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徽宗皇帝のブログ

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組織員の上昇志向の有無と組織の強さ・発展力
「建築エコノミスト」を自称する森山高至のブログ記事だが、ここでは建築家としてではなくエコノミストとしての分析能力の高さを見せている。いや、その辺の、株価がどうこうという御託ばかり並べている有象無象の「エコノミスト」や「経済評論家」は足元にも及ばないレベルで日本経済の問題だけでなく、日本と西洋の精神風土の違いまで論じている。
もちろん、私のような怠け者は「組織」自体が苦手であり、「組織悪」という論文を書こうかと思っているくらいだから、「組織は『世界征服』を目指せ」という、組織員に大きな負担をかけて擦り切れさすような組織論は好みではないが、日本経済の衰退のひとつに、組織体質の変質がある、という指摘は納得する。

(以下引用)
建築エコノミストTwitter mori_arch_econo


なぜ悪の組織は世界征服を目指すのか

最近の仮面ライダーシリーズ
を見ていて、気付いたんですが、
敵である悪の組織に、いわゆる、昔で言う一般戦闘員というのがいないんですね。
ああ、日本の経済状況とか企業行動は、
ここまできてたのか、、、と思いました。

私がかつて熱心に見ていたころの
仮面ライダーシリーズでは、
一般戦闘員というのは「イーっ、イーっ」としかしゃべらない、メインの怪人よりも弱いものたちで、怪人をサポートするのが役目。
弱いといっても一般大衆よりは強いんですがね、、

この戦闘員ってかつてはとても一生懸命だったんです。
ちょっと勝てないだろうと思われるライダーにも果敢に歯向かって怪人の攻撃を助けようとする。

建築エコノミスト 森山のブログ

なんでこんなに頑張れるのだろう?と考えていたんですが、
これはやはり組織というものの存在がしっかりしていたからなんだと思い至りました。

人的資源管理という経済学のジャンルがあります。
英語ではHRMヒューマンリソースマネージメントといいますが、経済学では労働経済学として位置づけられています。
これはどういう学問かといいますと、

経済上の要素には金融とか資本とか証券とか株式とか、数字や契約を扱うものばかりではなく、労働力というものがあります。
この労働力というものを数量的に扱ったり、投入資本として扱ったりできるようにする経済学上のジャンルです。

働き手を求める企業(労働需要)と働きたい労働者(労働供給)という考えを、18世紀にアダム・スミスが「国富論」で定義し、労働力というものを経済的価値要素として取り込んだこと、需要と供給の均衡点で賃金が決まるといった理論が当時は画期的だったんです。

ところが、アダム・スミス以来の労働力供給の概念では、必要なときだけ雇用する、必要がなくなったら解雇するという古典的労働経済モデル、
そこには常に労働者を雇いたい雇い主と、明日の仕事を探している労働者が無数にいる前提。
それだけでは、いわゆる季節労働者とか、派遣労働のような一定時間の拘束と労働生産量については議論できても、
働き手の労働力のスキル(品質)については検討されていなかった。
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日本型の終身雇用制度や企業内での昇進とかいった組織内部での労働者の動きについては議論できなかった。
企業、産業活動には「特殊なスキル」や「産業独特の能力の熟練」が必要です。
また、最初は「なんにもわからない新人」が、将来成長して専門職についたり管理職になったりする、その部分。
必要に応じて外部から調達すればいい、という労働市場だけでは分析できない企業内部における労働力分析の概念が必要になったんです。
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そこで、それまでの単純な需要と供給による労働市場を外部労働市場と定義し、
あらたに企業組織、産業組織の内部労働市場という概念が生まれました。
これは、1970年代という比較的最近のことなんです。
Internal Labor Markets and Manpower Analysis 「内部労働市場とマンパワー分析」というピーター・ドリンジャー(Peter Doeringer)とマイケル・ピオーレ(Michael Piore)による有名な経済論文によってです。

