ちょっと常識的には理解しがたいが、ネット上に溢れている理由として、
① 兵庫県政には、代々、副知事が知事を継ぐという暗黙の取り決めがあって、そんな伝統的秩序を破った斉藤知事を攻撃する旧勢力の陰謀があった……。
② 斉藤氏を内部告発して自殺した幹部は、実は、県庁内での不倫を追求されていたのが自殺の原因だ。
③ 斉藤告発の本当の狙いは、幹部職員の天下りを廃止しようとしてきた斉藤氏を追放し、幹部の利権を保全することだった。
とか、かなり複雑な説明があって、どれが真実なのか、今の段階では私には分からない。
しかし、この選挙で最終的に多くの兵庫県民を説得できた理由は、おそらく③ということになるのだろう。天下り不正に対する県民の怒りだ。
それは井戸敏三前知事が、知事公用車をクラウンから数千万円のセンチュリーに変えた事実から、兵庫県政には地位を利用して私腹を肥やす悪弊が定着しているのではないかと県民が強く疑っていた雰囲気がもたらしたものだ。
だが、だからといって、斉藤知事のパワハラが事実無根だったというわけでもない。
正直いって、新自由主義と権威主義を掲げて、大阪万博のような無意味な浪費を正当化する維新勢力には、不快感しかないので、私としては斉藤氏を支持するつもりは。まったくない。
「改革」を高らかに叫びまくるが、具体的な改革が、人間性に対する温かい姿勢から進められているようには、とうてい思えない。
上の改革具体策を見ていても、「通り一遍」という印象しかなく、心に響く政策が感じられないのだ。
というか、私は維新勢力を支持する大阪・神戸の人々の気分が、まったく理解できない。人間よりも金儲けを優先するのが新自由主義であり、維新は、新自由主義を日本に持ち込んだ竹中平蔵が、橋下徹らと共謀して作った政党なのだ。
人間性や人間を大切にするという視点からは、維新施政などありえないことだ。
だから、斉藤元彦氏も、間違いなく「金儲けがすべて」という市場原理最優先の新自由主義思想を土台とした県政しか行わないだろう。
つまり、兵庫県でも北部地域の過疎地帯で、バスなど公共インフラも、儲からない路線を廃止し、老人たちの免許を取り上げることで、人々を過疎地帯から追放し、都会で一元管理する方向にしか進まないだろう。過疎地帯を活性化する政策は、県政改革案にまったく含まれていない。
子供たちの未来を真剣に考える知事なら、必ず過疎地域の活性化、人口増加政策を行うはずなのだ。金儲けではない、住民のための過疎対策である。
私は、斉藤氏の再選をみて、アメリカでのトランプ再選と共通するものを感じた。
トランプも、米プロテスタント福音派やユダヤ教などの圧力で、女性たちの自主的な中絶権利を禁止し、堕胎を犯罪化する旧時代の価値観を復活させている。
来年1月20日の大統領就任以降、アメリカの女性たちの人権は、大きく後退することが約束された。
それなのにアメリカの女性たちの多くが、ハリスでなくトランプを選んだ。自ら福音派の主張する封建的価値観のなかに飛び込んでゆくのだ。
いわば旧約聖書の定める倫理的世界に戻ってゆく。それが何かといえば、イランにおけるイスラムの女性弾圧の実態に端的に見えている。封建回帰といっていい。
アメリカの場合は、たぶん、民主党政権が物価上昇を放置する以上、民主党政権下で生きてゆくことは不可能と判断した人が多かったのだろう。性の人権よりも、飢餓への不安の方が大きかった。
兵庫県や大阪の人々が維新という右派勢力を支持する理由は何なのだろう?
維新の掲げる新自由主義思想というのは、人権よりも金儲けを優先させる思想なのだ。
関西地方では、人権をたいした価値ではないと考えているのだろうか? 人間が幸せになることより、金が儲かる方を選ぶのか?
私には、維新を支持する関西の人々は狂っているとしか思えない。