https://indeep.jp/fantasy-stage-of-a-ceasefire/
<転載開始>
telegraph.co.uk
蒙昧帝国と合理帝国
日本でも、あるいは世界的にも、一般的なメディアや一部の人たちは、「トランプ大統領がロシアとウクライナを終戦を導く」というような蜃気楼を報じたり述べたりしています。
しかし、ほとんど何の思考をしなくとも、
「それはない」
わけです。
少なくとも、現在のトランプ氏のアプローチで、ロシアが合意する可能性はまったくないわけで、このことについては、以前から書くこともありましたけれど、最近、著名なジャーナリストであり地政学アナリストのペペ・エスコバル氏という方が、
「プーチン大統領が停戦歌舞伎の仮面を剥ぐ」
という「歌舞伎」などという言葉を使った、やや愉快なタイトルの文章を寄稿していました。
これを最初にご紹介させていただこうと思いますが、断っておきますと、このペペ・エスコバルさんの文章というのか表現は、しばしば難解で、場合によっては、「何を言ってんだかちょっとわからない」という部分もあります。
そういう部分に関しては、なるべく、カッコで説明させていただきますけれど、こちらの解釈が間違っている部分もあるかもしれません。
プーチン大統領が「停戦歌舞伎」の仮面を剥ぐ
Escobar: Putin Peels Off The Masks Of The Ceasefire Kabuki
Pepe Escobar 2025/03/16
ペペ・エスコバル氏
第二次トランプ・チームがトレードマークの大げさな表現で発表した「停戦」は、安っぽいマトリョーシカの中に隠された安っぽい歌舞伎と見るべきだ。
次々とマスクを剥がしていくと、マトリョーシカの中に最後に立っていたのは、目覚めた女装の小さなダンサー、女装したミンスク3 (失敗に終わった 2022年の米ロ協議での停戦合意)だった。
さあ、「停戦」の再開だ。プーチン大統領は、特別軍事作戦開始以来 2度目の制服姿で、真剣な表情でクルスクの最前線を訪問した。
モスクワでのルカシェンコ(ベラルーシ大統領)との会談後のプーチン大統領の記者会見は、実際の引き剥がし作戦の合図だった。
停戦? プーチン氏は、我々はそれを支持すると言いながら、そして、系統的に、外交的に、ロシア大統領はカラヴァッジョ (バロック期のイタリア人画家)の絵画を演じるかのように、アメリカの策略のあらゆる地政学的、軍事的詳細を徹底的に明暗法で分析した。これは完璧な芸術的解体だ。
最終結果として、ボールは再びドナルド・トランプ氏の手に渡った。ちなみに、改革が進行中の混沌帝国のこのリーダーはカードは持っていない。
外交的ニュアンスの芸術
最高レベルの外交とはそういうものだ。ルビオ氏(アメリカ国務長官)のような田舎者のアメリカ人には手の届かないものだ。
プーチン大統領は「紛争解決に多大な注意を払ってくれた米国大統領、トランプ氏」に厚く感謝の意を表した。
そしてプーチン大統領は決定的な発言をした。
「この停戦は長期的な平和につながり、この危機の当初の原因を排除するはずだ」
ロシアにとって、少なくとも 2024年6月以降広く知られている重要な要請は満たされなければならないだろう。
結局のところ、戦場で戦争に勝利しているのはロシアであり、米国でも、すでに分裂している NATO でも、ましてやウクライナでもない。
プーチン大統領は停戦について「我々は賛成だ」と断固とした態度を示した。
しかし、微妙な違いがある。繰り返しになるが、これこそ外交と呼ばれるものだ。検証から始める。
プーチン氏は以下のように述べた。おそらく彼の論理の核心だ。
「この(停戦の) 30日間はどのように使われるのだろうか? ウクライナでの強制動員を継続するためなのか? より多くの武器供給を受けるためなのか? 新たに動員された部隊を訓練するためなのか? それとも、何も行われないのだろうか?」
「管理と検証の問題はどのように解決されるのだろうか? このようなことが起こらないことをどのように保証できるのだろうか? 管理はどのように組織化されるのだろうか?」
「皆さんが常識レベルで理解してくれることを願っている。これらはすべて深刻な問題なのだ」
ところが、狂気のロシア嫌いに陥った EU 政権はこの「常識」を理解していない。
プーチン大統領は再び外交的に「米国のパートナーと協力する必要がある。トランプ大統領と話をするかもしれない」と述べた。
すぐにまた電話がかかってくるだろう。
一方、常に大言壮語の雲の上を漂っているトランプ氏は、停戦の歌舞伎に対するプーチン氏の詳細な回答が出る前から、すでに交渉に「影響力」を行使していた。
トランプ大統領はロシアの石油、ガス、銀行に対する制裁を強化し、ロシアへの石油販売免除を今週失効させた。
つまり、実際には、EU の属国やその他のさまざまな「同盟国」は、米国の制裁を逃れることなく、ロシアの石油を購入できなくなっているのだ。
それ以前にも、ウクライナの犯罪組織の一部は「平和」計画の一環としてロシアへのさらなる制裁を懇願していた。トランプ氏は明らかに基本的な外交をまたも無視して、それに同意した。
ドンバスからクルスクまでの戦場で実際に勝っている戦争を終わらせようとしたことで制裁を受ける「停戦 / 平和プロセス」をロシアが支持するなどと信じるのは、IQ がゼロ以下の人間だけだろう。
制裁は、あり得る米ロ交渉の中心に据えられるべきだろう。
少なくとも数千億ドルの一部は最初から撤回されなければならない。ロシアの資産約 3000億ドル(約 45兆円)が「押収」され(つまり盗まれた)、そのほとんどはブリュッセルに保管されている。
