今年春、ワクチン接種を驚くべき速度で進めたイスラエルは新型コロナ対策の世界的模範と目されていた。感染者は大幅に減り、接種完了者は電子的な接種証明書「グリーンパス」を提示することで屋内のコンサートやスポーツイベントに参加できるようになった。最終的には、マスク着用義務も撤廃された。
イスラエルは世界にとって、コロナ禍から抜け出す希望の光だった。
今は、もう違う。
「輝かしい手本」が「他山の石」に
イスラエルの感染者数は現在、同国が最悪期を経験した今年冬の水準に急速に近づいている。1日当たりの新規感染者数は過去2週間で2倍以上に増加。世界でも感染が最も急速に広がっている地域の1つとなっている。8月中旬には、集会および商業・娯楽施設に関する行動制限が再開された。政府はロックダウン(都市封鎖)の再発動も検討している。
輝かしい模範だったはずのイスラエルはなぜ「他山の石」に成り果てたのか。科学者による原因究明作業はまだ完了していないが、事態が一気に暗転したことでナフタリ・ベネット新首相は厳しい試練にさらされている。
一部の専門家が懸念するのは、時間の経過とともにワクチンの効果が低下した可能性だ。イスラエルでは、早期にワクチン接種を済ませた人が感染する確率が高まってきている。アメリカが9月から幅広い国民を対象に3回目のブースター接種を開始するとした決定も、こうした知見に基づいている。
デルタ株は感染力が極めて強く、ワクチンの感染予防効果が弱まったおそれがある。
イスラエルでは、ソーシャルディスタンシング(密の回避)など感染予防を目的とした行動規制が6月には解除されるようになっていた。最悪期は脱したという確信からだ。
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