◆立花孝志、NHKに敗訴
2月17日に東京地裁でNHKが立花孝志を訴えた裁判の判決があり、被告の立花孝志が支払わないと豪語していたNHK受信料2ヶ月分、4560円を支払うように命じる判決が下された。立花孝志は「勝算はあった」と言い出し、控訴する構えを見せている。
立花孝志と言えば、つい先日、「NHKから自国民を守る党」から「NHK受信料を支払わない方法を教える党」に党名を変更したばかりだが、さっそく受信料を支払わされるハメになるという高度なギャグを展開している。おまけに、裁判を不服とし、裁判長に抗議が必要だとして、3月21日投開票の千葉県知事選に合わせ、「NHKと高瀬順久裁判長をぶっ壊す党」なるものを立ち上げ、NHKと裁判所の癒着を追及すると宣言している。裁判で負けたら、裁判長を誹謗中傷する嫌がらせを始める。これはもう「司法に対するテロ」としか言いようがない。
裁判長の名誉のために書いておくが、立花孝志は直後の記者会見で、自分からNHKと契約を結んでいるし、契約を結べば受信料を支払う義務が生じることは十分に認識しているが、あえて支払っていないと述べている。この状態で「NHKに受信料を支払え」という判決が出るのは、素人の目にも明らかで、裁判所とNHKが癒着しているなどという次元ではない。立花孝志の妄想の中ではそうなっているのかもしれないが、あまりに普通すぎる判決なので、これが不当判決に見える人たちは、立花孝志の動画に影響され過ぎているに違いない。
こうした行動は、さすがに記者会見で隣に座っている弁護士が止めてやるべきではないかと思うのだが、N教党員も、N教信者たちも、立花孝志を止める者は誰もいないのが現状だ。
裁判でも勝てず、選挙では2月7日の前橋市議選で「26連敗」という金字塔を打ち立てた「NHK受信料を支払わない方法を教える党」。教えるも何も、裁判で負け、受信料をしっかり支払うところを見せつける政党になっているわけだが、いよいよ3月21日の千葉県知事選に立候補することになれば、N教党の記録を「27連敗」に伸ばした上で、300万円の供託金没収は免れないだろう。その翌週には、伊賀市議選に門田節代が立候補するといい、これまた「28連敗」は濃厚だ。
◆千葉県知事選は「立花vs平塚」の師弟対決
3月21日の千葉県知事選は、千葉市長の熊谷俊人さんや千葉県議の関政幸さんをはじめ、既に6人以上が立候補を表明している大乱戦だが、「コロナはただの風邪」を主張する「国民主権党」の平塚正幸が立候補の準備をしており、総務省に認められると思えないが、暫定的に「NHKと高瀬順久裁判長をぶっ壊す党」の立花孝志が立候補しようと言っているのだから、かなりカオスな展開になることは間違いない。
ただでも脳味噌がガッツで溢れている森田健作知事が引退し、千葉県が知性を取り戻すかどうかが問われている中で、尊師の立花孝志と、弟子の平塚正幸の「師弟対決」が実現しようとしているのだから、別の意味で注目されてしまう。
さらに、立花孝志の悪影響は止まらない。立花孝志を尊敬しているという顔面白塗りのピエロのような男が「千葉県全体を夢と魔法の国にする党」なるものを立ち上げ、立候補しようというのだ。ハナから知事になるつもりなんてないのかもしれないが、選挙でふざけることで名を上げようという人たちが続出するようになってきている。これもまた立花孝志が「300万円の供託金を使っても宣伝のためなら安い広告料だ」と言い広めてしまった影響だと考えている。少しお金はあるけど、ちっとも面白くないYouTuberが、新規ユーザー獲得のために利用するようになってしまったからだ。昨年7月の東京都知事選も「珍獣博覧会」と化していたが、千葉県知事選も似たようなイベントになってしまいそうだ。
◆「N教党」は、NHKの契約逃れの割増金に賛成
総務省は今月、NHKの受信契約を結ばずに受信料を支払っていない世帯から割増金を徴収できる制度の導入を柱とした放送法改正案をまとめ、既に自民党部会では了承されており、今月下旬に閣議決定し、今国会に提出する予定だという。
