ウクライナ戦争は実質的に「欧州対ロシア」の戦争になっている、ということだ。つまり「経済戦争」である。しかも、欧州がこの経済戦争に勝つ可能性はゼロだろう。
まあ、NATOという馬鹿組織はソ連解体時に存在意義を失ったのだから解散して当然だったのに、それを今まで残して欧米がネチネチとロシアいじめをしてきた結果であり、欧米の自業自得である。戦争屋が政治を動かすと必ずこういうアホなことになる。
ちなみに「長く暗い冬」は人格としては私が大嫌いな曽野綾子の短編小説の題だが、ホラー小説としては大傑作である。しかも、たしか欧州駐在員の家庭の話だったと記憶している。
(以下引用)
最近、ヨーロッパのことを書くことが多いですが、「工業化の崩壊」が想像している以上に早く進行しているようで、最近、ヨーロッパの数十の金属系大企業が、連盟で、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長などに緊急の書簡を送ったことが報じられています。
この書簡を読みますと、ヨーロッパの産業は、「今後崩壊する」のではなく、「すでに崩壊している」ことがわかります。
それをご紹介すると共に、米作家のマイケル・スナイダー氏が、最近のヨーロッパの状況についてまとめていましたので、その記事もご紹介します。
欧州原子核研究機構 (CERN)の大型ハドロン衝突型加速器までも、電気不足で「閉鎖」される可能性を、英国デイリーメールが伝えていますが、何から何まで「文明的なもの」が消えていこうとしているようです。
ここからヨーロッパの最近について少し書かせていただきます。
生産停止の波
欧州の金属系企業の組織 Eurometaux が、欧州委員長に宛てた書簡は、以下にあります。
欧州の非鉄金属生産者たちは、電気とガスの価格の急上昇による永久的な脱工業化を防ぐために、EU に緊急行動を起こすよう求めます
urope’s non-ferrous metals producers call for emergency EU action to prevent permanent deindustrialisation from spiralling
ここには以下のように書かれています。それぞれ抜粋です。
欧州当局への非鉄金属生産業界による書簡より
…私たちのセクターは、過去12か月で前例のない削減を余儀なくされています。私たちは、これからの冬が私たちの事業の多くに決定的な打撃を与える可能性があることを深く懸念しており、EU と加盟国の指導者の皆様に、戦略的な電力集約型産業を維持し、恒久的な雇用喪失を防ぐために緊急行動を取るよう呼びかけます。
…EU のアルミニウムと亜鉛の生産能力の 50%が、すでに生産停止に追い込まれています。電力危機のほか、シリコンと合金鉄の生産が大幅に削減され、銅とニッケルのセクター全体にさらなる影響が及んだためです。
先月、いくつかの企業が無期限の閉鎖を発表しなければならず、さらに多くの企業が、多くの事業にとって生死にかかわる冬の前に危機に瀕しています。
工場が一度閉鎖されると、再開には大きな不確実性とコストが伴うため、恒久的な状況になることが非常に多いことがわかっています。
……EU のすべての戦略的金属事業とプロジェクトに対する長期的な投資環境は、壊滅的なリスクを冒しており、企業が 2022 年の電力価格のヘッジによって保護されなくなると、来年はさらに多くの閉鎖が続くでしょう。
すでに欧州では、金属事業の「 50バーセントが生産を停止している」ということのようなのです。
しかも、普通に考えれば、エネルギー状況がさらに悪化するのは、「冬になるこれから」ですので、
「今後、加速度的にヨーロッパの産業が崩壊していく」
という可能性があります。
そもそも、多くのヨーロッパの国では、ロシア以外の代替の天然ガスの十分な確保がまだ確定できていないはずで、EU では、ロシアと独自で天然ガス契約を結んだ(ルーブルでの支払いに応じた)ハンガリーがエネルギーを確保した以外は、いくつかの国では、相当厳しいはずです。
