2000年4月、地方分権一括法が施行され、地方自治法が改正された。国と地方の役割分担の明確化、機関委任事務制度の廃止、国の関与のルール化などが図られた。改正自治法252条の17の2では、条例の定めにより、知事権限の事務の一部を市町村が処理することができると規定された。それに際しあらかじめ県と市町村が協議することも定められた。
県は地方自治法に基づき、県民投票条例で投票資格者名簿の調製、投票と開票の実施その他規則で定めるものを市町村が処理することと定めた。同法と条例に基づく手続きで市町村に事務を移譲し、市町村は事務を処理する義務を負うものであるとした。
ただ、同法では知事が市町村長に事務を強制することはできず、市町村長が規定を守らない場合でも罰則はない。1996年の自治法改正前の県民投票では、投開票などの事務は機関委任事務だった。今回は市町村の自治事務となるため、市町村長による県民投票への「不参加」表明を可能にした。
5市長の表明は、法律が理念にそぐわない形で運用される問題を露呈させたと行政法の専門家は指摘した。千葉大学名誉教授の新藤宗幸氏は5市長の行為について「地方自治法の悪用だ」と断じた。地方自治法の改正では、国と自治体の関係を「上下」から「対等・平等」へ改め、都道府県と市町村の関係も「対等・平等」と位置付けた。その理念は、都道府県と市町村の協調関係を基にして、中央政府に対抗する地方政府を築き、地方自治を確立するためだったという。現行の自治法では、県が市町村に県民投票事務の実施を命じることもできないと指摘した。
ほかの有識者からも法律や憲法の違反という指摘が相次いだ。琉球大学の島袋純教授は5市の行為について「参政権の重大な侵害だ」とし、首都大学東京の木村草太教授は、市町村によって投票できないのは平等権の侵害であり、表現の自由をも奪う行為だと言及した。
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