何ともはや、図々しい言い分だなあ、と思うのだが、面倒くさいからいちいち分析はしない。しかし、「10の理由」がすべて「イングランド側の都合、イングランド側の利益」でしかなく、「独立はスコットランドの利益にならない」という言い草もお為ごかしの詭弁でしかないことが読み取れるだろう。
セールストークだろうが新興宗教への勧誘だろうが、もう少しマシなトークをするのではないか。少なくとも「これはあなたのためです」という部分をもっと打ち出すのが普通の詐欺手法だが、このトークでは、8割以上が「スコットランド独立はイングランドにとって不利益だから私は認めない」というものだ。つまり、「あなたにこの商品を売れば、あなたは損するが、私は得をする」と正直に言って粗悪商品を売ろうとするようなものだ。こういうセールストークで買う人がいれば、よほどの阿呆だろう。
あまりに馬鹿正直すぎて、裏読みして、実はこの筆者はスコットランド独立賛成派で、こういう捻った形で独立を支援しているのではないか、と思いたくなるほどだ。
単に阿呆が書いた記事だとすれば、この記事をスコットランドの人間が読めば、イングランドの利益? 知ったことか、で終わるだろう。まあ、ロイター記事だから、イングランド(広く言えば、現在の英連邦体制および西側全体制)の利益とはユダ金の利益のことでしかないのだが。
(以下引用)
2014年9月13日 土曜日
◆コラム:スコットランド独立を支持しない「10の理由」 9月12日 John Lloyd
[11日 ロイター] - スコットランドで18日に実施される英国からの独立の是非を問う住民投票。スコットランド人やその子孫の多くは、賛成票を投じることが「格好良い」と思っているかもしれない。筆者がそれを間違いだと考える理由を以下に述べたい。
1)独立はナショナリズムの勝利を意味する。スコットランドの国家主義者たちは、欧州に広く存在する極右集団とは全くの別物であり、独立運動を引っ張るスコットランド国民党(SNP)の政策は、むしろ社会民主主義的でリベラルだ。しかし、解き放たれたナショナリズムは政策など飲み込んでしまうだろう。
2)欧州で分離主義の動きが広がる可能性がある。スペインには、独立機運がくすぶるカタルーニャ自治州とバスク自治州がある。ベルギーは、フランス語圏のワロン地域とオランダ語圏のフラマン地域に割れている。イタリアでも、ドイツ系住民の多いアルト・アディジェ州では古くから分離主義運動があり、近年は北部でも独立派がパダニアと称する地域で自治拡大を主張している。フランスのコルシカ島でも時折、暴力的な運動が起きている。スコットランド独立に大きく後押しされる形で、他の場所でも分離独立の機運は高まるだろう。そうなれば、欧州は何十年にもわたって消耗を余儀なくされる。
3)英国はかつて、アフリカ大陸やインドなど広大な地域を支配する一大帝国だった。オバマ米大統領の祖父であるケニア人のフセイン・オニャンゴ・オバマ氏は、英植民地支配に反乱した「マウマウ団」のメンバーだったとの疑いを持たれ、英国によって刑務所に入れられ、拷問も受けた。しかし、20世紀後半から21世紀になると、英国は地球上のあらゆる問題の解決に努力する側となった。紛争や環境問題、貧困、干ばつ、テロリズムなど真の世界的問題に取り組むようになった。スコットランドを失えば英国の国際的な存在感や影響力は弱まり、そうした取り組みも縮小するだろう。
4)英国は北大西洋条約機構(NATO)の主要創設メンバーであり、核保有国だ。英国の核戦力は核弾頭搭載潜水艦のみであり、それら潜水艦はすべてグラスゴー郊外にある基地を母港としている。スコットランド独立で非核化を掲げる政府が誕生し、これら核戦力を移動することになれば、多大な時間と費用がかかる。ロシアからの脅威拡大に直面するNATOは現在、加盟国に一段の負担を求めている状況でもある。
5)イスラム過激派やロシア、中国などに対する弱腰批判を国内外から受けているオバマ米政権は、欧州がより大きな責任を引き受けることを求めている。スコットランドの独立は、責任回避の例となりかねない。独立国家の地位を求める地域が国際的な厳しい責任からは逃れつつ、世界には各種脅威からの保護を求めるという悪い例を示すことになるだろう。
6)英国は「西側」の大きな部分を占めている。西側とは、市民社会や法の支配を掲げる民主主義国家グループであり、日本や韓国、オーストラリアやニュージーランドなども含む。中国の台頭やロシアからの脅威が西側の優位性を脅かすなか、英国がスコットランドを失うことは、民主主義の失敗を示唆することにさえなる。
7)1970年代にスコットランド沖で大規模油田が発見され、英国の石油のほとんどはそこから来ている。埋蔵量は依然豊富とされ、独立したスコットランドはこれら油田の完全な所有を求めるだろう。これもまた、天然資源に恵まれた地域が石油収入などを享受するために国家を離脱するという悪しき前例となる。オックスフォード大学のポール・コリアー教授はこれを「資源横取り」と呼ぶが、他の場所でも間違いなく模倣されるだろう。
8)スコットランドには大きな金融セクターがある。経営再建中のロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)でさえ、依然として世界的な大銀行だ。スコットランド独立に伴う混乱で、いくつかの大手金融機関はイングランドに拠点を移すだろう。外資系企業も対応策を講じるとみられる。英国は現在、欧州域内で最も力強く成長しているが、依然としてリセッションからの回復途上にあり、金融機関の混乱で致命的な打撃は受けないまでも、経済へのマイナス影響は免れない。
9)英国はテロの標的となっている。イスラム過激派は英国を「カリフ国家」樹立などに対する脅威だとみている。英国の治安当局者が警告するように、独立後のスコットランドが持つ小規模な治安維持組織は、過激派との戦いでは弱点とみなされるだろう。
10)最後に、礼節や共通の文化に対する言い知れぬダメージがある。国家主義運動は、スコットランド内部やスコットランドと残りの英国、特にイングランドとの間に緊張を高めた。スコットランドのナショナリストたちは、イングランドを帝国の遺物であり、自分たちが支持しなかった「上流気取りの」保守党によって動かされている国だとみなしている。独立はこうした対立構造に拍車をかける。イングランド人の多くは、スコットランド人の不平は聞き飽きたと語っている。対立が下火になるには時間がかかり、調和の中で違いを認めるという貴重な何かは失われてしまうだろう。
スコットランドの独立は、現在も、そして将来も、世界にとってプラスにはならない。しかし、われわれには投票の行方を見守ることしかできない。
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