アメリカのエネルギーメディアの最近の報道の「見出し」を見ても、ヨーロッパのエネルギー危機が深刻であることがわかります。
オイルプライスの最近の報道のタイトル
・エッフェル塔の消灯による省エネ計画 (9/14)
・エネルギー価格の高騰が続く中、欧州の製錬所は操業を停止している (09/13)
・何百万もの「安価な」電気ヒーターがドイツの電力網を破壊する (09/13)
・ヨーロッパの天然ガス不足は食糧危機を引き起こす可能性がある (09/12)
・米国のヨーロッパへの記録的な液化天然ガスの輸出は続かないかもしれない (09/11)
・ヨーロッパに迫る電力不足 (09/09)
・世界の燃料市場は今後数年間タイトな状態が続く (09/13)
今後何年かエネルギー市場が厳しい状況になると予測されているようですが、先ほどの欧州の書簡を見ますと、「何年」といったような期間を耐え抜く余力はほとんどの企業にはもうないと思われます。
まったく比喩や冗談ではなく、「ヨーロッパから完全に重要産業が消滅する」ということが、たとえ一時的でも、あり得るのかもしれません。
今年の春に以下のようなタイトルの記事を書かせていただきました。
[記事] 誰を崩壊させるための対ロシア制裁なのか。目指すのは西の自死? それともこれもいわゆるグレートリセットへの道?
In Deep 2022年4月2日
しかし、実際に起きていることは、想定していた以上であり、その速度もすごい。上の記事からまだ、ほんの 5ヵ月しか経っていないのです。
そのような短い期間で、製鉄や肥料といった工業生産や農業の根幹に関わる生産が次々と停止しているというのはものすごいことです。
今の世の中というのは、「ちょっとの間でも供給に変化があれば、崩壊してしまうものなのだなあ」と改めて知りました(これは日本も同じでしょうけれど)。
米国の作家マイケル・スナイダーさんがヨーロッパについてまとめていた記事をご紹介して締めさせていただきます。
ここからです。
この冬、ヨーロッパは「新たな暗黒時代」に突入する
This Winter, Europe Plunges Into “The New Dark Ages”
The Economic Collapse 2022/09/7
室温を 19℃以上に設定した場合、3年間刑務所に送られるというようなことを想像できるだろうか。しかし、これは現在スイスで実際に検討されている提案された規制だ。
アメリカでは、ヨーロッパで起きていることにあまり注意を払わない傾向があるが、私たちは目を覚ます必要がある。ヨーロッパの天然ガスは昨年初めの 7倍の価格になっている。過去数十年間、ヨーロッパは愚かにも、ロシアからのガスに極度に依存するようになっていたためだ。
実際、ドイツが通常使用する天然ガスの 55%以上はロシアから来ている。しかし、戦争がすべてを変え、ヨーロッパは深刻な物資不足、強制配給、そして狂気の暖房費の非常に厳しい冬に直面している。
今後数か月で、ヨーロッパ全体が非常に寒く、非常に暗くなるだろう。
メディアが先日、スイスでの新しい法律について、以下のように報じた。
> スイスは、ウクライナ戦争のためにガスの配給を余儀なくされた場合、部屋を19℃以上に暖房した人を最q長 3年間投獄することを検討している。
>
> 国はまた、提案された新しい規制に違反した人に罰金を科す可能性がある。
>
> 連邦財務省の報道官は、メディア Blick に、1日あたりの罰金率は 30スイスフラン(約 4500円)から始まる可能性があると説明した。
一部の人たちは、ポータブルヒーターを使用して、暖かさを保つだけのことだと予想しているかもしれないが、スイスが検討している新しい規制の下では、そのようなヒーターの使用は「許可されない」ようだ。サウナと温水プールも許可されない。
このような事態はこれまで見たことがなく、ウクライナでの戦争が長引けば長引くほど、ヨーロッパのエネルギー危機は悪化するだろう。
(※)このスイスの法律については、こちらの記事でヨーロッパの報道をお伝えしています。