まだまだ新型コロナウイルスという世界規模の大災害の出口は見えておらず、どれだけ不況が続くかがわからない中で、この期に及んでNHKの受信料だけはしっかり徴収しようという法案を通そうというのだから、不満に思う国民はさぞかし多いはずだ。本当はNHKに受信料を支払うべきだと分かっていても、この厳しい状況を乗り切らないことには払うものも払えないという人もいるだろう。
おそらく、2019年の参院選で「NHKから国民を守る党」に貴重な1票を投じ、期待を寄せた人たちは、こんな時に立ち上がってくれるのが立花孝志だと思ったはずだ。政見放送でどれだけふざけていても、やる時はやってくれるに違いない。そんな期待があったのだ。しかし、肝心の立花孝志は今、何を言っているのか。
なんと、立花孝志は、NHKが割増金を徴収できる法案に大賛成しているどころか、嘘か本当か虚言癖なのかは知らないが、本人いわく、菅義偉総理大臣に提言したのは他ならぬ立花孝志なのだという。そう、むしろNHKと契約を結ばない国民には割増金を払わせようとする方向に動いているのだ。
そもそも立花孝志は、日頃から「NHKとの受信契約は結び、その料金を踏み倒すように」と提言している。しかし、契約には当然、「受信料を支払う」ことに同意する項目がある。そして、同意している以上、裁判を起こされたら勝ち目はない。今回、立花孝志がNHKから起こされた裁判を見れば一目瞭然である。つまり、NHKから国民を守る党のせいで、私たちはどんどんNHKにお金を払わなければならない環境を作られているのだ。
◆動けば動くほど逆効果、N教党の反社会的戦略
無能というのは、動けば動くほどマイナス方向に力が働く。つまり、何もしなければ平和だったものを、無能が動くことによって、事態が余計に悪くなってしまうという話だ。
NHKから国民を守る党は、過去にも、カーナビでテレビが映る場合の受信料について、これまではグレーゾーンだったため、誰も支払う人がいなかったのに、自分たちからNHKに対して裁判を仕掛け、返り討ちに遭って敗訴したため、カーナビでも受信料を支払わなければならなくなった。これまでグレーだったものをしっかり黒く塗りつぶす、まさに「黒歴史」を作り上げている。この裁判の影響は非常に大きく、車を持っていることを理由に受信料を支払わされる人が出るようになったほか、何より大きいのは市町村がNHKに支払う受信料の額が大きく増えたことである。公用車や救急車などに設置されているカーナビの分まで受信料を払わなければならなくなってしまったからだ。
同党の副党首で柏市議の大橋昌信は、柏市議会で「なぜ、これまで支払っていなかったカーナビの受信料を支払うことになったのか」というマヌケな質問をして、「裁判でカーナビであっても受信料を支払わなければならないという判例が出たため」という回答を引き出している。大橋昌信らがくだらない裁判を仕掛けたせいで、柏市は税金で多くのNHK受信料を支払わなければならなくなった。自分の失態をマヌケな質問で確認する始末である。
NHKから国民を守る党のせいで変わったのは、受信料だけではない。例えば、公職選挙法にも大きな影響を与えている。足立区議選に加陽麻里布を擁立した時のように、偽りの住所を記入して立候補するなどの蛮行を繰り返したため、立花孝志に影響されて、同じように居住要件をまったく満たさないのに立候補する奴が続々と現れるようになったせいで、こうした立候補に罰金や公民権停止といった罰則が与えられるようになった。世の中の規制がどんどん厳しくなっているのは、これもまたNHKから国民を守る党の蛮行が原因の一端になっているのだ。
つまり、立花孝志が何もしなければ、NHKとの受信契約を結ばなくても割増金なんて請求されることはなかっただろうに、大きな声で「受信料を支払わなければいいんだ!」なんて言ってしまうものだから、余計に払わなければならない世の中が出来上がっているのである。本当にNHKの受信料が問題だと思っている人ほど、立花孝志やNHKから国民を守る党は「百害あって一利なし」の存在なのだ。
◆支持者の期待を裏切り続ける「N教党」
かつては、立花孝志のことをうっかり信じてしまった人もいただろう。
