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徽宗皇帝のブログ

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IT社会の功罪
久しぶりに「泉の波立ち」から転載。
論旨に賛同しての転載ではなく、研究材料、あるいは批判対象(かなりの暴論、無茶苦茶な内容だと思う。)としての引用だが、考える気力もないので、メモのみ。

(以下引用)最初に列記された「IT社会の功罪」の部分だけはいい。


2019年12月04日

◆ IT は人を幸福にしたか? 

 ITに夢と期待をもった時代もあったが、ITは人を幸福にしただろうか?

 ──

 ITなどのテクノロジーと人間との関係をどうするべきか……という話題で、朝日新聞にインタビュー記事があった。長文だが、読むといいだろう。
  → (シンギュラリティーにっぽん)第2部・見えないルーラー:13 平野啓一郎さん・能町みね子さんに聞く:朝日新聞

 そこにある見解は、それはそれとして、それとは別に、私なりに考えてみよう。

 ──

 かつて Windows95 が出て、パソコンが一般家庭に普及したころには、未来はコンピュータによってバラ色になると思われていた。
  ・ インターネットで世界中の情報にアクセスできる。
  ・ 世界各国の人々と会話ができる。(チャット)
  ・ 誰もがパソコンを使うようになる。1人1台。
  ・ 計算や事務などの面倒な手続きを自動実行してくれる。
  ・ 技術開発が大幅に進展して、急激に産業が発達する。
  ・ 社会全体の生産物が増えるので、人々は豊かになる。
  ・ 労働時間が減って、人々はゆとりある生活を楽しめる。
  ・ 通信手段が多彩で便利になり、人と人の関係は密接に。


 これらのうち、当たったところもあるが、当たらなかったこともある。
  ・ インターネットの発達は、想像を上回るものだった。
  ・ パソコンを使える人は、増えたあとで、減ってしまった。
  ・ パソコンよりもスマホが発達した。
  ・ 計算や事務などの仕事をする人は、リストラされた。
  ・ 社会全体の富は増えたが、富の集中で、格差が拡大した。
  ・ 非正規労働者が増えたせいで、平均給与は低下した。
  ・ 労働時間は、特に増えも減りもしなかった。
  ・ 余暇の時間は、スマホとゲームに奪われてしまった。
  ・ 一人で過ごすことが多くなり、人と人の関係は希薄に。


 まあ、光と陰があるわけだが、陰の面が予想以上に大きくなってしまったようだ。とうていバラ色の未来にはならなかった。それどころか、原発事故という、未曾有の大災難にも見舞われた。これは、大地震という自然の影響だけでなく、原発管理という人為的な面での失敗の影響も大きい。

 それでも、さまざまな医療技術が発達して、平均寿命が伸びたことはありがたいが、その代償として、高齢化社会となり、痴呆老人も増えてしまった。これじゃ、寿命が延びたことを、喜んでいいのか悪いのか。……

 ──

 一方、はっきりと「悪い」と言えることもある。少子化社会が大幅に進展したことだ。そのせいで未来の見通しは非常に暗くなってしまった。
 これは一見、ITやテクノロジーとは直接の関係がないように見える。だが、
 「スマホが普及 → 人々が孤立 → 恋愛をしない → 結婚もしない → 出生率が下がる」

 または
 「コンピュータ技術が発達した → 工場の熟練労働者が解雇された → 非正規労働者ばかりが増えた → 低賃金労働者の長時間労働 → 非婚やセックスレス → 出生率が下がる」

 という経緯をたどったのであれば、まったく無関係とも言えまい。

 ──

 もう一つ、問題がある。
 IT技術の進展があれば、経済は大幅に成長してもよさそうなものだが、世界の先進国はいずれも低成長である。少子化の進んだ日本だけがそうなのかというと、そんなことはなくて、米国や欧州も低成長である。
 さすがに日本みたいなゼロ成長の国は多くないが、日本では少子化が進んでいてゼロ成長であるということをかんがみると、どの国も平均して、1~2%ぐらいの成長率でしかないとわかる。20世紀の最後のころでも、実質成長率が3%前後はあったことが多いのに比べると、21世紀の成長率の低さは際立っている。
 これでは、「ITのせいで高成長」というよりは、「ITのせいで低成長」になってしまったようなものだ。当てはずれ。どうしてこうなった? 