外部労働市場しか見ない状況では雇用者が労働者をいつでも募集し、いつでも解雇できる、労働者の量的な部分のみ、労働力の熟練、スキルの深化は考慮しない。

このことを悪の組織で考えてみれば、悪の雇い手側には、怪人需要というものがあり、明日の悪事を探している怪人候補者が無数にいる状態。
そんな単純な悪の組織モデル。

必要なときだけ怪人として雇用し、必要がなくなったら解雇する。


怪人のスキルについてはかまわないという状況になる。

それでは、怪人は育たない。
怪人というのは、初めから怪人ではない、戦闘員としての身体能力向上など怪人になるまでの教育や改造といった大きな投資が必要なんです。

一般怪人としての怪人力がそれほどでもなかった時代、いってみればヒーローものが市場価値をもっていなかった状況においては、ヒーローの側も一般人が単にマスクをかぶり、小火器で武装したただけでかまわなかった。
かつての月光仮面や怪傑ハリマオなどのころがそうですが、敵の行動も金塊を盗んだり、銀行強盗とか普通の刑事事件に毛が生えた程度の事件に堕してしまうことになる。
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実際に初期ヒーロー物では、敵といっても大したことはない、犯罪組織を彷彿とさせる黒服にシルクハットにサングラス、武器もマシンガンくらいまでで、目標意識も希薄な刹那的な犯罪行動集団、悪の家内製手工業といったものでしかなかった。

悪の組織が真に企業化されていない。

かつてのヒーロー先進国でありながら現在はヒーロー生産力が停滞している感のあるアメリカンヒーロー物においては、現在でもそういったスケールの小さい敵が一般的だと思います。世界征服とかは言っていない、あくまで個人的欲求からくる犯罪。
そのため、アメリカンヒーローのほとんどが、普通の社会人が電話ボックスや書斎の秘密の部屋でこっそり着替えをおこなってヒーローになるというパターンですよね。
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で、悪の組織においても内部労働市場のような内部怪人市場というものが定義できると思うんです。
これは、国民ヒーロー総生産GDHP(Gross Domestic Hero Product)だけでなく、
日本型企業の労働市場や雇用行動とも密接に関係しているはずなんです。

悪の組織がなぜ世界征服を目指すのか?についてなんですが
昨日、おさらいしたことは、悪が単独で好き勝手やっているような状況では、
ヒーローも小粒になってしまうという考察の流れでした。

一般戦闘員がなぜ頑張れるのかというと、悪の組織にも前回考察した内部労働市場というものが存在しているからなんです。
内部労働市場の中では、経済的に一見不明瞭なことが起きます。
例えば、業績を上げているものに報酬の全てが流れていくのではなく、一部寡少に見積もられる。そして、業績がいきなり目に見えるカタチで出せない者にもその報酬は還元される。
最初に業務スキルがない者でも、ジョブローテーションといって社内のいろんな部門に研修に送られ適性を判断する。
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だから、初めからわけのわかっていない新人の手前勝手な希望職種など考慮しない。
それらは、一見不合理。
しかし、仕事が出来る者が報酬の全てを取ってしまうのではなく、出来ない者の面倒も見る。
いきなり結果を出さなくても将来の可能性を考慮して、教育的指導を施す体制。
一般戦闘員として頑張ったそのあかつきにに怪人へのエントリーポートが設けてある。

業務スキルの熟練はOJT(オンジョブトレーニング)といって、やりながら学ぶ教育方針。失敗を先輩が許容し教える体制。
その結果としての長期雇用というものが立ち現れてきます。

つまりは、一般戦闘員が戦闘員で終わるのではなく、業績や評価次第で怪人に昇格する可能性。
怪人に昇格したあかつきには、将軍や大使などの管理職に昇格する可能性。
そして長期雇用、あるいは終身雇用。
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そんな、可能性があるから頑張れるんです。