しかし、立花孝志や「NHK受信料を支払わない方法を教える党」の面々は、今日の今日まで期待を裏切り続けて現在に至る。ワンイシュー政党として話題になり、「NHKをぶっ壊す」という、ただ一つの公約だけを掲げて当選したにもかかわらず、その肝心のNHK問題に対し、何一つまともなアプローチができていないどころか、社会に迷惑をかけてばかり。副作用ばかりで何のメリットもないような政党に、人々は呆れている状態だ。
今回の裁判のニュースを機に、立花孝志に向かって「NHK解体に専念してください」とお願いをするN教信者が現れた。すると、立花孝志は「私のどのような言動が専念していないように見えますか?」と逆ギレで反論したのだが、その直後、空気の読めない女性が「土曜日はゴルフありがとうございました」と挨拶をしている。
こんなマヌケな話があるだろうか。つい最近も、自民党の白須賀貴樹議員が麻布の高級クラブに出かけ、パパ活に勤しんでいたことを週刊誌に報じられ、自民党を離党したばかりだ。コロナ禍で緊急事態宣言が出されている最中に、今は参議院議員ではないとはいえ、国政政党の代表が女のコとゴルフに行って遊んでいる。
女のコとゴルフを楽しむお金は、一体、どこから出ているのだろうか。NHKから国民を守る党は、立花孝志に「貸付金」という形で億単位のお金を流している。そして、NHKから国民を守る党には、毎年約1億6000万円の政党交付金が税金から支払われている。同党に期待した人たちから集めた5億円以上の借金もある。しかし、それらの湯水のごとくお金が使われており、先日、森友学園に寄付した8400万円を取り返したものの、このお金が通帳から消えるのも時間の問題だ。にもかかわらず、立花孝志は「また4人で行きましょう。今から私がゴルフ場や良く(予約)しますね」と返している。女子とのゴルフにうつつを抜かしているから、NHKとの裁判に負けて、受信料を支払うハメになるのではないだろうか。
最近は、こうした現状を見て、N教信者を卒業する人たちが続々と現れており、口々に「ちだいさんの言うことが正しかった」と言い出す始末だ。いよいよN教信者までそんなことを言い出すようになったら、完全に終わりである。
◆選挙ウォッチャーの分析&考察
立花孝志の周りには、複数の弁護士が存在する。今回の裁判を担当しているのは、「アトム法律事務所」の高橋裕樹弁護士だ。その他にも、ネット問題に強いとされる唐澤貴洋弁護士、何度も懲戒を受けた過去のある村岡徹也弁護士、立花孝志を批判するツイートをするも、立花孝志に見つかって謝罪をして以来、立花孝志の手先として活躍する「ホワイト法律事務所」の山本麻白弁護士、そして、誹謗中傷裁判に熱心な福永活也弁護士など、なかなか濃いメンバーが、立花孝志から依頼を受けている。しかし、どいつもこいつも立花孝志の「司法に対するテロ」にはノータッチだ。
法廷の場で争うならともかく、法廷外で裁判長に対する嫌がらせのために党名に名前を入れ込んで知事選に立候補しようなんざ、鬼畜の所業だ。
N教信者たちは、記者会見の動画を見て、「たかが4560円で訴えるなんて、NHKに裁判を起こす基準がないことがわかった」などと喜んでいるが、もともとは立花孝志がメディアを使って不払いを宣言し、NHKに「訴えてこい」と挑発したことが原因である。自分からケンカを売って、本当に訴えられて、敗訴して、裁判長を恨む。逆恨みも甚だしい。
何度も言うが、このような人物が国政政党の代表として年間1億6000万円を受け取り、そのお金を返ってくるアテのないほぼ無職の立花孝志に貸し付けることで、立花孝志は緊急事態宣言中にゴルフを楽しめる身分を維持しているのである。
<取材・文・写真/石渡智大>
【石渡智大】
普段は選挙ウォッチャーちだいとして日本中の選挙を追いかけ、取材。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどを「チダイズム」にて公開中
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