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徽宗皇帝のブログ

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マスターヴィジョンの「クレしん」映画評
更新が長いこと止まっているホームページだが、現代日本の映画界を救う見識と批評眼を持った男、現代最高の知性の一人、マスターヴィジョン氏のホームページm@stervisionから、彼の文章の素晴らしさをよく表した一文を引用する。マスターヴィジョンさん、早く、ホームページの更新を再開してくれ!
*注:下の「クレしん」に出てくるアンニュィな美女、チャコは多分、小林麻美がモデルだろうな。


(ここから引用)



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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(原恵一)

脚本&絵コンテ:原恵一 演出&絵コンテ:水島努 音楽:荒川敏行&浜口史郎 主題歌:こばやしさちこ
作画監督:原勝徳&堤のりゆき&間々田益男 美術監督:古賀徹&清水としゆき 制作:シンエイ動画
声の出演:矢島晶子(しんちゃん) 藤原啓治(父 ひろし) ならはしみき(母 みさえ)
こおろぎさとみ(妹 ひまわり)| 津嘉山正種(ケン) 小林愛(チャコ)
傑作である。それも生半可な傑作ではない。一人の作家が一生に一本 作れるかどうかという類の作品だ。おそらく原恵一はこの映画のゼロ号試写において、キャリアの最高作を作ってしまった者のみが味わう恍惚と不安におののいたことだろう――そう、本作のなかでもリスペクトを捧げている「カリオストロの城」を作り上げた直後の宮崎駿のように。 ● 今回、原恵一は本気(マジ)である。ここまで「付き添いのお父さん」にターゲットを絞っちゃっていいのか!?…と心配になるほど、三十男の心に直球をズバンッと投げこんで来る。なにしろ本篇には映画版のレギュラーである「カラオケ好きの原作者・臼井儀人」も「グラビア・アイドルのゲストキャラ」も(なな、なんと!)オカマ・キャラすら出てこないのである。いや、もちろんこれは「クレヨンしんちゃん」なので、クッダラナイ脱力ギャグはテンコ盛りだし(キャラを真面目に振りすぎた前作の反省も踏まえて)しんちゃんは最後の最後の最後まで徹底して無責任でお馬鹿で快楽主義者な5才児であり続ける。ドラマに足をすくわれて「動画」としての魅力を損なうこともなく、中でもクライマックス・シーンの作画は(普段あんまり「上手い」と思わせない作風の)原恵一と水島努がアニメーターとしての底力を見せつける。変幻自在の“ザ・劇伴”を繰り出す荒川敏行&浜口史郎のスコアも素晴らしい。 ● これは「わたしたちが過ごしてきた20世紀」への心のこもった鎮魂歌であり「今、わたしたちが生きているこの21世紀」に向けての決意表明でもある。1960年代に生を受けた者は必見。このサイトを読んできて少しでもおれの目利きを信じてくれるなら観に行ってくれ頼むから。いや大丈夫、平日の夜ならガキもそんなに居ないって。
[以下、内容に触れています]本篇はいきなり太陽の塔のアップから始まる(=太陽の塔を知らない観客はこの時点で脱落) しんちゃん一家の住む埼玉県春日部市にテーマパーク「20世紀博」がオープン。父ちゃん母ちゃんは、な~つかしいなあ:)を連発して、人気アトラクション「バーチャル万博」に通いづめ(おおお、おれなんか万博のパビリオンの名前ぜ~んぶ言えるもんね←威張ってどーする) もう、親はニコニコ、子どもはイヤイヤ。そのうち大人たちは子どもに還って「21世紀博」から戻って来なくなる…。 ● これ、じつはマッシュルーム・カットのケンと、長い黒髪のアンニュイなチャコをリーダーとする秘密結社「イエスタデイ・ワンスモア」の陰謀。そもそも「21世紀」とは「おれたちの輝ける未来」だったはずだ。手塚治虫が夢見た「未来」はこんな耐えがたい悪臭をはなつクソみたいな時代では断じてない。いま一度、自分たちの手に「輝かしい未来」を取り戻すため、おれたちは時計の針を20世紀へと戻すことを選択する。そう、おれたちの「黄金の20世紀」、…街に匂いがあった時代へ、だ・・・てなことを津嘉山正種の声で言われた日にゃあ、もうおれなんか涙を流して「そーだそーだぁ!」と同意しちゃうわけよ(どーせならチャコの声は池田“メーテル”昌子でお願いしたかったね) なにしろあーた、この人たちはテーマパークの地下に「昭和の町並み」の完全なレプリカを作っていて、その町はつねに夕焼けで、地面はまだアスファルトに覆われてなくて、何処からともなく豆腐屋のパ~プ~が聞こえてくるのだ。もちろんケンとチャコもその町の安アパート「昭和荘」の2階で同棲時代を送ってる。おおおお、おれも、おれも。おれも入れて。夕陽の町の住人にしてくれい!<完全に洗脳されてる。 ● というわけで春日部から、…いや、日本中から大人の姿が消えるという「ビューティフル・ドリーマー」な状況が現出し、がらんとした町に残された子どもたちはご飯を食べることすらままならない。幼稚園児がぽつりと呟く一言「“懐かしい”ってそんなにイイモノなのかなあ?」 やがて始まる子ども狩り。しんちゃんと幼稚園の級友たちで構成される かすかべ防衛隊の面々は、大人たちの目を覚ますべく「イエスタデイ・ワンスモア」に戦いを挑む。――最後の最後の最後の最後、しんのすけ はアクション仮面や ぶりぶりざえもん の手を借りず、自分ひとりの力で大人の前に立つ。わずかに残された力を振り絞るように吐き出す台詞。つまり「未来」っていったい「どういうこと」なのか。ぐはっ(←涙が堰を切った音)だめだ。もう両目は栓を抜いた風呂桶のよう。おれは今、この文章を泣きながら書いている<バカ。 ● ドラマを締めくくるのはよしだたくろうの名曲「今日までそして明日から」――♪わたしは今日まで生きてみました ときには誰かの力を借りて ときには誰かにしがみついて わたしは今日まで生きてみました そして今 わたしは思っています 明日からもこうして生きていくだろうと♪ 1度でも「昔は良かった」と嘆息したことのある人はこれを観てよおく反省するよーに(特に>アントニオ猪木と新日本プロレス関係者)



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