マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2024/08/post-32bc7c.html
<転載開始>
2024年8月12日
Moon of Alabama

 ウクライナ軍によるロシア領クルスク州侵攻は7日目に停止したようだ。前線は固まりつつあり、砲撃と爆撃の優位性を利用しロシア側はウクライナ軍を押し返している。

 ウクライナの3個旅団と、前線の別の場所に派遣された旅団から派遣された多数の大隊が関与している。第80空挺旅団と第82空挺旅団が主力部隊だ。彼らは一部イギリスとドイツで訓練を受けており、欧米諸国の装備を使用している。第22機械化旅団が3番目の主要部隊だ。そして、他の様々な旅団から5~10個大隊が参加している。

 この作戦についてエコノミスト誌はスミの病院から下記のように報じているアーカイブ)。
 
ウクライナ負傷者の話から、作戦は決して楽なことではなく、危険が伴ったことがうかがえる。病棟は土、血、古い汗など負傷者の臭いで充満している。アルミ製火傷用包帯が廊下に並んでいる。中庭には、激しく煙を吸い、頭からつま先まで包帯でミイラのように巻かれた患者もいる。第33旅団の28歳の空挺兵アンゴルはクリスマスツリーのようだ。彼の左腕は固定装置で動かせない。チューブ、バッグ、ワイヤーが体から突き出ている。運が尽きたとき、彼はロシアに30キロほど入っていた。自分を襲ったのが砲撃だったのか爆弾だったのか彼にはわからない。もしかしたら友軍の誤爆だったかもしれない。そういうことは多々起きた。彼が覚えているのは、地面に倒れて、負傷者を意味する番号「300」を叫んだことだけだ。それまでロシア軍は敗走しており、できるだけ素早く装備や弾薬を放棄していたと彼は主張している。
 ロシア国境警備隊が逃亡を決意したのは驚くべきことではない。彼らの大半は徴兵兵で、装甲車の猛攻に耐えられるほど武装していなかった。
ウクライナの作戦には、綿密に計画された側面もあるようだ。作戦上の安全確保のため、戦争の重要要素、奇襲作戦をとった。「最も戦闘態勢の整った部隊を国境の最も弱い地点に我々は派遣した」と、この地域に派遣された参謀筋は語る。「徴兵された兵士は空挺部隊と対峙して、あっさり降伏した」。だが作戦の他の側面は、準備に急いたことを示している。この記事で引用されている三人の兵士は、わずか一日前に通知され、東部の緊張の高まった前線から、休息も取らず引き抜かれた。
 ウクライナ軍は、残っていた最良部隊と、残った中からかき集めた兵力で進軍した。国境に移動したロシア軍部隊は、ウクライナ軍の動きを止めた。辺境の町への道路にウクライナ軍が送り込んだ機動偵察小隊は、ほとんど排除された。一部のウクライナ寄り地図で見られた大きな前進は、今や遙かに小さく見える。約30の小さな集落は占領されたが、かつて6,000人の住民がいた地方行政の中心地スジャさえ、完全制圧はされていない。

 本日、ベルゴグラード地域のコロティロフカ検問所でウクライナ軍が国境を越えようとしたが失敗し、関与したウクライナ軍部隊は損害を被った

 こうしてウクライナ軍の猛攻をロシアはほぼ封じ込めた。今やこの作戦は、かつて南部戦線でクリンキーがそうだったような新たな肉挽き機になっている。作戦上孤立した消耗戦場となり、ウクライナ軍は余裕もない予備兵力を続々投入するか、木々の端から端へと撤退することになるだろう。

 ロシアのドローンと爆撃機が現在戦闘を主導している。ウクライナ軍侵攻によりウクライナ装甲装備の多くが失われたとロシア国防省は主張している。(機械翻訳)
 
クルスク地域での戦闘中、敵は合計1,610人の兵士、32両の戦車、23台の装甲兵員輸送車、17台の歩兵戦闘車、136台の装甲戦闘車、47台の車両、4基の対空ミサイルシステム、多連装ロケット砲、13門の野砲を失った。
 ウクライナ側は作戦が行き詰まる危険性を認識していた。エコノミスト誌は下記のように書いている。
 
ウクライナは、いかなる意味においても、本気で陣地を強化しているようには見えない。野心的すぎる狙いに警告する現地の諺「我々の子牛が狼を呼ぶ」を引用して安全保障筋は警告している。...2022年後半、ウクライナがハリコフ州の大部分を迅速に奪還するのに成功したのとクルスク侵攻を比較することに情報筋は警告している。

。  今やロシア軍は戦争をより真剣に受け止めていると彼は言う。「危険なのは、我々が罠に落ちて、ロシアに殲滅されることだ」
 まさにこれが今起きていることだと私には思える。これは完全に予見可能だった。

 だが、ウクライナ側の士気を高めたという点で、この作戦は一時的には成功だ。
 
既に何十人もの仲間を殺したこの危険な作戦に少しも後悔していないと疲労し、汚れ、困憊した兵士たちは語る。彼らはすぐにも作戦に復帰したがっている。「我々の久々の動きだ」とアンゴルは言う。「まるで虎になった気分だ」
 ウクライナにとって一週間続いた朗報の嵐は今や終わりを迎えた。既に旅団一個分の装備を失った関係部隊は、更に縮小するだろう。彼らに代わる者はいない。ドンバスでは、弱体化し撤退するウクライナ部隊に対する攻勢をロシア軍が続けている。ニューヨーク、チャシフ・ヤール、トレツクは間もなく占領されるだろう。

 やがて「目的は何だったのか」という疑問がキーウで投げかけられるだろうが、誰もそれにうまく答えられるまい。タイムズ紙が書いている通り(アーカイブ)この絶望的作戦を実行するよう、あちこちから圧力がかかっていたにもかかわらず、この件でウクライナ総司令官シルスキー将軍は、辞任しなければならくなるかもしれない。
 
この作戦にはゼレンスキー大統領の個人的痕跡が随所にある。夏攻勢を開始するよう大統領が軍首脳に圧力をかけていることは何ヶ月も前からキーウでは公然の秘密だった。

 ウクライナの人的資源と資源の問題を考慮して軍は躊躇していた。しかしウクライナが戦争に負けているという見方を覆そうとゼレンスキーは必死だ。

 クルスク作戦が戦争継続に役立つはずで、ロシアが徐々に敗北し、ウクライナが勝利するとゼレンスキーは信じていた。本日、新たな動員は行わないとロシア下院は発表した。動員とその後の騒乱こそ、ゼレンスキーが望んでいたことだ。クルスク侵攻によるロシア国内での反乱は起こらず、ナショナリズムが高まる一方だ。

 一週間にわたる作戦は、長期的状況を変えるには明らかに不十分だった。この作戦がキーウや他の地域でもたらした高揚感は、間もなく深刻な意気消沈に席を譲るだろう。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/08/ukraine-sitrep-the-kursk-incursion-was-stopped.html#more