健康保険証を来年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化させる政府の方針について、都内の医師や歯科医師など200人余りが「設備費用や情報漏えいリスクの負担が大きい」などとして、国に対する訴えを起こしました。医療機関が導入する義務はないと認めるよう求めています。
政府は、現在使われている健康保険証を来年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化する方針で、一部の診療所などを除いて、来月末までにマイナンバーカードで保険証を利用できるシステムを導入するよう、医療機関に義務づけています。

これについて、東京保険医協会に所属する医師と歯科医師など270人余りは「設備費用や情報漏えいリスクなどの負担が大きく、法律で定められていないのに、省令で実施を義務づけるのは憲法違反だ」と主張して、22日に東京地方裁判所に訴えを起こしました。
国に対し、
▽マイナンバーカードで健康保険の情報を確認することや、
▽実施に必要な設備などを導入する
義務がないことを認めるよう求めています。
原告の1人で、東京保険医協会の須田昭夫会長は「設備の導入には国からの補助もあるが、情報漏えいを防ぐには、高額なランニングコストがかかる。義務化に従わなければ、保険医の資格を取り消すという方針も示される中、廃業を検討する医療機関も出てきている。地域から優秀な医師が消えることになれば、大きな損失だ」としています。
運用開始の医療機関 約5割
厚生労働省によりますと、マイナンバーカードと一体化した保険証を利用するために必要なシステムの導入が義務づけられている医療機関のうち、実際に導入され、運用が始まっているのは、今月12日の時点でおよそ5割だということです。
厚生労働省は、導入ができていなくても、システムを運用する事業者と契約が済んでいる医療機関は、来月末までとなっている期限を延長することにしています。
一方、マイナンバーカードを保険証として登録している人は、今月12日時点で4687万人で、マイナンバーカードが交付されているうちの6割にあたるということです。
厚生労働省「コメント差し控える」
厚生労働省保険局医療介護連携政策課は「訴状を受け取っていないので、コメントは差し控える。一般論としては、オンラインでの資格確認は患者の健康医療情報を有効に活用し、安心安全でより良い医療の提供に資するものと考えている」とコメントしています。
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