レギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格が約13年ぶりの高値水準となる170円台に近づき、昨年11月の追加経済対策で政府が用意したガソリンなど燃料の価格急騰を抑える支援策の発動が視野に入ってきた。原油価格の高騰が新型コロナウイルス禍からの回復に向かう日本経済の足を引っ張る事態を防ぐためだが、市場原理に踏み込む異例の措置となる。発動後は、給油所など現場での混乱を最小限にできるかが課題となる。
「発動条件を満たした場合は適切に(支援策の)事業が行われるように対応していきたい」。萩生田光一経済産業相は21日の記者会見でこう述べた。17日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は168円40銭。月内にも発動基準の170円を超える可能性が指摘される。
支援策は3月末までの措置。ガソリンに加え軽油、灯油、重油が対象で、4油種ともレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格が170円を超えた場合に発動される。1リットル当たり5円を上限に政府が石油元売り業者に事後精算で補助金を出し、これを元手に給油所への卸売価格を抑えてもらうことで小売価格の急騰に歯止めをかける。
経済産業省は、支援策の目的は小売価格の引き下げではなく、急騰の抑制だと説明。このため、最初の発動から4週間の発動基準価格は170円とし、その後は4週間ごとに発動基準価格を1円ずつ引き上げていき、消費者が徐々に慣れてもらうことを意図する。
支援策が発動した場合、元売り業者は「補助金相当を全額、卸売価格に還元させる」(石油連盟の杉森務会長)としている。ただ、支援策で卸売価格の上昇が抑えられたとしても、その先の小売価格は給油所の経営者が採算性や周辺のライバル店との競合環境などを考慮して独自に設定しており、狙い通りに小売価格の急騰を抑える効果があるかは予断を許さない。発動すれば、経産省などは小売価格の抑制効果があらわれているかどうかを確認する。
期限を区切った上での緊急避難的な支援策としている半面、市場原理や価格メカニズムへの介入とも受け取られかねない。石油流通システムに詳しい桃山学院大学経営学部の小嶌正稔(こじま・まさとし)教授は「政府はこうした介入策ではなく、石油製品にかかる税金の引き下げや既存制度の見直しに取り組むべきだ」と指摘している。
支援策の趣旨や仕組みをめぐってさまざまな誤解が生じる可能性もあり、実際に発動した場合は給油所など現場での混乱が不安材料となる。元売り大手の首脳は「給油所と利用客の間でトラブルが起きないかといった懸念がないわけではない」と話す。給油所や消費者に、支援策への理解を促進できるかが鍵になる。(森田晶宏)
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