「日刊ゲンダイ」は安倍菅政権下の大政翼賛会マスコミの中で唯一反政府的立場で健闘し、評価を大きく上げた(と推定される)マスコミ紙だが、それで増長して、政府さえ叩けば売れると思い込んでいないか。
孫崎享のこの記事も単なる推測から始まって、その土台ですべてを論じた記事である。岸田コメントの中にはどこにも中国や韓国を敵視した言葉は無い。つまり憶測だけで終始した記事だが、有益な情報も無いわけではないので、転載する。
むしろ、「阿修羅」読者コメントの中にあった「経済安保を言うなら、まずは食糧とエネルギーではないか」という言葉のほうが、孫崎による批判より的を射ている。
とりあえず、岸田総理は人事(私は、政治の現実、党内の力学を見事に把握し、利用できるものを利用し、危険人物を排除した老獪な人事だと思う。)以外はまだ何もやっていないも同然であり、その発言ではなく行動をこそ見なければならないだろう。我々はいつまで「言葉だけの人間」に騙されるのか。
(以下引用)
「新たに設けた担当大臣の下、戦略物資の確保や技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自律的な経済構造を実現します。強靱なサプライチェーンを構築し、我が国の経済安全保障を推進するための法案を策定します」
岸田首相は所信表明演説でこう説明していた。おそらく、中国を念頭に置いた発言で、多くの日本国民は「もっともだ」と受け止めただろうが、本当にそうなのか。
これは「全体主義的国家中国に対し、特に軍事に関係するとみられる技術の提供を停止する」という考え方である。
日本がこうした政策を取れば、当然、中国も同種の対抗措置を取る。その際、日中の損得勘定はどうなるだろうか。
各国の技術水準を示す指標として論文数がある。文科省の「科学技術・学術政策研究所」が毎年報告書を発表しており、1997~99年の平均シェアでは米国が世界の1位で、全体の42.8%を占めていた。続いて英、独で、日本は第4位(6.1%)。中国は第13位(1.4%)で、日中双方で技術提供を止める措置を取ったとして、当時、被害が大きかったのは中国であった。
それでは現在はどうだろうか。2017~19年の最新データを見ると、日本は10位に転落し、全体に占める割合は2.3%。一方、中国は1位(24.8%)となった。
今、日中双方で技術提供を止める措置を取れば、どちらの国の被害が大きいのかは明らかだろう。数字を見れば日本ということが明らかだ。にもかかわらず、日本政府は被害を拡大するような措置を取ろうとしているのである。
日本の一定層は極端な「嫌中」「嫌韓」の空気を持っている。それが中国、韓国の国力に対する客観的な姿を見えなくしていると言っていい。
経済力を見ても、米CIA(中央情報局)がまとめた報告書(WORLD FACTBOOK)によると、購買力平価ベースをもとにした「真のGDP」で、中国は22.5兆ドル、米国は20.5兆ドル。対する日本は5.2兆ドルである。
大きな市場を持つ国と緊密な経済関係を持つことは国益である。
それなのに、今の日本政府はなぜ、逆の政策を遂行するのだろうか。最大の理由は日本国民が感情的になり、中国、韓国といった隣国を客観的に捉えることができないからではないだろうか。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
孫崎享のこの記事も単なる推測から始まって、その土台ですべてを論じた記事である。岸田コメントの中にはどこにも中国や韓国を敵視した言葉は無い。つまり憶測だけで終始した記事だが、有益な情報も無いわけではないので、転載する。
むしろ、「阿修羅」読者コメントの中にあった「経済安保を言うなら、まずは食糧とエネルギーではないか」という言葉のほうが、孫崎による批判より的を射ている。
とりあえず、岸田総理は人事(私は、政治の現実、党内の力学を見事に把握し、利用できるものを利用し、危険人物を排除した老獪な人事だと思う。)以外はまだ何もやっていないも同然であり、その発言ではなく行動をこそ見なければならないだろう。我々はいつまで「言葉だけの人間」に騙されるのか。
(以下引用)
「新たに設けた担当大臣の下、戦略物資の確保や技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自律的な経済構造を実現します。強靱なサプライチェーンを構築し、我が国の経済安全保障を推進するための法案を策定します」
岸田首相は所信表明演説でこう説明していた。おそらく、中国を念頭に置いた発言で、多くの日本国民は「もっともだ」と受け止めただろうが、本当にそうなのか。
これは「全体主義的国家中国に対し、特に軍事に関係するとみられる技術の提供を停止する」という考え方である。
日本がこうした政策を取れば、当然、中国も同種の対抗措置を取る。その際、日中の損得勘定はどうなるだろうか。
各国の技術水準を示す指標として論文数がある。文科省の「科学技術・学術政策研究所」が毎年報告書を発表しており、1997~99年の平均シェアでは米国が世界の1位で、全体の42.8%を占めていた。続いて英、独で、日本は第4位(6.1%)。中国は第13位(1.4%)で、日中双方で技術提供を止める措置を取ったとして、当時、被害が大きかったのは中国であった。
それでは現在はどうだろうか。2017~19年の最新データを見ると、日本は10位に転落し、全体に占める割合は2.3%。一方、中国は1位(24.8%)となった。
今、日中双方で技術提供を止める措置を取れば、どちらの国の被害が大きいのかは明らかだろう。数字を見れば日本ということが明らかだ。にもかかわらず、日本政府は被害を拡大するような措置を取ろうとしているのである。
日本の一定層は極端な「嫌中」「嫌韓」の空気を持っている。それが中国、韓国の国力に対する客観的な姿を見えなくしていると言っていい。
経済力を見ても、米CIA(中央情報局)がまとめた報告書(WORLD FACTBOOK)によると、購買力平価ベースをもとにした「真のGDP」で、中国は22.5兆ドル、米国は20.5兆ドル。対する日本は5.2兆ドルである。
大きな市場を持つ国と緊密な経済関係を持つことは国益である。
それなのに、今の日本政府はなぜ、逆の政策を遂行するのだろうか。最大の理由は日本国民が感情的になり、中国、韓国といった隣国を客観的に捉えることができないからではないだろうか。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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