階級社会のヨーロッパ圏では、そうはいかない。
ホワイトカラーはあらかじめ選抜されている、極端な例はフランスのカードルといわれる制度。
グランドゼコールを卒業したあらかじめ選抜された人員のみがカードル制と言われるホワイトカラー候補生として採用される。
一般戦闘員は一生一般戦闘員、有数のアカデミズムを卒業したもののみが初めから怪人として採用され幹部への昇格の可能性をもつ。
そんな社会。

初期、仮面ライダーシリーズの悪の組織で提示されたのは、そんな貴族社会とは異なる日本型の雇用システム。
バイトから社長に上り詰めた吉野家の社長、パートから社長になったブックオフの社長、そんなジャパニーズドリーム
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それが壊れつつある。
単に短期的な利益の喪失を恐れるあまりのリストラ、工場閉鎖、瞬間的な決算の向上を目指す経営方針、自社で人を育てることなく金銭によるヘッドハンティング。

仮面ライダーブラックRX以降においては、あきらかに敵に組織形態が存在しない。
何か、オカルトとかSF的設定からくる悪の種族、集団、それらは自らの延命のために人間を襲う、いわば刹那的な攻撃衝動、もしくは我々と異なる未知の種族によるカルチャー、ストーリー自体がカオス。

ショッカー、ゲルショッカー、デストロンといった組織が目指したのははっきりとした目標、「世界征服」でした。
そんな壮大な目的を掲げることで、やっと人々は頑張れる。
戦闘員も頑張れる。怪人も命を張れる。
組織の目的に大きな大義を掲げることで、はじめて個人的な収入とか地位とか、矮小な目的意識を凌駕することが出来るんです。
一戦闘員であっても、世界征服に向かって貢献できているからこそ、ライダーに立ち向かえる。
捨石になることができる。
なぜなら、組織の仲間達がいつか世界征服という目的を達成してくれるから、、

つまり、あまねく組織というのは「世界征服」を目指さなくてはならないんです。

ホンダは軽自動車による世界征服を、ソニーはトランジスタラジオによる世界征服を、松下は家電による世界征服を目指した。
だからこそ、維持される組織。怪人になることを夢見て頑張れる一般戦闘員。
世界征服というのは実はそんな悪の所業ではない。
むしろ、自分達の得意なジャンル、得意な製品、得意なスキル、それを世界的レベルまで伸ばすことこそが世界征服。
だから、もの凄い美味しい豆腐で世界征服、最高の音質のスピーカーによる世界征服、もっとも気持ちいい足裏マッサージによる世界征服、いろんな世界征服がある。

今、日本の企業が目指さなければならないのは、世界征服を企てる明らかな意思、そんなことが必要なんだなと気付かされる次第です。
世界征服とは、織田信長がとなえた「天下布武」ということだったんですね。

ちょうど、今放映中の仮面ライダーダブルにおいては、敵の組織が園咲家というただの資本家、彼らの個人的利益を追求するだけの輩がヒーローの敵。
そして怪人になるのには、ガイアメモリーというUSBメモリーを装着しさえすれば怪人化するという、派遣社員やアルバイト募集のように、企業特殊熟練もスキルアップの勉強もしなくていい世界。
ノルマと恐怖洗脳セミナーによって、営業用パンフレットを渡されるのみで商品を売って来い!といわれるそんなブラック企業的な悪。

これでは、ライダーの方も新興IT企業のようにプラグインやアイテムを量産するような、ヒーローというよりも、何か学生ベンチャーの延長線上にある存在。
そして、これらのアイテムさえ装着すれば圧倒的に怪人に勝る戦闘能力。
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次々と攻撃アイテムのプレゼンテーションを繰り返し、怪人をもてあそぶような攻撃シーン、何か昔のヒーローとはまったく異なった、東京ビッグサイトで新製品ショーを見ているような気味の悪さを感じています。

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