(英エコノミスト誌 2021年9月25日号)
小売大手は今、売り場に殺到する消費者と品不足に対処しなければならない。
米国では最近、大型スーパーの売り場でまごつくことがあっても大目に見てもらえるかもしれない。
ある角度から見ると、米国的な大量消費主義が余すところなく展開されており、品物をあふれんばかりに積み込んだカートの舵取りに手間取る買い物客が大勢いる。
経済指標を見ても、8月の小売売上高(季節調整済み)は自動車を除くベースで前月比1.8%増加し、今年3月以来の高い伸びを示している。
しかし、ほかの角度から見る風景は明らかに非米国的だ。
恐ろしいことに、普段ならお気に入りのビスケットや洗剤、トイレットペーパーがずらりと並んでいる棚が、空っぽになっていることがある。
新型コロナウイルスのデルタ型変異株の流行を受けて世界各地の工場や港が閉鎖され、サプライチェーンが途切れてしまったせいだ。
パンデミックが始まった当初には、パニック買いのために店舗から品物が消える場面もあった。今回はそれとは異なり、消費者は大抵、代替商品を買うことができる。
だが、この品不足は、計5兆6000億ドルの年間売上高を誇る米国小売業界がまだ通常モードに戻っていないことを暗示している。
また、供給ショックだけでも大変なのに、小売業界は戻ってきた買い物客――スマホの画面の上で指を動かしていた消費者が、以前のように売り場でショッピングカートを動かしたがっている――の需要にも再び対応しなければならない。
パンデミックによる最初の劇的変化を乗り越えたと思いきや、新たな苦労を強いられている格好だ。
供給網のボトルネックと人手不足
商品供給のボトルネックの話から始めよう。
中国から米カリフォルニアに至る航路の港が混雑しているために、海上貨物運賃が記録的な水準に高騰している。
米国内のトラック輸送運賃も、オンラインで購入した商品の宅配需要急増のせいで上昇している。
米アップルの「iPhone(アイフォーン)」のような高額格品であれば大した問題にはならないが、大手小売店が取り扱うような低価格の品物ではそうはいかない。
販売価格に占める運賃の割合は馬鹿にならないのだ。米小売最大手のウォルマートに至っては、商品の安定供給のために貨物船を直接チャーターしている。
小売各社は人手不足にも直面している。
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