
竹原市長は仙波副市長の進言を受け、議会招集の意向を明らかにした。開催時期は未定ながら、新たな動きといえる。
地方自治体における二元代表制のあるべき姿とは何なのか。期せずして真夏に展開されることになった2つのリコール署名運動。その内容や経緯には大きな違いがあるが、問いかけていることの本質には違いはない。問われているのは、首長と議会の双方を選ぶ住民の自治意識ではないだろうか。
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