第8師団が入る陸上自衛隊北熊本駐屯地＝熊本市北区で2023年4月7日午前10時17分、中村園子撮影

　沖縄県・宮古島周辺で6日に陸上自衛隊のヘリコプターが消息を絶った事故から一夜明けた7日、地元の住民からは隊員らの安否を心配する声が聞かれた。 【地図で解説】ヘリはこの位置でレーダーから消えた 　消息不明のヘリは宮古島の北にある池間島付近を飛行していたとみられる。島にはダイビングショップやペンションなどの宿泊施設があり、シーズンになると観光客が訪れる。 　島内でペンションを経営する男性（62）は6日夕、普段より低く飛行するヘリの音が気になったという。「ヘリの機体は見ていないが、いつもはもっと高いところを飛んでいるので何かなと思っていた。その後のニュースで事故を知って驚いた」と言い「一刻も早く隊員が見つかり、無事であることを祈っている」と語った。同じ島の漁師の男性も「6日は少し風があったので船は出さなかったが、荒れているというほどではなかった。早く見つかってほしい」と願った。 　宮古島市防災危機管理課の担当者は「情報収集を急いでいる」と話した。 　ヘリに搭乗し、行方不明となっている第8師団の坂本雄一師団長（55）は北海道出身で防衛大学校卒。防衛省統合幕僚監部や陸上自衛隊の中枢ポストを歴任した後、3月に着任したばかりだった。第8師団（約5000人）は熊本、宮崎、鹿児島3県の防衛や警備を担当しており、2017年度末には機動師団に改編。有事の際は警備区域を越えて南西諸島にも緊急展開する。中国の軍事力強化を念頭に自衛隊が進める「南西シフト」において重要な役割を担う組織だ。 　防衛省によると、トップを務める坂本師団長は、当時は「航空偵察」の訓練で宮古島周辺の地形などを確認していたとされ、陸自関係者は「自身の組織が守る重要なエリアを確認していたのではないか」とみる。 　第8師団が司令部を置く北熊本駐屯地（熊本市）には7日も朝から報道陣が集まった。同駐屯地は閑静な住宅街の中にあり、陸自関係者の姿や車の出入りはあったが、特に慌ただしい様子は見られなかった。同日夕方には勤務を終えた隊員らが門から出てきたが「答えられる立場にない」「広報室に聞いてください」とだけ口にして、足早に去って行った。 　第8師団司令部広報室は取材に「広報対応はこちらではなく、陸幕監部がすべて窓口になっている」とだけ回答。同師団の陸自関係者も「すべて陸幕の方で答えることになっている。こちらでは何も回答できない。申し訳ない」と伏し目がちに答えた。【平川昌範、中村園子】