日銀がいきなりマイナス金利を決定したようだが、それが庶民にどういう影響を与えるのか。
誰でも考えるのは、市中銀行の普通預金などにもそれが適用されるのではないか、ということだが、それを言っている人はいないのだろうか。下の記事も、企業活動や景気への影響の話ばかりで、庶民個人の生活など知らんよ、と言わんばかりだ。これが「上級国民」というものだろう。そういう人たちが経済を論じるのだから、庶民生活が向上するはずはない。目線は企業にしか向いていない。
さて、市中銀行にマイナス金利が適用されることがあるのかないのか。あるとしたら、銀行利用者はそれでも銀行に金を預けるのだろうか。
昔は、普通預金金利が6%から7%もあった、と聞くと、今の若い人には信じられないかもしれないが、私の子供時代にはそうだったのである。つまり、銀行に金を預けるだけで立派な投資になったのだ。今では、年6%のリターンのある投資は珍しいのではないか。現在の普通預金金利は1%もいかないはずだが、誰も金利など当てにせず、銀行は単なる「金の保管場所」になっている。
しかし、「預かり料」まで徴収するとなれば、多くの人が預けてある金を引き出すのではないか。それが「取り付け騒ぎ」になる可能性は無いのだろうか。どうも、私のような中学生頭脳では、今回のマイナス金利がどういう成り行きになるのか、今一つよく分からない。既にマイナス金利を導入した欧州の幾つかの国で「取り付け騒ぎ」が起こったという話は聞かないから、中央銀行のマイナス金利が市中銀行の金利に連動するわけではないのだろうか。それとも、市中銀行がマイナス金利になっても、人々は銀行に金を預け続けたのだろうか。
少なくとも、「金融資本主義」は断末魔だ、とは言えそうだ。つまり、銀行などの金融機関は死にかかっているのではないか。そもそも、今の状況では預金者から預かった金の投資先もロクに無いだろうに、なぜ銀行業界が生存していられるのか、それが不思議である。まあ、根本的には「信用創造」という、詐欺システムのおかげだろう。
マイナス金利について、智田裕一企画取材部デスクの解説です。
フジテレビ系(FNN) 1月29日(金)18時44分配信
日銀は、28日の金融政策決定会合で、日本初の「マイナス金利」導入を決めました。
「マイナス金利」とは、いったいどういうものなのか、フジテレビ企画取材部の智田裕一デスクの解説です。
民間の金融機関、銀行などは、日銀の当座預金にお金を預けている。
実際には巨額の資金だが、仮に、1億円を民間の銀行が日銀に預けるとすると、現在の金利は0.1%なので、1億にあわせれば、10万円プラスになる計算になる。
この金利がつくのは、当座預金の一部だが、日銀が今回決めたのは、0.1の金利をマイナスにする。
-0.1になるとどうなるのか。
1億円預けて、戻ってくるのは9,990万円と、お金が減ってしまうことになる。
手数料を払ってお金を預けているような状態になると、民間の銀行としては、日銀の方ばかり向いていられない、となる。
お金を、そんなに日銀に預けないで、企業などへ貸し出しをするように、お金を振り向けるのではないか、企業は設備投資などをして、経済が一気に回り出す景気回復へというシナリオだとみられる。
(うまくいくでしょうか?)
民間企業が、余ったお金を企業など、貸し出し向けに回すはずというのがシナリオなんですけれども、実際は、企業に設備投資をしようという資金の需要がないと、民間銀行も貸し出しを増やさないというのがあります。
(企業などが本当に欲しがっているかどうか、ということですね?)
実際、企業の手元にある資金というのは、今はかなりの水準に達していて、設備投資などに、二の足を踏んでいるという状況なんですね。
そうした現状で、企業が借り入れをしてまで、設備投資にお金を振り向けるかとなると、ちょっと疑問もあります。
(貸し出し疑問符がついちゃうと。本当に、企業などが欲しがっているかどうかということ?)
