先月末にウクライナ地域の4州がロシア連邦に加入し諸々の手続きが着々と進められている中、今週は、ウクライナの中というより、外がかまびすかった。
米連銀が強硬に利上げをしていることに対して、マーケットおよびその他の国々は、やめてくれーという声を出しているものの、じゃあインフレどうするの?という問題には誰も答えられない。
今週は、国連の一機関であるUNCTADが金利政策に苦情を申し立てるというなかなか見られない光景があった。
UNCTAD、「軽率な」金融政策に絡む景気後退リスクを警告
これを言うなら、とてつもない規模の緩和政策にも苦情を言うべきだったでしょう、などと思うが後の祭り。
現状では米連銀はインフレ抑制重視の姿勢を変えないようだ、と見られている。
FRB高官、インフレ抑制の決意強調-経済に痛手でも引き締め遂行 https://bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-04/RJ8K4KT0G1KW01…
つまり年内に4%以上になるだろう、だがしかしそれによって来年景気後退から利下げの動きとなるんじゃないのか、というあたりがコンセンサスだろうか。だがしかし、それもまた何か期待を裏切られる事態になるかもしれない。だって、1年前、こんな金利になるなんて市場の誰も予想していなかった。
そんな中、4日には、OPEC+が、減産の方針を打ち出す。
【カイロ=久門武史、ワシントン=中村亮】石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は5日、ウィーンで閣僚級会合を開き、11月に日量200万バレル減産することで合意した。産油国の財政圧迫を招く原油価格下落に歯止めをかける。エネルギー高に苦しむ米欧の反発は必至で、米ホワイトハウスは「バイデン大統領は失望している」との声明を出した。
OPECプラス、200万バレル減産で合意 米欧の反発必至
これは、減産の問題もさることながら、米のバイデンが、戦略備蓄を取り潰してまで油の値段を下げようとしている、あるいは、本質的な解決にはなっていないがなんとかして取り繕うとしている中で起きたというのも大きい。
ホワイトハウスは、OPEC+の決定に、目先のことしか見えていない決定に失望しているとか言っていたが、目先のことしか見えてないというのは、それこそ現在のアメリカ、あるいは西側全体の方針じゃないの、って感じ。
なにしろ、ノードストリームを爆破するという、途方もないことが起きた。
■ アメリカがやった論優勢
この件は、メディアが一生懸命、ロシアのせい、という論調を作ろうとしているが、アメリカ国民が言うことを聞いてない。大方の見るところ、ポーランドと米だろうって感じで受け取られている。異論があるとすればホワイトハウスはどこまで知ってたか、ぐらいか。
その上で、著名な経済学者のジェフリー・サックスが、米だと思うとブルームバーグニュースの生放送中に発言し、それを止めようとするアンカーがあられもない声を出し制止しようとするもむなしくサックスが語り続けるというある種の放送事故が起こった。
そして、この様子がまた楽しまれている。
コメディアンのジミー・ドアがそこに着目して動画にしてた。この人に限らず最近のアメリカのオールタナティブの傾向は、右から左まで主流メディアがおかしいと思ってる人とならまずそこでみんな仲間みたいになってる感じがある。いい傾向だわ。
Guest FREAKS OUT News Hosts With TRUTH About Pipeline Attack!
実際問題、米民主党は解党しろと言いたくなる代物ではあるにせよ、じゃあ共和党が頼りになるかといえばそれもまったく違う。同様に、MAGAの発想はよかったとしても、あれで国がまわると思ってんのか、というとそれも違う。いろんな有能な人が必要だし、多少でも今より良い世の中にするには多くの努力が必要だという、まぁそういうことですね。
■ 核の先制攻撃しよう by ゼレンスキー
そんな中、2週間ぐらい前にはイギリスのガーディアンのインタビューの中で、核の先制攻撃を求める発言をしていたゼレンスキーが、
「これは狂ってる」by タッカー・カールソン
今度はオーストラリアのシンクタンクの会合で、
NATOはロシアに先制攻撃して、ロシアが核を使う可能性を排除すべきだと訴え、その動画で回ったことから多くの人が見ることとなり、現在大騒ぎになっている。
で、この人がこういうことを言いたいなら言えばいいとして、現在の問題は、こういうことに対して、ダメだと、何を言っているのだと反応する西側の首脳がいないということなんですよ。
今年の2月のミュンヘン会議でもそうだったし、2週間前のインタビューでも今回でも同様。普通、紛争の当事者がそんなことを言ったら、何を無責任なことを言っているんだ、とか、そんなことより紛争を縮小することを考えろ、お前の立場を考えろとかなんとか、正常な反応が出てくることを世の中の多くの人は想定している。だがしかし、西側リーダー層にはそういう人がいない。
