このどこが「コミュニズム」なんだよ、と思うのだが、どちらかと言えばアナーキズムの一種で、政府の規制や束縛をできるだけ無くそうという方向性は、左翼どころか「新自由主義」そのものであって、それをコミュニズムというのは看板詐欺だと思う。まあ、新自由主義が「経済面での無政府主義、あるいは政府の骨抜きと恣意的私的利用」なら、ユーロコミュニズムは「倫理面での社会(体制)破壊活動」で、体制破壊(反体制)という面だけを見れば左翼的と言えるのかもしれない。
(以下引用)
ユーロコミュニズム(Eurocommunism)は、中ソ対立などにより国際共産主義運動が多様化する中で1970年代に西ヨーロッパ(主にフランス、イタリア、スペイン)の共産党で趨勢となった共産主義の一潮流。暴力革命路線の放棄、プロレタリア独裁論の破棄、党内の民主集中制と分派禁止規定を廃止した[1]。
It began a new movement – Eurocommunism, which renounced Soviet methods but kept the key aims of transforming our society.
セックス、ドラッグ、ロック、離婚、同性愛etc.といったものを好意的に受け入れる風潮の中で、古いタイプのスターリニストの労働党は、New Labour(新しい労働党)へと変化していった。
彼らはモダンな、ポスト1968のファンキーなマルキストとして、国境のない、ヨーロッパコミュニティの中で文化とセックスの革命を信じていた、云々ときて、あとはイギリスの文化的、政治的状況の中の固有名詞を出して議論を進めている。
このあたりは、英語版のwikiもうまくまとまってて興味深い。
ユーロコミュニズムは、民主的共産主義またはネオ共産主義とも呼ばれる
西ヨーロッパのさまざまな共産党における1970年代と1980年代の修正主義的傾向で、西ヨーロッパにより適した社会変革の理論と実践を発展させたと主張する
冷戦中、彼らはソビエト連邦とソビエト共産党の影響力を弱体化させようとした
イタリア、スペイン、フランスで特に顕著だった
Eurocommunism, also referred to as democratic communism or neocommunism, was a revisionist trend in the 1970s and 1980s within various Western European communist parties which said they had developed a theory and practice of social transformation more relevant for Western Europe. During the Cold War, they sought to undermine the influence of the Soviet Union and the Communist Party of the Soviet Union. It was especially prominent in Italy, Spain, and France.[1]
要するに、
世界中の先進国のほとんどに存在していていた共産主義を目指すことを主意とする政党に、1968年のプラハの春を機会にソ連批判をさせて、手切れとさせる。
それ以降は、共産主義と名乗ってもいいが、内実は資本主義との戦いとかいうんじゃなくて、セックスとかドラッグを求める自由とか、離婚の自由、差別批判、同性愛礼賛、みたいなことを通じた、いうところの文化革命路線を進ませる。文化的マルクス主義とか言われるのもこのへんなんでしょう。
というテーマが存在し、それに従って各国の左派政党はそのように変化した。
ということだろうか?
※ 日本の共産党はかなり最近まで左翼要素の濃い集団だったと思う。日本の場合ユーロコミュニズムを担ったのは、むしろ新左翼だろうと思われる。メディアとかに出てる人たちの言説はしばしばまさにユーロコミュニズム的。宮台とか山口二郎とかみたいなタイプ、あるいは佐高信、優しいサヨクの島田雅彦なんかもそんな感じがする。忘れちゃいけない加藤紘一などはブレアを称賛してた。
総じてこれらの人たちは共産党嫌い。これは、ユーロコミュニズム(あるいは、彼らが「欧米のリベラル」と考えるそれ)にとって、社会構造とか貧富をクラスと結びつけて語ることを止めない日本の共産党は古くて、全体主義みたいで、ソ連みたいで、計画経済しそうで、下からの民主主義じゃなくて、敵なんだろうと思う。
私は別にソ連を擁護すべきだったと言っているのではない。そうではなくて、単に別の政体として共存すべきだっただろうと思ってる。あっちの体制が悪いのならそのうち崩れるだろうと放置すればよい。
そして、いずれにしてもソ連を敵視していたステルス帝国頭脳部(あるいは西側首脳部でも、西側のエリートでも)が敷いた路線を行く運動に、一体どんな意味やら重要性があるのだろうか? とそこを指摘したい。唖然としつつ。
で、その結果が、Black Lives Matterには熱心だが、シリアの惨劇にも、リビアの惨劇にも、イエメンの惨殺にも、あるいはまた、ウクライナでナチ残党をたててクーデターを起こす西側諸国などといった事態に何も対応できない、労働運動にも労働法制にも大した興味のない有象無象がそこにいるという話なんだな、とただそう思う。
■ どっちも妄想派だった
上のようにして出来上がったそれは、ある意味偽の運動だったわけだから、政治的事情が代われば下火になっていく可能性は大きい。また、この冗談のような偽善を多くの人が長期間好むとも思われない。
だがしかし、ここに問題がある。
西側社会は、一方で、ソ連解体を目指し左派を弱毒化してヒッピー変容させつつ、他方では、同時期から、戦後一貫して存在した反共主義者にエバンジェリカル(福音派)を大量動員してブーストさせている。
ということは、ユーロコミュニズム変容の極悪リベラルが沈んだ後には、共産主義者がいなくなれば世界は繁栄するとでも思ってるかのようなエバンジェリカル右派が残る。
どっちに転んでも理性的な議論など夢のまた夢。
また、ユーロコミュニズムの一つの達成品がEUであろうと思われるので、ヨーロッパ方面の精神の健全化もまぁ相当期間期待できない。
両方ともこの上にFEDなどの金融屋が被ってるわけだしね。
■ 日本の「成功例」
で、冒頭に戻って、日本では8年間安倍を批判してやまない人たちが大量にいたわけだけど、でも、一度として国際問題が大きな議題になったことはなかった。この激動期に。
この意味は、右は既に親米路線が確定していたところに、左もまたユーロコミュニズムを下敷きにした反ソ/反露路線を踏襲し、これで結構でございますと言ったようなものだろうと思う。(反中はオプション)
日本の特色は、ヨーロッパとは異なる事情によって、概ね新左翼が担ったユーロコミュニズムでも日本共産党でもないが、全体に、なんとなくこの体制でよいのかしら?という人たちがかなり多かったところだと思う。(前のカルト体制への疑義、反抗)
多分、だからこそ、右から左からかき集めた理念のない民主党による革命もどきに期待した人々があれだけいたということなんだろうと思う。
そこが崩れて、一回変化期待の大きさに基づく「蒸気」のようなものも出たことだし、これで米+欧との完全協調路線は確実になった、という感じではなかろうか。
私にとって喜びではないが、これは西側ステルス帝国にとって成功だと思う。
しかしもちろん、繰り返しになるけどユーロコミュニズムを基本とした左というのは嘘に基づく歴史修正主義路線なので、これが安定的に続く保証はない。また、この嘘には軍事的均衡への無理解も加わるのでなおさら危うい。
こういうことを平気で歓迎してるのがリベラル勢。やったのはクリントン政権。
こういうのも認められない人多いでしょ? 久米宏は、ノルマンディー作戦がヒトラーを倒した分水嶺だと言ってた。
「ホロコースト」物語も半分嘘のお話。ソ連は倒すべき敵なので、ソ連圏内の被害者を認めずに、場所が特定されない奇妙な物語になっていた。
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