というのがまず1つですね。
それから貸し出すお金が増えることから、長期的には今回のマイナス金利の措置が、住宅ローンや預金などの金利の低下につながっていくということは考えられます。
ただ、それはいいんですけれども、こういうローンとかの金利が低下しても、はたして、それで消費を増やすかというと、今、なかなか消費者の節約志向が強いというのが現状で、消費の拡大につながらない可能性もあると。
それから、貸し出すときの金利が低くなっちゃうと、銀行側が、積極的にリスクを採れないということで、中小企業向けの融資なんかが逆に減っちゃうという懸念もあって、実は、今回の措置は、もろ刃の剣という面が非常に強いということになります。
最終更新:1月29日(金)18時56分
(追記)これも参考になりそうなので追記しておく。マイナス金利で債券を買っても、売る時の金利がより下がっていれば、売買益は生じる、というのが面白い。まるで「地底人と最低人の戦い(いしいひさいち)」みたいだ。下には下がいる。どこまで続くぬかるみぞ。
欧州と日本の「マイナス金利」について教えてください。
ECB(欧州中央銀行)に余剰資金を預けると手数料を取られる
欧州と日本の債券市場で話題を呼んだ「マイナス金利」は、いずれも中央銀行が関係している点では同じですが、両者の持つ意味合いは大きく異なります。
欧州のマイナス金利は、ECBが今年(2014年)6月5日の定例理事会で導入を決めた「マイナス金利政策」に端を発しています。これはユーロ圏の民間銀行が余剰資金をECBに預け入れる際の金利をマイナスにするというもので、主要先進国・地域の中央銀行としては初の試みです。導入当初の利率はマイナス0.1%に設定されましたが、その後、9月4日の定例理事会でマイナス0.2%まで引き下げられています。
ユーロ圏で景気悪化やデフレへの懸念が高まるなか、ECBは政策金利を過去最低の0.05%まで引き下げたほか、銀行の融資債権を証券化した資産担保証券(ABS)の買い入れや、企業向け融資を増やす銀行への低利資金の供給など、いわゆる包括的な金融緩和策を打ち出しています。マイナス金利政策もその一環で、ECBに余剰資金を預けるといわば手数料を取られるという状況をつくり出すことにより、銀行の資金を企業などへの貸し出しに向かわせる狙いがあります。
ただし、欧州では企業や個人の資金需要が乏しい状態が続いており、銀行が余剰資金を抱えたからといって、それが必ずしも融資に回るとは限りません。ECBが6月11日にマイナス金利政策を実施して以降、ドイツやフランス、オランダなどユーロ圏の債券市場では1カ月物や3カ月物など短期国債の利回りがマイナスに転じました。銀行がECBの預金から引き出した資金を短期国債へ大量に移し、金利低下が急速に進んだからです。ドイツでは9月に入って2年物国債でも利回りが一時マイナスとなっており、金利低下が長めの国債にも広がりつつあります。
欧州の金融機関は今秋にストレステスト(健全性審査)の結果公表を控えているほか、世界的な金融規制強化への対応も迫られており、銀行が現段階であえてリスクにつながる企業への融資を増やすことは考えにくいのが実情です。また、銀行としては価格が変動する債券に投資しておけば、その後のさらなる金利低下によって値上がり益も狙えるため、「ECBに預けたままで元本が目減りするよりは有利」という判断も働いているもようです。
日銀が初めてマイナス金利で短期国債を買い入れ
ECBによるマイナス金利政策の影響は日本にも及んでいます。7月10日に新発3カ月物短期国債の利回りが証券会社などの業者間取引で一時マイナス0.002%と、初めてマイナスをつけました。欧州の銀行などの資金がより高い金利を求めて日本の債券市場に流入し、短期国債の人気が過熱したことが主因とみられています。
しかしながら、日本で本格的にマイナス金利が注目を浴びたのは9月に入ってからのことでした。9月9日に日銀が新発3カ月物短期国債を市場から初めてマイナス金利で買い入れたのです。9日を含めて日銀は9月の1カ月間に合計4回、短期国債の買い入れオペ(公開市場操作)を行いましたが、そのすべてでマイナス金利が生じています。
欧州からの資金流入に加えて、9月期末を目前に控えた日本の銀行などが低リスクの短期国債を積み増す需要も強まり、日本の短期金融市場ではもともと金利の低下傾向が高まっていました。そこへ日銀がマイナス金利での買い入れを実施したことにより、銀行など機関投資家の間ではいわゆる「買い安心感」が広がります。市場に流通しているマイナス利回りの短期国債を買っても、日銀にそれ以上の価格で買い取ってもらえばいい、というわけです。
9月10日には新発6カ月物で、17日には新発1年物でも初めてマイナス金利での取引が成立し、日本の債券市場ではもはやマイナス金利は珍しいものではなくなってきました。市場関係者の間では、日銀による短期国債の積極的な買い入れが続くかぎり、今後も四半期末ごとに短期的な需要が高まり、マイナス金利に振れやすい状況が続くという見方が多くなっています。
日銀がマイナス金利で短期国債を買い入れると、買い入れ額が償還額を上回ることとなり、満期まで保有すると日銀には損失が発生します。損失覚悟で市場にマネーを供給するという、中央銀行としては極めて異例の措置に日銀が踏み切った背景には、物価目標の達成や景気の底上げに向けて金融緩和を徹底するという姿勢を市場に示す狙いがあるといわれています。
その意味では、欧州におけるマイナス金利の広がりがECBの本来的な目的とは別のところで進んだのに対して、日本におけるマイナス金利の常態化は日銀のなかば確信犯的な意図によるものと見ることができるでしょう。しかし、欧州も日本も債券市場が異常な状態にあることには変わりありません。それが通常の状態に戻るときにどのような影響がもたらされるのか、大いに懸念されるところですが、ここまですべてが異次元になってしまうと分からないというのが市場の本音かもしれません。
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