■ スターリンク
ウクライナ軍が使うスターリンクがつながらなくなってウクライナ軍が困ってる、とFTが報道したことで現在ちょっとした騒ぎが起きてる。
Ukrainian forces report Starlink outages during push against Russia
事態が事態だけに、詳細は不明。
前線で使えなくなったことから、ロシアの電子戦との競合で問題が生じた可能性もあるだろうなと思ったりする。それ以上かもしれない。サテライトと地上間の交信の妨害はロシアが結構前から進んでいると言われているそれなので。
また、もしSpace Xの方に問題があるとしたら、もう無理なことはしたくない、金もかかるし、ということなのかもしれない。
マスクは、西側主流メディアによる、ウクライナ軍は全土を奪還する、できる、ロシア軍は年末までに壊滅だ、弾がない、ロシア軍は犬を食ってる、ロシア軍は電子レンジの半導体を盗んでる、といった話を信じてるグループではないんだろうとも思う。あはははは。
あと、IT技術を使おうと人の心を変えるには限界があるってのもあると思うな。4州が住民投票でウクライナを離れた意味は実はかなり大きい。脅しても脅しても防ぎようがなかったわけだから。
■ 戦う?ヨーロッパ
で、こういういろんな矛盾が出てきたことを書くと、だんだんと停戦に向けて活動している人たちがいるのだ、といった希望を持つ人が世の中に結構いるような気がするわけですが、他方で、ヨーロッパでは、「European Political Community」なるプラットフォームが立ち上がって、意気軒高な様子がある。
「欧州政治共同体」が初会合 対ロシアで団結
【AFP=時事】チェコの首都プラハで6日、「欧州政治共同体(European Political Community)」の初会合が開かれた。欧州連合(EU)加盟国にウクライナ、英国、トルコなど非加盟国を加えた44か国の首脳が参加し、ウクライナ侵攻をめぐり深まるロシアの孤立を示した。
EU内のヨーロッパ人がキエフ寄りになって団結したからといって、それがなぜ「深まるロシアの孤立」なのかは謎だが、いずれにしてもそういう主張を出すための装置には違いないでしょう。
想像通り、ゼレンスキーをビデオ出演させて、またぞろ、ロシアはけしからんを一節述べさせた模様。
発案者はフランスのマクロン。フランスは、アフリカの植民地がグダグダになっていることをロシアのせいだと言っている側面もあるので、ロシアには遺恨がある。
参加者はこの青の国らしいので、まぁ、ぶっちゃけ、ナチがソ連に侵攻しているピークタイムを固定したようなものでは? これまでに、EUが金出してやってる、東方侵略構想(東方パートナーシップ構想)でつっついていたモルドバやコーカサスを政治的に統合する枠組みを作りましたといったものではなかろうか。
つまり、「欧州政治共同体」は第四帝国宣言みたいなもの。
ということなので、ロシアとNATOの戦いは、ロシア vs アメリカの側面にハイライトがあたりがちだが、ヨーロッパの反ロシアという側面の方が実際には、根治不能といった感じがする。
今回のウクライナの話も、アメリカ人はそもそもNATOの東方拡大は間違ってるという考えを持つ人がパラパラじゃなくてまとまって存在するし、春先の反ロシアの騒ぎでも、ロシア差別に流されてない人たちがこれまた普通に存在して声をあげるという、一般人レベルでの健康さが見て取れる。
そこから考えた時、ヨーロッパの反ロシアというのは、あまりにも揺るぎなくて、そして一般人が弱すぎて、ここからちょっとしたことで和解するようなことはないと思った方が多分適切だろうと私は思う。
ロシアの方もその認識でしょう。そういえば、この間のプーチンのスピーチでも、ヨーロッパの植民地主義者との闘いに屈しなかったのが我々だという認識を示していた。
何世紀にもわたるヨーロッパのロシア恐怖症、西側エリートのロシアに対する隠された敵意の理由の1つには、植民地支配の時代に彼らがロシアから強奪できず、ロシアはヨーロッパ人に相互に有利な条件での貿易を強要したからだ、と言っていた。
ということで、混乱は続くということですね。ウクライナというのは、混乱期、移行期の1つのバトルグラウンドであって、すべてではない。
ますます、war is a continuation of politicsといったところ。
■ オマケ
とか書いていたら、その時クリミア大橋で大爆発が起きていた。リモートの爆発物が仕掛けられたんじゃないかと言われている模様。けが人はいないと当局者。(後続の情報で爆発した車の隣の車の乗客と思しき3人が死亡、水中から引きあげられた模様)
まぁ、プーチンの誕生日だから、まだまだこれからだ、という宣言なのでしょう。しかしこう、ノードストリーム、クリミア大橋と物凄いものに手をかけ出した。歯止めがなくなってるね。(ただ、出回ってる写真がすべて真実とは限らないかも。)
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