“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、日本の経済状態が世界と比べて悪い意味でナンバーワンだと主張する。
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朝日新聞土曜版beで弟の故幸夫と8年間、「藤巻兄弟」(タイトルは何回か変わった)を連載した。その後は週刊朝日で、「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」(これもタイトルは変わった)を、これまた8年間連載した。
とうとうあと2回で連載が終了することになった。口の悪い友人は、「やっと連載終わるの? じゃ~、週刊朝日、買い始めようかな」などと言う(苦笑)。
「テ、ニ、ヲ、ハ」を変えながら、一貫して日本経済悲観論を書いてきたので、「もう写真とタイトルだけあればフジマキの言いたいことは想像できる」と知人に言われるまでになった。それなのにちっともXデーは来ず、「オオカミじいさん」と呼ばれる始末だ。
どうやら、私の話は賞味期限どころか消費期限が過ぎてきたようだ(苦笑)。ただし、消費期限が切れたとなると、夏ではないが、“あたる”可能性があるのにはご注意を。
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私の主張は過激だとよく言われるが、私が過激なのではない。日本の現状が過激なのだ。
個々人が政府に頼らず、自力で乗り切らなければならない段階に入った。現状を理解していないと、それも難しくなる。日本は今、残念ながら悪い意味で、あらゆる点でダントツの世界1位なのだ。
まず対GDP(国内総生産)で見た財政赤字の比率は、2018年末で237%。財政破綻(はたん)が喧伝(けんでん)されているギリシャの184%やイタリアの132%より悪く世界でビリ。税収は名目GDPが大きいほど増える。対GDPの赤字は、税収で借金を返すのがどのくらい難しいのかの指標となる。
ちなみに最近MMT理論といって、「自国通貨建てで国債を発行していれば、インフレにならない限りいくら借金を増やしても問題ない」と一部で語られている。借金でOKなら税金は徴収しなくていい。無税国家の成立となってしまう。
対GDP比の中央銀行の負債を見ても、日銀は世界で突出している。ECB(欧州中央銀行)、FRB(米連邦準備制度理事会)、BOE(イングランド銀行)の20~30%台に対し、日銀は100%をすでに超えた。私が銀行マンだった1990年代は20%以下だったのだから様変わりだ。日銀は経済規模に見合わないほど負債を膨らませ、お金を市場にばらまいている。
さらに日銀は、前回書いたとおり、長期国債や株、不動産などの市場における市場占有率が世界ダントツのトップだ。ここまで市場を席巻し、長期債市場でのように「モンスター的存在」になれば、価格はほぼ思ったとおりにコントロールできる。日銀のように市場原理が働かず損得判断以外で行動する組織が市場を牛耳るのは、資本主義経済とは呼ばない。計画経済だ。
そして、さらなるナンバーワンといえば経済成長率。残念ながら下からのナンバーワンだ。10年、20年、30年、40年、どのスパンでみてもビリ成長なのだ。私が、現状が異常だと申し上げる理由がおわかりだろうか?
こんな状態になったのは枝葉の問題ではない。なにかシステム的、根本的な間違いがあるはずだ。それを修正することが喫緊の課題だ。このトレンドを変えないと、日本は世界の三流国、いや四流国になってしまう。
最終回には、なぜ日本がこんな状態になってしまったのか、どこをどう修正すべきなのかを書く。
※週刊朝日 2019年11月29日号
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