ヨーロッパが深刻な景気後退に向かう兆しを見せていることが報じられるようになった。エポックタイムズは以下のように報じている。
> ヨーロッパは景気後退 に向かう兆しを見せている。9月5日のニュースリリースによると、S&P グローバル・ユーロ圏総合生産高指数は 8月に 18か月ぶりの安値である 48.9 まで下落した。ユーロ圏の民間部門は、8月に「さらに収縮領域に移行」した。製造業の生産高は月間ともに減少した。ドイツでは、経済大臣ロバート・ハベック氏が、ドイツ経済の一部が「当面の間、生産を停止する」ことを公に認めた。
そして、ヨーロッパで次々と生産が停止されていることが報じられている。
> 絶望を示すさらに別の本当に驚くべき発表では、ヨーロッパ最大の鉄鋼生産施設の 1つであるドイツの鉄鋼メーカー Arcelor Mittal が、高エネルギー価格のために操業を停止した。
>
> 「わずか数か月でガスと電気の価格が 10倍に上昇したため、25%を輸入品で賄っている市場ではもはや競争力がありません」と CEO の Reiner Blaschek 氏は述べている。
>
>これは、過去数週間に発表されたアルミニウム製錬所、銅製錬所、および、アンモニア生産工場の閉鎖に続くものだ。肥料に必要なアンモニアは、現在 EU で 70%が生産停止となっている。
今後数か月で、さらに多くの工場が閉鎖を余儀なくされるだろう。
最近、ヨーロッパの金属業界の 40人の CEO が共同で、欧州委員会宛に公開書簡を発行し、その中で彼らの会社は「ヨーロッパの未来に対する実存的脅威に直面していると」警告した。 (※) さきほどご紹介した書簡です。
経済崩壊だけではない。
事態は多方面で非常に悪化しており、たとえば、CERN の大型ハドロン衝突型加速器の閉鎖が検討されていると報じられている。
> ヨーロッパのエネルギー危機は、スイスの大型ハドロン衝突型加速器にも影響を与える可能性がある。
>
> CERN として知られている欧州原子核研究機構は、粒子加速器をオフラインにすることさえ検討している。これは、加速器の高いエネルギー需要と、地域の電力網を安定させたいという組織の願望によるものだ。
全体として、今後数か月はヨーロッパにとって非常に不快な時期になるだろう。
状況がますます厳しくなるにつれて、普通のヨーロッパ人はますます怒りに満ちることになる。
NATO のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ヨーロッパで「内乱」が起こることを公然と認めていることが報じられているが、それでも、NATO事務総長は、ウクライナでの戦争を支援するために「ヨーロッパ人たちは犠牲を払わなければならない」と主張しているのだ。
> ウラジーミル・プーチンのヨーロッパに対する「エネルギー恐喝」は、この冬「市民の不安」につながる可能性があると、NATO 事務総長は警告した。
>
> イェンス・ストルテンベルグ事務総長は、今後数か月で「家族や企業がエネルギー価格と生活費の高騰の危機を感じる」ため、冬は「厳しいものになるだろう」と認めた。
>
> 同時に、事務総長は、ウクライナを支援するために、ヨーロッパ人は代償を払う価値があると述べた。
最終的には、米国の主要都市でも甚大な市民の不安が生じるだろう。
私たちはまだ、この新しい世界的なエネルギー危機のごく初期の段階にあるだけだが、それでも、私たちの生活すべてが激変しつつある。
一方で、私たちは恐ろしい世界的な食糧危機にも直面している。国連のトップでさえ、2023年に「複数の飢饉」が起こることを認めている。
私たちが知っているこれまでの「普通の生活」は変わる。
ヨーロッパに注目が集まっているが、この冬、ヨーロッパは「新しい暗黒時代」に突入し、それと共に、全世界もまた極度の苦痛を経験することになりそうだ。
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