 その理由として考えられるのは、「途上国の発展」だ。
 20世紀には、先進国が地球上の資源を利用して、途上国は労働力を収奪されるばかりだった。こうして途上国の労働資源をうまく利用する形で、先進国は「わが世の春」を謳歌した。
 21世紀になると、IT技術を使うことで、途上国でもかなりの生産力を持つことができるようになった。その最大の事例が中国だ。あれよあれよというまに経済力を拡大した。そのあげく、地球上の農産物や石油などの資源の、最大の消費国となってしまった。これらの価格高騰を通じて、先進国の富は、資源国や農業国に移転することになった。つまり、先進国は富を奪われた。その分、貧しくなった。(途上国は豊かになった。)

 なお、それに影響するのは、「資源の限界」だ。「資源の限界」があるがゆえに、中国などの多大な生産をするのにともなって、多大な資源消費が起こって、コストアップが起こった。このせいで、先進国は富を奪われた。

 というわけで、いくつかの理由を通じて、先進国は 20世紀のように「わが世の春」を謳歌することはできなくなった。

 ──

 ただし、人々の生活が貧しくなったことの最大の理由は、こうだろう。
 「高齢者の人口が大幅に増えたので、その生活をまかなうための社会保障費(年金・医療費・介護費)の負担が大幅に増えたから」

 これが決定的な理由だろう。これにかかる費用は、昔はほとんど無視できるぐらいに小さな割合だったのに、今ではものすごく大きな割合となっている。
 昔なら、高齢者は 70歳ぐらいで死んでしまうことが多かったので、年金や医療費の負担は社会的にもたいしたことはなかった。しかし今では平均寿命が 90歳に近い。こうなると、年金や医療費の負担は社会的に莫大となる。その負担をしなくてはならない以上、現役世代の生活が苦しくなるのは当然だろう。

 ITよりも、医療技術が進歩したせいで、人々の寿命が長くなり、そのせいで、長生きする人々の生活を支える費用が大幅に増大してしまった。だから、人々は貧しくなったのである。

 なお、一方で、その間に日本の生産年齢人口は大幅に減少しつつある。
  → 日本の生産年齢人口 (グラフ)

 ──

 最後に一言。
 「ITは人を幸福にしたか?」
 という質問に答えることは難しい。イエスの面モノーの面もあるので、一概には回答できないからだ。
 とはいえ、「今の人が昔の人よりも幸福になったか?」という点についてなら、「イエス」と言える。生活のレベルは大幅に向上したからだ。
 若い人だと、「高齢者に富を奪われて、若者は損している」というふうに不平を言う人もいる。しかしそれは、見当違いだ。高齢者が若かったころには、今よりもずっと貧しい生活が普通だった。たとえば、「三畳一間の小さな下宿」や「二人で行った横町の風呂屋」というような貧しい生活。今の若者が「風呂付きのワンルームマンション」が普通であることを考えると、隔世の感がある。「風呂付きのワンルームマンション」なんて、昔は金持ちでしか叶えられないことだった。また、パソコンだって、マッキントッシュは 100万円もした。それでいて白黒の小さな画面しかなかった。それから何十年もたって、自動車電話というものが出現したが、それは大きくてかさばるもので、自動車に搭載して使うものだった。それならせめて物価は安かったかというと、そうでもない。やたらと高関税だったせいで、牛肉やオレンジジュースは馬鹿高かった。要するに、食べ物も機械も住居費も、みんな高くて、非常に貧しい生活だった。
 しかしそれも当然だった。なぜなら、戦争直後には、日本は瓦礫の山だったからだ。そこから少しずつ復興していったのだから、戦後数十年はまだ貧しくて当然だったのである。
 その後、高速道路や橋やビルなどをたくさん作って、国土建設をしていった。そのおかげで、インフラが整備されて、日本はようやく先進国になっていった。また、会社の科学技術という「見えないインフラ」みたいなものも蓄積された。
 そして、今の若者は、それらのインフラにただ乗りして、多額の金を得る。昔なら金持ちにしかできないような豊かな生活を送る。それでいて、年寄りに感謝することはなく、「おれたちの金を高齢者に奪われて、損をする」と詰る。……そのとき、自分たちの金を生む基盤となったインフラや民間会社を整備してくれたのが誰なのかということを、すっかり忘れている。たぶん彼らは、「他人から与えられた物はすべて忘れるが、他人に与えた物はしつこく覚えている」のだろう。
 もし若者が「自分は昔の人よりも貧しくなった」と思うとしたら、それは、本当に貧しくなったからではなく、心が貧しくなったからだろう。(ただの気のせいだ。)

 ※ ただし、幸福になるように経済成長をした時期は、高度成長期だ。それ以後(1980年以後)は、幸福度はあまり上がっていない。したがって、「幸福になったか?」という問いには「イエス」と答えられるが、「ITのおかげか?」という問いには、「いや、高度成長期のおかげだ」と答えるしかなさそうだ。
 ※ 要するに、1990年にバブルが破裂したあとでは、日本はずっと不幸だった、と言えなくもない。それはまた、出生率が低下した時期でもある。もしかしたら、ITは出生率を低下させたのかも。(特に日本では。理由はゲーム中毒かもしれない。)



 [ 付記 ]
 なお、日本をもっと豊かにしたいのであれば、手っ取り早い方法は、関税率を引き下げることだ。そうすれば、農産物の価格が大幅に下がることで、生活水準が上昇するだろう。

 あと、農業への補助金を減らして、農業人口を減らすと、農業の効率化が進むので、国全体の生産効率は向上するだろう。この方法でも、生活は豊かになる。(ただし農業自給率は下がる。)








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