https://ameblo.jp/drminori/entry-12889799655.html
<転載開始>
乳腺外科医事件で無罪判決が出ました。
覚えておられるでしょうか?
もう9年前の出来事だったのですね。
衝撃の事件でした。
センセーショナルにニュースで報じられましたが、記事を読んで信じられないと思いました。
術後の回診で、しかも病室で外科医がそんなことをするなんて状況的にありえないと。
もしこれで有罪になったら術後回診は女性看護師を同席させ、一人で何もできなくなるな・・・と思いましたね。
そして乳腺外科医になる男性医師が激減するだろうと。
女性を診る診療科には女医しか居ない世界が実現するのかもしれないと。
医学会にとっても患者にとっても不利益しかないこの事件。
あまりにも犠牲が大きすぎました。
あまり報道されていませんが、この先生の息子さんが事件を苦に自死されたことをご存知でしょうか?
当時確か中学生だったと思います。
学校で色々と言われたのでしょう。
本当に悲しい出来事でした。
医師サイトに先生のコメントが掲載されていましたのでシェアしたいと思います。
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この裁判の結果については当然であり何の疑いもないと考えています。
警察と検察は、片方の言い分を過剰に信じ、客観的なものの見方ができない、そして一度決めたら振り返りや修正することの無い組織だと思いました。 まるで戦前の軍隊のようです。
これらに私の生活や仕事そして家族を奪われたこと、警察と検察に対して強く憤りを感じます。警察による尾行・不法侵入によるゴミ漁り、恫喝。長期間にわたる身柄拘束による日常からの断絶。こうした人権侵害について問題としない裁判所の態度も大きな問題だと感じます。
マスコミに対しても疑問を感じます。逮捕後に警察署入り口で待ち構えていたTVカメラ。中身をよく吟味せずに衝撃度の強い内容を、より視聴者受けするやり方で情報を垂れ流すやり方について、大きな問題であると考えます。
裁判の経過で明らかになった、科学捜査研究所による証拠改ざんや科学に則らない手法の数々。また、とても苦しい言い訳に終始した検察側証人の医師について、怒りと共に同業として恥ずかしい思いをしました。
保釈後から現在まで医師として診療することができていることについて、所属する病院スタッフと、私を信じて治療や手術をうけている患者さんの存在があります。本日午前中も多くの患者さんを診察し、診断、治療を行いました。
今回の件を前向きに捉えるなら、医療の不確実性を前提に医療者側も患者側も守られる仕組み作りが必要です。また刑事司法・その公開方法について身に染みて体験したことを言い伝える役割があるかもしれません。
今の平穏な日々が再び壊れることがないように、切に願っていますし努力を続けます。
最後に、勾留中から手紙によって私を励まし勇気付けてくれた方々、私と同様、世間の目にさらされながら支援を続けてくださった柳原病院の方々、裁判への理解と裁判費用について寄付をくださった方々、国民救援会の方々、裁判の弁護側証人として出廷くださった方々、無職だった私を状況を丸ごと飲み込んで雇ってくださった先生方、専門的思考を元に裁判を共に戦ってくれた弁護士の方々に厚くお礼を申し上げます。
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そして弁護団からのコメントも↓
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「遅すぎる無罪判決」である。
医師の通常の診療行為が2年の実刑を宣告された衝撃はいまも癒えない。起訴から8年余が経過し、異例の長期審理となった。この間の医師とそのご家族の艱難辛苦は筆舌に尽くしがたい。1日も早く、医師を刑事手続から解放すべきである。
振り返ってみれば、捜査機関は、せん妄の可能性を認識しながらも、再現性の乏しいDNA定量検査により、医師が患者の乳頭を「舐めた」と強弁し続けた。DNA抽出液、定量データを破棄し、検査記録の原本まで書き換えた。捜査官は、証拠隠滅罪にとわれることもなく、科捜研の閉ざされた検査室でいまも悪しき慣行が続いている。
また、有罪を言渡した高裁判事は、せん妄に関する出鱈目な見解を正しいものとして採用した。DNA定量検査についても、科学の本質を理解せず、「似非科学」を見分ける能力を欠いていた。差戻審も、弁護団の追加実験等の科学的証拠を多数却下し、 改ざんされた検査記録の検証を拒んだ。裁判所は、虚心坦懐に真実と向き合う熱意や覚悟が欠けている。
さらに、全国の科捜研にDNA定量検査キットを販売している科学メーカーは、キットの精度情報を開示せず、メーカーとしての社会的責任を放棄したままである。
この逆境にもかかわらず、科学を支える専門家の情熱と、医師を支える多くの個人・団体の精神的・経済的支援の下、本日、無罪判決を得た。ご支援に深く感謝する。
医師は、職業上、人体との接触が避けられない。弁護団は、「不当な有罪判決」や 「遅すぎる無罪判決」が今後も形を変えて繰り返されることを強く危惧している。
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裁判に勝っても亡くなった息子さんは帰ってきません。
あまりにも犠牲が大きすぎた事件でした。
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