我、併合する、故に我あり
プーチン大統領が描いたカラヴァッジョの停戦絵画は、彼が、悪名高い激怒者のトランプ大統領を敵に回したり、米ロ間の緊張緩和の可能性を危険にさらしたりすることに全く興味がないことを露呈している。
キエフ(ウクライナ)とユーロチワワ(欧州の国々)に関しては、彼らはテーブルの上にはおらず、メニューに残っているだけだ。
予想通り、西側諸国の主流マスコミは、汚染されていない海岸に押し寄せる有毒な残骸の波のように、プーチン大統領が停戦案に対して「よし」と言ったのは、停戦に関するあらゆる交渉をつぶす前兆だと報道している。
これらのメディアの残骸は、たとえそれが空を突き抜ける彗星であったとしても、「外交」の意味を理解しないだろう。
イギリスがアメリカとウクライナを「支援」して停戦の策略を練ったという報道については、それはモンティ・パイソン (かつての英国の著名なコメディグループ)の安っぽいコントにも値しない。
英国の支配階級、MI6 (英国の情報機関)、彼らのメディアやシンクタンクは、いかなる交渉も嫌悪している。
彼らはロシアと直接正面から戦争をしており、彼らのプランA(プランBはない)は変わらない。ロシアに「戦略的敗北」を与えることだけだ。
問題の核心は黒海だ。ロシアのタス通信に説明されたウラジミール・カラセフ氏の分析は正確だった。
「英国はすでにオデッサ市に進攻しており、同市は重要な拠点とみなされている。英国の特殊部隊がそこに深く関与している。英国はオデッサに海軍基地を建設したいという願望を隠していない」
オデッサは、スターマー(英国首相)とキエフのスウェットシャツの男(ゼレンスキー氏)の間で締結された怪しげで完全に違法な 100年協定に基づいて、理論的にはすでに英国に引き渡されたウクライナの膨大な資源の一部だ。
怪しい取引とその裏で行われた取引の脚注によれば、ゼレンスキー氏はすでに鉱物、原子力発電所、地下ガス貯蔵施設、主要港(オデッサを含む)、水力発電所など、あらゆる管理権を英国に譲渡していた。
進行中の鉱物 / 希土類元素をめぐる物語、あるいはその残されたものについて、英国は米国と激しく直接競争している。
CIA は明らかに事情を知っている。この事態はすぐに非常に醜いものになるだろう。
モスクワの情報筋の間では、プーチン大統領が 2021年12月にワシントンに提出し、回答がなかったロシアの「安全保障の不可分性」の要求を絶対に犠牲にしないだろうという真剣な議論が繰り広げられている。
NATO がそれに同意することは当然ないだろう。最終決定は大統領が下すことになる。
そして、NATO の究極的に哀れな役割を知ることに我々は至る。
それは、NATO 事務総長である哀れなオランダ人のスケープゴート、トゥッティ・フルッティ・オルッティ氏(NATO事務総長のマルク・ルッテ氏のこと。「トゥッティ・フルッティ」はイタリア語で「すべて果物」という意味)の目の前で、NATO 加盟国であるカナダとグリーンランドの併合に向けた動きを大統領執務室で嬉々として拡大していることで如実に示された。
その形のない古くなったオランダ産ゴーダチーズの塊 (NATO事務総長のことだと思います)は、併合について一言も発しないどころか、トランプ氏の前では赤ん坊のように輝いていた。
これが NATO の本質だ。彼の支配する声が彼の望むように支配し、彼が何を決定しようとも、加盟国の「安全」や領土保全さえも危険にさらされる可能性がある。
だから、砂場での遊びに戻ろう。その遊び場は、次のプーチン・トランプ電話会談だ。
ここまでです。
いくつかわかりにくい部分があることを別にしても、
「プーチン大統領の見事な外交策略」
について書かれています。
これは、ロシアの国内報道でも同じような感じで伝えられていまして、3月16日のロシア国営 RT は「休戦か挑戦か?プーチン氏が停戦ゲームを拒否した理由」というタイトルの記事を引用していまして、その見出しは、
「ロシア大統領はいかにして巧妙に仕掛けられた罠を回避したのか」
でした。
そこから抜粋しますと、以下のようにあります。
RTの記事より
停戦が機能するには、3月11日の米国とウクライナのあいまいな合意ほど中身のないものであってはならない。明確な約束のない性急な合意は濫用される恐れがある。
しかし、トランプ氏はこうした細かい点を気にしないかもしれない。
彼の主な関心は、不安定な支持率を補強するために政治的ポイントを稼ぐことだ。しかし、一時的な停戦ではなく永続的な解決を求めるロシアにとっては、中身は見た目よりはるかに重要だ。
実行可能な停戦には、 2つの必須条件を満たす必要がある。
第一に、プーチン大統領がすでに述べたように、相手側が停戦を自らの利益のために利用しないという確固たる保証が含まれなければならない。
第二に、停戦は信頼醸成措置として機能し、単に時間を稼ぐためではなく、和平プロセスを前進させるというウクライナの真摯な決意を反映するものでなければならない。
トランプ氏の提案は、確かにあまりにも曖昧で、しかも、トランプ氏はロシアに制裁を課し続けているわけで、この状態でプーチン大統領がこんな停戦案に合意すると信じることは、ペペ・エスコバルさんの文章からお借りすれば、
> 実際に勝っている戦争を終わらせようとしたことで制裁を受ける「停戦 / 平和プロセス」をロシアが支持するなどと信じるのは、IQ がゼロ以下の人間だけだろう。
ということになります。
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