倉前盛通の「悪の論理」(副題「地政学とは何か」)は、私が「地政学」という言葉を初めて知った本だが、冒頭の通俗小説めいた部分が「地政学とは何か」を知りたかった私には肩透かしで、すぐに読み止めてしまった本だ。
で、先ほど、何となく手にしてパラパラめくってみたが、末尾にあった、昭和55年時点(もう40年以上前か)の世界政治分析と未来予測がかなり的確で、それが的確だと分かるのは2021年の現在の時点で読んでいるからだろう。おそらくこの本の発刊当時には、当時20代だった読者の私の無知さを別としても、普通の読者でもさっぱり意味が分からなかったと思う。ロッキード事件の意味なども、その後にかなり明白になっているが、当時は、それがアメリカの陰謀だ、という事実を理解した日本国民はほとんどいなかった印象がある。単に、田中角栄は賄賂を取り放題の悪徳政治家だ、と思ったのではないか。
この本の面白そうな部分はいくつかあり、まだほとんど熟読はしていないが、これから幾つか取り上げて紹介する(つもりの)その前置き的に、「虚構論理」という言葉を挙げておく。これは、「虚構だが、明確な論理体系を持った思想」とでも言っておく。あらゆる政治思想も宗教思想も哲学も、虚構論理だと言えるわけであり、科学の「仮説」も、社会科学の流行の説も、すべてそれである。そして、それは「虚構であること」が忘れられ、人間と社会を動かす強烈な動機になるわけだ。つまり、我々を動かすあらゆる信条は「虚構である」ということを常に意識しないと、非常に危険なものになる、ということである。
「地政学」という言葉はどう定義されているのか知らないが、geopoliticsは「地理政治学」という、何の変哲もない言葉で、要は(私流の解釈では)「世界各国の地理的条件がその国の政治や政治家の思考を動かす大きな要因になる」という、ある意味当たり前の話で、自国の地理的条件を考えない国政政治家がいたら馬鹿である。だが、そうした「地理政治学的思考」が、国際政治の政略や戦略をも動かすとなると、それは「虚構」だということが忘れられ、実際に世界の人々の運命を動かす「悪の力」になるわけである。それが「悪の論理」と倉前氏が書名をつけた理由だと思う。
ちなみに、現在DSと呼ばれている存在についてもこの書は指摘しており、それを「ロックフェラーを中心とする東部資本家たちと米国政治の秘密の意思決定グループ」としている。そしてそれが主にリベラル派をバックアップしているということも指摘している。これは、「共和党は資本家の政党、民主党は普通の国民のための政党」というイメージが強かった当時としてはかなり慧眼だったと思う。
で、先ほど、何となく手にしてパラパラめくってみたが、末尾にあった、昭和55年時点(もう40年以上前か)の世界政治分析と未来予測がかなり的確で、それが的確だと分かるのは2021年の現在の時点で読んでいるからだろう。おそらくこの本の発刊当時には、当時20代だった読者の私の無知さを別としても、普通の読者でもさっぱり意味が分からなかったと思う。ロッキード事件の意味なども、その後にかなり明白になっているが、当時は、それがアメリカの陰謀だ、という事実を理解した日本国民はほとんどいなかった印象がある。単に、田中角栄は賄賂を取り放題の悪徳政治家だ、と思ったのではないか。
この本の面白そうな部分はいくつかあり、まだほとんど熟読はしていないが、これから幾つか取り上げて紹介する(つもりの)その前置き的に、「虚構論理」という言葉を挙げておく。これは、「虚構だが、明確な論理体系を持った思想」とでも言っておく。あらゆる政治思想も宗教思想も哲学も、虚構論理だと言えるわけであり、科学の「仮説」も、社会科学の流行の説も、すべてそれである。そして、それは「虚構であること」が忘れられ、人間と社会を動かす強烈な動機になるわけだ。つまり、我々を動かすあらゆる信条は「虚構である」ということを常に意識しないと、非常に危険なものになる、ということである。
「地政学」という言葉はどう定義されているのか知らないが、geopoliticsは「地理政治学」という、何の変哲もない言葉で、要は(私流の解釈では)「世界各国の地理的条件がその国の政治や政治家の思考を動かす大きな要因になる」という、ある意味当たり前の話で、自国の地理的条件を考えない国政政治家がいたら馬鹿である。だが、そうした「地理政治学的思考」が、国際政治の政略や戦略をも動かすとなると、それは「虚構」だということが忘れられ、実際に世界の人々の運命を動かす「悪の力」になるわけである。それが「悪の論理」と倉前氏が書名をつけた理由だと思う。
ちなみに、現在DSと呼ばれている存在についてもこの書は指摘しており、それを「ロックフェラーを中心とする東部資本家たちと米国政治の秘密の意思決定グループ」としている。そしてそれが主にリベラル派をバックアップしているということも指摘している。これは、「共和党は資本家の政党、民主党は普通の国民のための政党」というイメージが強かった当時としてはかなり慧眼だったと思う。
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