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<転載開始>
2023年12月14日
Phil Butler
New Eastern Outlook
ハビエル・ミレイがアルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領に勝利して数時間で、中南米第三位の経済大国はBRICS加盟申請を取り下げた。来年初めにEUに加盟予定のアルゼンチンは、フェルナンデスや多くの金融アナリストが「絶好の機会」と呼んだものを避けるだろう。ドル覇権にしがみついている他の国々と共に苦闘するアルゼンチン人は沈没するだろう。「なぜ」と疑問を呈する人にとって、理由は明白だ。
操る欧米エリート
南米第二位の経済大国にとっての、このような運命逆転に待機していたのは一体誰だろう? もちろん、覇権国アメリカだ。ハビエル・ミレイがニューヨーク生命(ブラックロック)が40%を所有する私的年金企業マキシマAFJPの首席エコノミストだったのは驚くことではない。2012年の米国証券取り引き委員会登録届け出には、NYLアドバンテージがマキシマAFJPの40%を支配していたことが示されている。ミレイが(ウクライナのゼレンスキーのように)アルゼンチン指導者として据えられて、多極世界に対する反発が具体化しつつある。
ブラックロックや他の中南米債券の機関投資家にとって、そしてドルが攻撃を受けている中、アルゼンチンがBRICSに加わるのは死への止めだったはずだ。新たなブロックの動きは、ミレイの背後にいる億万長者エドゥアルド・エウネキアンにとっても最善の利益にはなるまい。ハビエル・ミレイとブラックロックのつながりは、エウネキアン(CGCエナジー)とお仲間のパンパ・エネルギア代表者ダリオ・エプスタインを介している。ブラックロックはアルゼンチン債券も大量に保有している。エウネキアンは、アルゼンチンに移住したアルメニア人の子で、アルメニア人から「国家建設最高責任者」として知られている魅力的人物だ。
ロシア-中国軌道へのアルゼンチンの移行は、アメリカ企業投資家が懸念するウクライナの対ロシア代理戦争に負けるのと同じか、それ以上にひどいものだったはずだ。欧米金融覇権にとって、中南米諸国がいかに重要かを理解するには、国際銀行の諮問委員会が、アルゼンチン、ブラジル、ジャマイカ、メキシコ、ペルー、ウルグアイ、ニカラグアとイラクの債務再編協定を交渉した1990年代を振り返るだけでよい。元シティバンク会長ウィリアム・ローズに関するCenter for Financial Stabilityの話は、アメリカとヨーロッパの金融支配に多額投資をした人々の名を列記している。ブラックロック共同創業者バーバラ・G・ノビックは、ブラックロックを通じて新たに選出されたアルゼンチン大統領と関係があることを考えると、特に重要な意味を持っている。
国家建設の天才
2008年の金融危機後、現在の泥棒政治創設に最も貢献した人物であるローズ(現在88歳)は危機が高齢支配者の私腹を肥やし続けられるよう、早々別の金融エリートに松明を渡さなければならない。ローズは、外交政策、銀行、国際投資、エネルギー、ワシントンのシンクタンクなど、あらゆる分野の組織の役員や理事長で、米中関係全国委員会の副委員長も務めている。アルゼンチン政治と政策への彼の関与(支配)は、ブエノスアイレスの債務再編から始まり、2015年のマウリシオ・マクリ大統領の当選につながった。
ローズと金融エリート同僚は、アルゼンチン国民がBRICS連携によって現在の危機から抜け出そうとしているまさにその地点にハビエル・ミレイを置いた。アルベルト・フェルナンデスは、ロシアと他のBRICSが、イデオロギー的にも、財政的にも、中南米を支配するのを阻止しなければならなかった。マクリの下で、アルゼンチンは、アメリカと再調整し、EUと太平洋同盟と自由貿易協定を結ぶことで、英米エリートのもう一つの太守となった。マクリの祖母レア・ガルビーニが、ベニート・ムッソリーニと同盟関係にあったイタリアの有力な一族の一員だったことを覚えている人はほとんどいない。
2019年にアルゼンチンのマルティン・グスマン前経済大臣が就任して以来、IMFの国際投資家と戦った素晴らしいゲームについて議論する余地はない。言うまでもなく次期大統領ミレイから最も批判されている男は、何十年も国を動かしてきた銀行家の手からアルゼンチンが逃れられるよう時間を稼いだのだ。BRICS連携は同国経済にとって経済的アドレナリン放出だったはずだ。今南米諸国の人々は、少なくともあと4年は現状維持を期待できる。2023年、アルゼンチンは利息だけでもIMFに1,648,697,347返済したことに注意する必要がある。アルゼンチンはIMFへの返済のため、カタールから7億7500万ドルの借り入れを余儀なくされた。皮肉なことに、カタールは来年BRICSメンバーになる予定だ。
古巣に帰る
当選後のアルゼンチン大統領初訪米は、新興世界秩序に対するアルゼンチンでのアメリカの地政学的阻止行動を例証している。国家安全保障会議(NSC)の西半球担当上級部長フアン・ゴンザレスと彼がワシントンで会談したことは特に重要だ。ロイター通信は「アルゼンチンのミレイが外交政策を模索し、IMFはワシントン訪問でリセット」と報じた。アメリカのジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官がミレイと会談した事実は、ミレイ当選がアメリカと西側エリート権益のためのクーデターであることを証明したに過ぎない。さて、アルゼンチンがBRICS諸国として、新しい為替通貨を採用し、IMFに「うせろ」と命じるのを想像願いたい。同国は現在、IMFから330億7500万SDRの融資を受けている。実質GDPは-2.5%、インフレ率は122%だ。これは、長年のアメリカ投資、EUとの過去の貿易協定などで発生した。だからBRICS加盟を求めるアルベルト・フェルナンデスの論理は健全だった。アルゼンチン国民に対して欧米銀行家連中が念頭に置いているのは、人々が慣れている借金を更に増やすことだ。
結局、アルゼンチンの外交政策は、今や臆面もなく親米、親イスラエルとなり、同国最大の貿易相手国であるブラジルと中国との関係は悪化するだろう。
フィル・バトラーは政策研究者、評論家、政治学者で東ヨーロッパ専門家で「Putin’s Praetorians(プーチンの近衛兵)」という最近のベストセラーや他の本の著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2023/12/14/financial-elites-take-one-back-the-imfs-argentina-coup/
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《櫻井ジャーナル》にも同様趣旨の記事がある。
米英金融資本の中核、ブラックロックの影響下にある人物がアルゼンチン大統領に
日刊ゲンダイDIGITAL
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